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日乱
バレンタインと十番隊 2



七緒もとっくに八番隊舎に戻ってしまい、あたしと隊長、二人きりになった執務室には、再びどんよりとした重い空気と沈黙が漂う。
あたしの手には、行き場を失くした隊長宛のチョコレート。
隊首席の隊長はと云えば、不機嫌も露に目の前の書類の束にさらさらと筆を走らせている。
…なによ、なによ。
そこまでいらないって言い張るならもういいわよ!
これ、すごーく高かったのに。
すごーく並んで買ったのに。
隊長どれが好きかしらって、悩みながら選んだのに。
でも、食べて貰えないんじゃ仕方ないわよね?
かと云って、せっかく買ったチョコを捨てるなんて出来ない。だからって自分で食べるなんて以ての外。(だってそんなの寂しすぎる)
ならば、と。
チョコを片手に徐に立ち上がったあたしに、
「……おい、仕事もしねえで何処に行く気だ」
間髪入れず、地を這うような低音で、隊長からの制止がかかる。
勿論あたしはぐっと言葉に詰まって、すぐに返事なんて返せない。
だって…。

「…まあーた市丸ンとこ、か?」
「………それ、は…」

答えてしまったら更に隊長の機嫌が悪くなるのはわかっていたから、結局あたしは口を噤んだまま俯いた。
(だって仕方ないでしょう?)
隊長はチョコいらないって言うし、そもそもこれ、現世で買ったお菓子だし。
渡せるの…ギン以外に思いつかなかったんだもの。
「沈黙は『肯定』と見做すぜ、松本?」
「…お好きなように」
同時に隊長の霊圧が一段と上がり、チリチリと肌が痛みを伴った。








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