[通常モード] [URL送信]
おんぶもいいな
将臣の背中にたどたどしく未麻の手が回される。

「大丈夫…、私はずっと将臣の側にいるよ…。」


自分から抱きしめてみて


初めて気づくその逞しさ


記憶の中の将臣はこんなにも


男らしい体型だったのだろうか?


考えてるうちにどんどん増していく胸の高鳴りに


今まで抑えていた想いまでもが込み上げてくる


将臣が…私を?


期待と共に湧き起こる不安


勘違い…だったら?


「ねぇ、将臣…。これって…その〜、えっと…将臣は…」


桃色に頬を染めた未麻が言いづらそうに、ぽつりぽつりと呟く。


何が言いたいのか容易に察しがついた将臣は


ゆっくりと体を起こすと代わりに口を開いた。


『姉弟とか家族とかじゃなく、1人の女としてお前を想ってるんだぜ、俺は。』


「ありが…とう。すっごく嬉しいんだけど…

急過ぎて…なんだか実感できなくて…。」


未麻は顔を一層赤らめ、俯き加減ではにかみ微笑んだ。


『なら…もっと実感させてやろうか?』


冗談で言ったもののそんな顔をされたら


このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られるだろうが…


そんな想いを胸の内に抑え込み、将臣は未麻を抱えて立ち上がった。


「ひゃっ!?ま、将臣、私、歩けるから降ろしていいよ!ほらっ、重いし…ね!」


『そんなに生足出してこんな藪ん中歩いたら、脚傷だらけになるぜ。』


未麻の短い制服のスカートを眺める将臣に


未麻は恥ずかしそうにスカートの裾を両手で押さえ、俯きながら訴える。


「そんなに見られたらどうしていいか…わかんないよ…。

それじゃなくても…こんな近くに将臣の顔があって…その…どこ見ていいかわかんないのに。

せめて…おんぶにしてもらっても…いい?」


『艶めかしく俺でも見上げてろよ、運ばれる礼にでもな。』


「なっ、何言ってるの!?」


『冗談だよ。ったく…仕方ねぇなぁ。』


一度未麻を降ろすと、将臣はくるりと背を向け未麻の前に屈んだ。


「行くよ。」


『ああ、早く乗れって。』


背中に感じる柔らかさに知らずに心弾ませている自分がいた。


『おぶるのも…悪くねぇな。』


「え?」


『胸が当たる…』


「………。」


一瞬の沈黙の後、将臣は未麻にボカスカ頭を叩かれるはめになったのは言うまでもない。


「セクハラ!最低っ!」


『悪かったから、暴れるな、暴れるな!』


「もう…からかい過ぎだよ…。やっぱり私の知ってる将臣とはなんか…違うよ。」


『お前が好きだった…俺じゃねぇか?』


突然、真顔で振り向かれ、未麻はハッと息を呑む。



そこにいるのは

また違った将臣で

どの将臣にも

惹きつけられてしまう自分がいる



将臣…好きが

止まらなくなっちゃったよ…




未麻は将臣から視線を逸らし、ボソボソと呟く。



「どの将臣も…好きに決まってるでしょ。」


『だよな。色んな俺が何度でもお前を惚れさせるぜ。』


「すっごい余裕だね。」


『まあな。』



余裕なんかじゃねぇよ。


これから行く場所は野獣のような奴から、貴公子のように近づいてくる奴らとか沢山いるのによ。


あいつらに興味持たれたらアウトだ。


面倒事はごめんだからな。


ってな訳で、許嫁って事にしとくか。




何やら考えてる風の将臣と、将臣の言葉に未だ照れている未麻は暢気に鞍馬の山道を下って行った。


[*前へ][次へ#]

3/23ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!