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気分転換
未麻が平家の邸に来てから数ヶ月程の月日が過ぎていた。


将臣と未麻は婚儀こそ未だ挙げてはいなかったが、

皆今では未麻のことを北の方様や奥方様と呼ぶほど二人の関係は確立していた。


隙あらばと相変わらず二人の邪魔をする者達も少々いることはいるが、

比較的穏やかな日々を過ごせている…


…と思っているのは実は未麻だけで、

将臣はというと未だに心の繋がりだけの関係に再び焦りを感じ始めていた。


焦らないようにと極力努めていたが、

将臣だってやはり男であって愛しい女をもっと感じたいと思うのは当たり前のこと。



折角いい雰囲気にもっていけたと思っても、

未だに邪魔が入ってしまうこの悲惨な境遇に嫌気がさしていた。




『…ったく…。いい加減…ほっとけって。』


将臣が悪態をつきながら一人塗れ縁で月見酒をしていると、

背後から未麻が寄って来る足音が聞こえる。



「気分がのらない?疲れてるのかな?

どれどれ」



将臣の肩をゆっくりともみほぐしながら未麻は続けた。
「肩が凝ってるみたいだね。

お風呂に入れてても樽みたいのじや男の人には狭いよね。

温泉ってやっぱりないのかな?

あれだったら疲れとかとれそうだよねぇ。」



『…温………泉…』


「将臣?」



黙ったままだった将臣は突然ニヤリとする。



『未麻、ナイスだぜ、それ!

二人で温泉いいじゃねぇか。』


「う…うん。どうしたの?将臣…

なんだかすごく気合い入ってるみたいだけど。」


未麻に顔を覗き込まれ、将臣は自分の企みを悟られないようシラっとする。


『気のせいじゃねぇか。

でも真面目に温泉行こうぜ。』



「じゃあ、早速楓に聞いてみるね。

温泉って聞いたらワクワクしてきちゃった。」


そう言うやいな、未麻は勢いよく部屋を出て行ってしまった。



『おっ…おい!

未麻、ちょって待てっ。』



慌てて将臣が振り返った時は既に遅く、

未麻の姿の代わりに将臣の深い溜め息だけが部屋に残った。



『嫌な予感がする…』


将臣のそれは…勿論的中することになるのだった。

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