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特別
『行ってしまいましたね。』

「…うん。

ねぇ、弁慶…その手…。」

未だに人の腰に手を回している弁慶を指摘する。

『これですか?
そうして欲しいのかと思ったんですけど…違いましたか?』

ニッコリ微笑んでいる弁慶に未麻はたじろぐ。

こ、こ、この人ってば…

何者!?

でもそんな弁慶を何故か嫌いにはなれなかった。

『おぃ弁慶。未麻だって年頃の女子だ。もう童ではないんだぞ。』

九郎はいい加減、弁慶の態度に痺れを切らし口を挟んだのだった。

『九郎、僕は一度だって未麻を童だなんて思ったことありませんよ。』

そう言うと弁慶は未麻の髪を一束とり、そっと口付ける。

『それが良くないんだ!俺は先生からも未麻を弁慶にあまり近づけるなと言われているんだ。』

「えっ、お兄ちゃんが!?
お兄ちゃんも九郎も考え過ぎだよ。弁慶は私の反応を見て楽しんでるだけなんだから。」

ねぇと同意を求めるように未麻は弁慶を見る。

『さて、それはどうでしょうね。』

相変わらず弁慶は何を考えてるのか未麻も九郎も分からずにいた。


未麻…

僕はからかってるわけじゃない

君に会うと自分でも信じられない行動をとってしまう僕がいる

わざと会いに行かなかったんですよ

僕には特別な人など…

いなくていいのだから…


『ほら、君達は景時の所に行くのでしょ。こんな所で油を売ってていいんですか?』

『それもそうだな。
弁慶、お前も来るか?』

『僕は比叡にちょっと用事がありましてね。また今度にします。』

弁慶は少し乱れた外套を整えるとまた人込みの中に消えて行った。

『未麻…、て、て、手を貸せ。』

「何か手伝って欲しいの?」

『ち、違う!お前がまた迷子にならんようにだな…その…手を握っていることにした。』

そう言う九郎は真っ直ぐ未麻を見れずにいた。

耳が赤いので照れているのだろう。

「本当に心配かけてごめんね、九郎。」

未麻は九郎の手を自分から握ってみせると、九郎はパッと未麻を見たが直ぐにそっぽを向き歩き出した。

『弟に…会えてよかったな。』

「うん。神泉苑だよね。」

『ああ。梶原邸から近くー』「あっ!!」

九郎を遮り突然未麻が叫んだ。

『な、な、何なんだ。いきなり!』

「時間分かんないよ。」

ガクンと肩を落とす未麻だった。

将臣の…

…バカ!



へっ…くしゅん

おいおい風邪かよ。
ったく、誰だよ人に移した奴よ。


この時将臣はまだ自分が時間を指定し忘れていることに気づいていなかった。


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あきゅろす。
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