[携帯モード] [URL送信]
6.



「悪かったな、口ばっか達者な生意気なガキで」
むうっとした顔でペシンとあたしの頭のてっぺんを軽くひと払いした冬獅郎は、くるんとあたしに背を向けると、手当ての為に広げた薬を溜息混じりに片付けだした。


冬獅郎は。
多分…あたしに馬鹿にされたと思っているに違いない。
(そうじゃない、のに…な)


頭の悪いあたしは、こんな時、いっつも上手く言葉を選び出せない。伝える術も方法も知らない。
だから身体を預けるより他にないのだ。
でも、それがますます冬獅郎を怒らせてしまう。呆れさせてしまうのだった。
最初の頃なんて、いきなりキスしたら「ほんと見境ねえな、お前」って、「ガキ相手にまで色振り撒くなよ」ってものすごーく怒られたし。
(そんなんじゃないのに…)
けっして、そんなつもりじゃなかったのに。


小さい背中。
小さな頭。
(だけどあたしの何倍も何十倍も冬獅郎は頭がいいのだ。いわゆる『天才児』ってヤツらしい。前に近所のオバサン達が感心したように話していた)
背だってまだ150センチしかなくて、あたしより20センチも小さいけれど…。
でも。
そんな身長差なんて気にならないぐらい、冬獅郎は器の大きな『男』だと密かにあたしは思っていた。
まだ小学生だけど、冬獅郎は優しい。本当に優しい。(もしかしたら、単に呆れられてるだけかもだけど…)


両手を広げてうんとあたしに優しくしてくれる。
泣きつくあたしの為にいつだって『居場所』を用意してくれる。
怒ってくれる、あたしの為に。
呆れてくれる、あたしの為に。
決して言葉を惜しまない。
こんなお馬鹿なあたしの為に、冬獅郎はいつだって心を砕いてくれるのだ。


そんな一見わかりにくい冬獅郎の優しさは、他の男の子たちがあたしに見せる『優しさ』とはちょっと種類が違うんじゃないかなとずっとあたしは考えていた。
なんてゆーか、甘えたくなるのだ。
見返りなんて求めない、甘えてもいいんだぞ、ってオーラを冬獅郎はあたしに対して出してくれるのだ。いつだって。
それがあたしにはどうしようもなく嬉しかった。泣きたいくらい嬉しかった。
だって…そんな男、周りには誰ひとりとしていなかったんだもの。ううん、いなかったのよ。…パパ以外には。
ねえ。
冬獅郎、アンタだけしか…。




でも…多分、どうじょうなんだろうな、って思う。おばかなあたしにどうじょうしてくれているだけなんだとおもう、冬獅郎は。
あんまりあたしがばかでかわいそうで男運ないおんなだから、呆れてやさしくしてくれてるだけだとおもうの。…わかってる。


だから、ぜったい言わないけれど。言えないけれど。
本当は。
あたしはずっとまえからこの子のことが好きだった。
弟みたい、とか。そんなんじゃなくって。多分…そうゆう『恋愛』対象としての、好き。
相手小学生だってのに、バッカじゃないの?って自分でも時々思うんだけど…でも、だってすっごく良い男なんだもん。カッコいいんだもん、とーしろー。
出会った当初はほんと生意気なガキ!ってカンジだったけど、ここ1年くらいで物凄く物腰が『男』っぽくなった気がするし、なんてゆーか…色気があるのよねえ、この子。
学校でも相当モテるんじゃないかな?とか思うんだけど、実際のところ頭が良すぎて学校ではちょっと浮いてるみたい。友達とかもほんと少ない。みんな見る目ないなあって思うんだけど、「は?逆に、男見る目のねえお前にだけは言われたくねえって思うんじゃねえの?」って、冬獅郎にあっさり揚げ足を取られてしまった。
そしてそれがあんまりにもその通りだったので、あたしは返す言葉もなかったのだけど。
つっても、あたしなんかじゃ絶対相手にされないってわかってるんだけど。
(まあ、まだ小学生だしね。あたしの男遍歴だってぜんぶ知ってるしね。その時点で『論外』よね、普通ぜったい)


だからせめて、冬獅郎みたく『優しい』男と付き合いたいな、って思ってずっと探してるんだけど。だからひとつでも冬獅郎に似た面影のある男の子から誘われたら全然断れないんだけど。てゆーか、優しくされたら基本断れないんだけど。
やっぱり違うの。別モンなのよ。
優しさが…!



「おい、何ジタバタ暴れてんだよ?」
「なっ、なんでもないわよべつに」
「ならいいけどな。傷、痛てえんならちゃんと言えよ?」
そう言って、「ん」と差し出してくれたのはミルクティー。ちゃんとあたし好みの甘さなのが悔しい。
だからなんでそーゆーことがさらっとできちゃうのかなあ?




「なんだあ、お前、すっげー眉間に皴寄ってるぞ。不味かったか、それ?」
「あ、ううん。オイシイ…デス」
慌てて頭を振ったあたしにふっと小さく笑いかけると。
「ま、当然だな」って、なによそれ!
そんな大人びた顔して笑わないでよ。
そればかりか「お前の好みはすっかり熟知しちまったからな」って、アンタどんだけ…!
…悔しい。
ほんと罪作りなガキよね、アンタ。
あんまり優しくって嬉しくって、泣きたくなる。
けど、痛い…。
こんなおばかさんで年上のあたしなんて、どうせ相手にされるわけないってわかってるから。
でも。
(それでも好きなんだもん。冬獅郎のことが)
理想のひとが小学生のガキだなんて…笑っちゃうしかないんだけど。








実際こんな出来た小学生男子は居ないと思うんだけど、中身が『隊長』だからってことでスルーして頂ければと思います(w; 私の書くものなんて基本ラブコメで両片想いが好きなんで、どう頑張ってもこんな展開にしかならないんですよ、ごめんなさい(笑)

[*前へ][次へ#]

7/28ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!