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日乱
レーゾンデートル 4



バカをバカと言って、何が悪い?
いい加減、堪忍袋の緒も切れるぞ。
何かっちゃあ事ある毎に逃げ出しやがって…ちっとも手元になんて居やしねえ。そればかりか他所のヤツにばっかり懐いてなかなか帰っちゃ来ねえし、そもそも俺の視線にだって目え逸らすばっかでまるで気付いてねえだろ、お前。今更、煎餅一枚如きのことでジタバタうろたえてんじゃねえ。
「だいたいなあ、俺ァ紅の色から香の香りから飯・酒・男に至るまで、お前の好みぐらい幾らだって熟知してる」
「う…嘘ぉ!」
「嘘じゃねえ」
「…てゆーかたいちょ、言っちゃ悪いけどそれじゃまるでストーカーですよ?」
って。
「お前なあ…何処まで俺のこと馬鹿にしてんだ?!きゃあごめんなさいじゃねえ!!」
だいたい何も驚く必要なんてねえだろ。俺のことをもっとちゃんと見てりゃあ気付けたんだ。
俺がどんだけお前のことを見ていたか、何で俺がこんなにムカついてんのか。


お前が傍に居ないから苛々すんだろ。
お前が俺を見ないから不機嫌になるんだろ。
…見ろ、実に簡単なことじゃあねえか。






(それが、あの人の『言い分』の全て)




「お前は俺の副官だろう?だったらちゃんと傍に居ろ。ああ、言っとくが休憩の時だって例外じゃねえぞ。まあ、偶のサボリは大目に見てやるが、黙って出て行くことは許さねえ」
ニィと嗤う貴方。ならば、身を乗り出したまま動揺し、頬を真っ赤に染めあげているあたしの顔は、さぞ見ものなことでしょう。
だけど、随分な物言いに、最早あたしは固まる以外ない。
だって、何なの?
あたしは今、何を言われてるの?
傲慢なんてもんじゃない。むしろ暴君、束縛、独占欲?てゆーか所有物扱いですか?
だけどね隊長、それはちょっと違うでしょう?
「たい、ちょ…」
「あん?何だ」
気がつけば隊長も身を乗り出していて、いつの間にか距離が詰められていて、尚焦る。
「あの、そーゆうのって、自分の副官に向かって言うような科白じゃないですよ?むしろ、」
そう、むしろ。
「ご自分の好きな人に言うべき科白じゃないんスか?」
…そうよ、例えば雛森とか。
言いかけた言葉は、けれど、それ以上声にはならなかった。てゆーかもう、声すら出せなかった。




「ばーか、」と。
「だから今、こうしてお前に言ってんだろが」と。
こんな間近で、
それも、そんな強い眼差しで。
こうもはっきり言い切られてしまったら、もう。
(このひとが、あたしを好き?)なんて。どう考えても有り得ない話なんだけど、信じないわけにはいかなくなるじゃない?てゆーか信じて縋りたくもなるじゃない?!
「言っとくが、お前の言い分には一切聞く耳持たねえぞ。俺ァお前から、『YES』以外の返事を聞く気ねえからな」なんて。面と向かって言われてしまったら…もう。
大人しく頷くしかないじゃない?
本音を晒すしかないじゃない?
(あたしも貴方が好きです、って)
でも多分、『俺ァ紅の色から香の香りから飯・酒・男に至るまで、お前の好みぐらい幾らだって熟知してる』って、あんなに自信あり気に言い切ったくらいだから、あたしの気持ちなんてもうとっくに隊長にはバレバレなんだろうなあとも思うのよ、どうしたらいいの。
…ああ、ほら、だって。
吐息がかかるほど、こんなに間近で、貴方が笑っているんだもの。


−あたしの存在理由ってば、何?

今なら「そんなくだらねえ質問、虚圏の彼方へでも投げ捨てちまえ」って貴方は言うかしら?






end.


余りにも「日→←乱+雛森」色が強すぎたのと松本がもやもやしすぎたので、コピ本からは除外したネタ。あと、それぞれの煎餅の好みはテキトーです。くれぐれも本気にとったりしないでね?;;

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