日乱 愛の才能 恋の本能 2 「つか、お前。俺のこと買い被り過ぎだ」 「……は?」 とろんとした目で小首を傾げる松本は、俺がどうしてお前を好きなのかわからないと言う。だが、逆…だろ、そりゃあ。どう考えても。 「俺からすりゃあ、何でお前みてえな良い女が、俺みてえ『餓鬼』に惚れたのかがわかんねえけどな」 つか、俺でなくともそう思ってる輩は少なかねえだろ。(特に、七番隊のアイツとか九番隊のアイツとか…?) 松本ほどの女なら、まず間違いなくどんな高望みだって出来るだろう。どんな高望みをしたってそうそう罰は当たらねえだろう。 見合う男だって、それこそ星の数ほどいるんじゃねえの? ―だが、それでも。 お前は『俺』がいいのだと言ったのだ。 それも、十番隊隊首としての『俺』でなく、ただの一人の男であるこの俺を…『日番谷冬獅郎』を好きだと言ってくれたのだ。 こんな、チビで餓鬼で生意気で、口喧しいだけのこの『俺』を…。 「惚れられた理由がわかんねえってんなら、お前よりむしろ俺の方だろが。よっぽど納得いかねえよ」 ケッと口汚く吐き捨てる俺を、松本は目と口をあんぐり開けて見つめている。 (とりあえずものすごい『間抜け面』だと追記しておこう) 「いがい…」 「…は?なにが、だ?」 「いえ、そんな弱気な隊長、あたし初めて見ましたから」 「そりゃあこっちの科白だ。テメエがいつになく柄にもねえこと言い出したから、こっちまで柄にもねえのが移ったんだろが」 だから俺は苦笑する。お互い様だ、と。 なんですそれ、けっきょくあたしのせいですか、と。 釣られて松本も苦笑した。 ああ、そうだ。 釣り合わない身長も。 体格の差も。 外見も。 年齢も。 その全てを凌駕して、俺は松本に惚れている。 松本は俺に惚れている。 どうしようもないほどに、俺達は互いに惚れ合っている。 それが全てで、 それ以下でも、 それ以上でもないってだけの話、だ。 (…なら、それでいーんじゃねえの?) 理由なんていらねえだろと俺が言う。 好きなもんは好きなんだ、惚れちまったものはしょうがねえだろ。 それに、こう見えて俺達はとても上手くいっている。 それもそうですねと松本が頷く。 どうやらようやく合点がいったらしい。 そうだ、それさえわかっていれば、俺達は何も不安に思う必要なんてない。 「大好きですよ、隊長」と。 「愛しているぜ、松本」と。 声に出して、一番大切なことを確認し合って、それから互いに顔を見合わせて。 俺達は小さく笑ってキスをした。 end. 題して、馬鹿っぷる十番隊。 たいちょが無駄に甘くてすみません、松本が思春期の中学生みたいですみません。てゆーか全体的に青臭くてすみまっせん!!(土下座★) 恋愛中の男女にありがちなベタな悩みとか嫉妬なんぞをこの二人も人並に経験してたらさぞ可愛らしかろうと、湧いた頭でこそこそ仕事中に書き上げました。(死ぬほど眠かったんだよ、この時) ちなみに、ネタの大元はkinkiたんの「Anniversary」のワンフレーズから。ま、ゆうてもそんなんばっかですけどねーこのサイト。 この二人は仕事中にくっだらないことですぐ喧嘩してでもすぐ仲直りしちゃって、後はずーっといちゃこらしてればいいと思います。 [*前へ] [戻る] |