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アフターダーク 2

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元々ここでのバイトを決めたのは、俺の方が先だった。
時給は安いけど、学校からも家からも近い。
仕事も然して大変じゃない。
そんな安易な理由からだった。
けど、圧倒的に『夕勤』の数が足りないその店で、新人バイトの俺のシフトはほぼ毎日と云うありさまで…。
さすがにこれはちょっとキツイかと思った俺は、その頃ちょうどバイトを辞めて暇を持て余していたらしい冬獅郎へと声を掛けたのだ。
暇ならうちでバイトやらねえ?と。
次のヤツが入るまでの超・短期でいいから頼む、と頭を下げて。
どうせ大して客も来ないし、仕事もすげー楽だから、と。
コンビニは時給が安いから嫌だと渋る冬獅郎をあの手この手で何とか口説き落として、一緒にバイトに入ったその翌々日のことだった。
飲料・デザートコーナー付近でちんたらと品出しをしていたヤツの隣りで、目をキラッキラに輝かせながら新商品のデザートふたつを手に持って。
どっちを買おうかとばかりにうんうん唸っていた乱菊さんに、どうやら一目惚れをしたらしいのだ。
…驚くことに。

「こっちの方が売れ筋ッスよ」

余りに真剣に悩むその横顔に、内心呆れながらも何気なく横から助言したところ、一瞬きょとんと目を瞬かせて。
「そっかー、店員のお兄さんお勧めじゃあ間違いないわね!」
と、笑った屈託のないその笑顔にヤラレたのだと、のちに冬獅郎は語っている。



それ以来、店に顔を出すたびに冬獅郎へと何かと話しかけてくるようになった彼女は、(それまでは週に1、2度の頻度で訪れていただけだったのに)いつしか毎日のように仕事帰り、ここへと顔を出すようになった。
そしてそれに付随するように、冬獅郎もこの時間帯、シフトに入る日数が増えていったのだった。
おかげで、当初は『次の夕勤が見つかるまでの繋ぎ』ってことでバイトに入っていただけなのに、いつしかそれすらも反故となり、今となっては新たなバイトを探す気なんて皆無のようだ。
(まあ、俺も助かるし?オーナーも新しいバイトを探す手間が省けて喜んでるから別にいいけどな)
毎日のようにレジで交わす、他愛ない軽口。
日々の買い物の具合から、どうやら彼女はひとり暮らしで、しかも彼氏もいないらしいことが伺えた。
(俺にしてみればかなり意外だったが、無論、ヤツは狂喜した)
だが、それだけじゃない。
収納代行の振替用紙の記載だったり、たまに利用する宅配便の控えなどから、彼女の住所も携帯電話の番号までも。
その実コイツは知り得ていたりするのだから、ここまでくるとある意味『ストーカー』と言えないこともない。
(まあ、だからってナニをするワケでもないからいいけどな)





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