[携帯モード] [URL送信]

眠りの森の茨姫
01
フラフラフラ。実に危なっかしい足取りに身体も揺れ、右へ左へフラフラ、フラフラ。そんな様子の少女―緯夜に、ある者はいつ倒れやしないかとハラハラさせられ、またある者はああまたかと呆れ顔を浮かべる
半開きなど生温い程に、今にも閉じそうな目。何度も何度も船を漕いでおり、時折廊下にぶつかりかけては戻り、またぶつかりそうになるのを繰り返す

今にも眠ってしまいそうな様子の緯夜は、とうとう力尽きたらしく壁に凭れかかる。そのままズルズルと座り込み…


「こら」


瞼が閉じる。その直前、緯夜の肩が大きな手に揺さぶられた。緩慢な動きで瞼が開かれ―半分程だが―、銀の双眼が手の主、紅炎に向けられた


『……炎兄(ニイ)…?』

「こんな所で寝るな」

『ん〜』


瞼を擦り、ゆっくりと立ち上がる。それでもまだボーッとしている緯夜に、紅炎は背を向けしゃがんだ


『……?』

「乗れ。おぶってやる」

『……ん』


コクリと頷き、紅炎の背に乗る。しっかりと乗ったことを確認した紅炎が立ち上がると、既に緯夜は寝息を立てていた。だがそれに驚かず、慣れた様子で足を進めた



―――――――



「…ぇ、緯夜姉(ネエ)ってば!」

『……ん〜…?』


大きく身体を揺さぶられ、緯夜は目覚めた。いつの間にか、緯夜は紅炎の書室の椅子に座らされており紅覇が覗き込んでいた


『紅覇ァ…?』

「おや、起きてしまいましたか」

『明兄も…』


椅子の向こう、背後にはかけるつもりだったのだろう毛布を抱えた紅明の姿が


『何で二人とも…』

「兄上があなたをおぶっているのを見かけたんですよ。またどこかで寝ようとしたんですね?」

「着いて来た!緯夜姉、炎兄とばっかり一緒なんだも〜ん」


ギュッと緯夜の腕に抱き付く紅覇に、紅明はやれやれとため息を吐く。だがそれに呆れの色は無く、寧ろ微笑ましいと言った様子だ


「寝るのは構いませんが、せめて部屋でにしてください。どこかしこでも寝るなんて、皇女としてあまり誉められたものでは、」

「明兄、寝てるよ

緯夜ッ!!!!


短時間でまた寝息を立てた緯夜に、紅明は声を荒げ叩き起こしながら説教を始めた


「あなたという人はどうしてこういつもいつも惰眠を貪って!!これだけ寝てまだ寝足りないなんてどれだけだらしないのですか!!」

『「明兄、うるさい」』

「うるさいとは何ですか!!紅覇まで!!」

「紅明、落ち着け」


弟妹二人の言葉に煽られ熱くなる紅明を紅炎が制した。渋々と言った様子で引き下がる紅明を他所に、まだまだ覚醒しきっていない緯夜の銀髪に紅炎は触れる


『炎兄…』

「緯夜、まだ眠いのだろう。ここなら女官も来ない、好きなだけ寝ていろ」

『ん…』


言われるがまま、瞼を閉じた緯夜は長椅子に身体を乗せた。紅明と紅覇の文句が煩くもあったが、頭を撫でる紅炎の温かな掌により安らかに眠りに着いた

[next#]

1/9ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!