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光とともに
何もない空間に私はいた。

色も音も何もない無の世界

ふと藍色の髪の見慣れた青年の後ろ姿が見える。

「将臣!」

声にならない…。

「将臣、将臣!」

遠ざかって行く将臣にどんなに叫ぼうと未麻の声は届かない。

将臣と思われる青年がふと立ち止まり振り返った。

「あっ、将臣!」

一瞬の希望の光も将臣の瞳を見た途端儚く消え失せる。

それは酷く冷たい眼差しだったから。

『誰だ、お前?』

確かにそれは将臣のものだったけれど、今までに未麻が聴いたことのないくらい低く鋭い声だった。

「将臣!
未麻だよ、ねぇ将臣!」

私の声は何一つ音になることはなかった。

そこに立っていることもできず未麻はその場で愕然と跪いた。


将臣…

私を

置いていかないで…

将臣…

私の事を

忘れないで…



『未麻…未麻…』


俯いたままの未麻に響いてくる誰かの優しい声

『お前を

1人にはしない

…決して』


ふと目の前に差し伸べられる手

縋るように手を握りしめる

とても…温かい

無の世界に色がついていくのがわかる

未麻が顔を上げるのと同時に眩い光が辺り一帯を覆う。

思わず瞳を閉じた未麻が次に瞼を開けた時ー

そこには心配そうに自分を見つめる九郎の姿があった。






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