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その笑顔の意味は
ひょんなことから梶原邸に来てしまった櫻




邸では自分と同じ年頃の女の子が待っており、突然の訪問にもかかわらず温かく出迎えてくれた。



清楚な顔立ちに、肩で切りそろえられた濃い茶髪


穏やかに微笑みむその仕草がやけに落ち着いている



景時さんの妹さんということだけど、なんだかお兄さんよりも大人びてみえる。



「私は朔、よろしくね。同性の子と話す機会があまりなかったから、すごく嬉しいわ。よかったらそのまま名前で呼んでちょうだいね。」




「初めまして、櫻です。お兄さんにもさっき知り合ったばかりなの。

私、京に来て間もないから、あまり知り合いもいないの。だからこんな私でよかったら、仲良くしてね、朔ちゃん。」



「ええ、勿論よ。」


お互いニッコリ微笑み合うとどちらからともなく握手をした。



「うん、うん、なんか友情芽生えたって感じでいいっ、いいね〜!

でも、そんな時に悪いんだけどさ、朔〜朝餉にして貰っていいかな?」


景時はお腹をさすりながら朔をチラッと見る。




「もうっ、兄上ったら!」



「まあまあ、後でゆっくりと話せるんだしねぇ〜。オレは待ってる間、ちょっと用事してくるからさ。」



“空気読んでよ”とばかりに朔は景時を睨むが、それが本心からではないと分かるのか景時は気にすることもなくこちらに背を向け手を振ると行ってしまった。



「ほんっとに…失礼な兄上だわ。」



「朔ちゃん、私手伝うよ。」



「ありがとう、櫻ちゃん。大丈夫よ、慣れてるから。九郎殿と待っていてね。」



『朔殿…いつもすまないな。』



「気になさらないで下さいね。」



少し肩身狭そうに口を開いた九郎を気遣ってか、柔らかい笑みを九郎に向けると朔は厨へと姿を消した。



男の人なら皆、清楚で落ち着いた女の子の方が好きなのかな?



一瞬重なった二人の視線がやけに気になってしまう



“いつもすまない”って事は…よく会いに来てる?



もしかして二人ってそうゆう仲なのかな?


一度気になりだしたら、想像だけが先走ってしまい、せっかくの二人だけの時間も忘れ考え耽ってしまう。



『俺は庭で稽古をするが、お前も来るか?』



「あの…九郎様はいつもここにいらっしゃるんですか?

もしかして朔ちゃんと決められた仲だったりしますか?」



それに答えるわけでもなく自分でも意外な言葉が口を衝いて出てきてしまった。



『何、可笑しな事を言っているんだ?俺にはそうゆう女子はいないし、ましてやその相手が朔殿など有り得ないぞ。』



「ふふふ、良かったです。」



櫻は九郎が“有り得ない”と言い切ったことが気になりはしたが、勝手な妄想に終止符が付けられ胸をなでおろした。



『何がだ?』



「いえっ、何でもないんですっ!」



手と顔を大袈裟に横に振る櫻を見て、九郎は一瞬驚いていたが直ぐに目を細め微笑んだ。



『本当に変わった奴だな。でお前は一緒に庭に来るのか?』


「はいっ、是非ご一緒させて下さい!」


浮ついた気分で九郎の後をついて行くと、九郎が突然振り返る。



どこか可笑しそうに自分を見る九郎を櫻はキョトンと見つめ返してみた。



『わかったぞ。櫻は俺が昔飼っていた犬に似てるんだな。

さっきみたいに喜んで後をついて来る時なんて本当にそっくりだ。

よく尻尾を振ってついて来たんだよ。』



いぬ…犬…、犬っ!?


九郎の声が段々遠退いてゆくような気すらする…



「ちょっと…ひどくないですか、九郎様?」



『そうか?最高の褒め言葉だと思うんだが。』



悪びれた様子もなく九郎は未だにニコニコ笑っている。



「えっ!?どこがなんです?」



『親しみやすくていいだろう。ほら、行くぞ。

俺にも様なんて付けなくていいからな。』




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