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学園天国!
強引VS強引!?








「…ちとせいる?」


「え、」

「あ……、」



─────…



もしこの問題が国語のテストなどに出たとして、
あるいはそれをアウストラロピテクスに尋ねられたとして、
果たして我々はそれに答えることが可能であろうか?…


「今の状況を、簡潔に三十字以内で答えよ。」


………えぇと、
えぇと…、


怪しい理科教師がいて、
心理学の研究者で、
惚れ薬を開発して、
私たちは実験台…、


そんでもって、


怪しい六道先生からもらったスポーツドリンクを飲んだ山本武が、
なんの間違いか怪しい雲行きになっちゃったりして…

「ヤツ」が、現れたのだ。


嗚呼駄目、三十字以内だなんて絶対に不可能。

あの理科教師のせいでややこしいことになった。
(大方、山本武にとったら私は、六道先生によって彼のファンの一人にされてるんだろう。)



「あ、ちとせいた。」

雲雀恭弥はまるで「小石があった」ようなノリで私を指差す。
(失礼極まりないやつだ。)


「いるよ、悪い?」

不愉快な気持ちになるのはヤツに会うたびのことだが、今はそれがひとしおなのだ。
先生に面倒な仕事は押し付けられるわ、山本武と二人きりにされるわ、お前には石ころ扱いされるわ。


解答欄も全て埋まったし、シャープペンシルをペンケースにしまいながら、片付けていく。
いつもより乱暴に扱ったせいで、ペンとペンがカシャンと音を立てた。

早く二人から離れたいのだ。家に帰ったら一旦寝て、おやつ食べながら勉強でもしよう。


「いや、ちとせに用事があるから。」

見せたいものがあるんだよ。

彼は自慢気に、口角を上げる。


「…、」

そして私の計画は、見事に破壊された。
あぁ、せっかく楽しみにしていたブレイクタイムが。
(こいつは破壊専門、創造の出来ない貴重な存在なのだ。)


「……わかったよ、」

逆らうのは得策ではない。
何故ならヤツは、繰り返すがやはり、何かを壊すことに群を抜く人間だからだ。
(私の所為で誰かがとばっちりを受けるなんて御免だからな。)


カバンを肩に担ぎ(今日はやけに重いな)、山本武の隣を通り過ぎる。


「そりゃねーだろ?」


…前に、
それを阻止された。


「…なに、きみ。」


一体どうしたことだ。

身体が思うように前に進まないのだが?
(なんだ金縛りか?白昼夢でも金縛りがでるのか。)


「オレが先に話してたのな?」

それを堂々横から奪われんのは…アレだろ?


──…どれだよ?

爽やかな笑みをたたえつつ、言っているセリフはまるで幼稚園児だが。
(「そのオモチャは僕が遊ぶ。」「やだ!オレが先に遊んでるんだよ!」的な。)


「まだ田中に言いたいこと言えてないし、行かせるわけには行かないのなー。」


いや、行かせてくれ。
言いたいことなんか言わなくていい。
(私の悪い予想が当たっているならば、次に彼から飛び出すセリフは、複雑なトライアングルを生み出しかねないセリフだからだ。)


「…へぇ、言いたいことって何だい?」


興味深そうに片眉を吊り上げる雲雀恭弥。

…アレ?
何、そこ食い付いちゃう?
…世界平和。ラブ&ピースでいこうよ。


(私は彼に片腕を掴まれたまま個性豊かなお二人に挟まれて、痛い視線のぶつかり合いをひしひしと感じている最中であり。)


「…ヒバリには、関係なくね?」


そして彼は、爽やかに厄介なことを言ってのける。

ぴく、と引きつったヤツの表情に、まわりの空気は一気に氷点下へと落ちた。
(…実際にはさほど分からないが、オーラだけで周囲の気温を1、2℃変えられる人間がいたなら、それだけでそいつはヤバイと判断してくれていいと思う。)


「ふぅん…。」

ヤツは興味が逸れたかのように生返事をしたかと思えば、


「だったら余計、ちとせを返してもらわないと。」

あまりに妖しすぎる笑みを、口元に浮かべた。


つかつかつか、
曇りひとつないローファーでヤツが歩み寄って来ると、

「あ…?」

がっちりと、もう一方の私の腕が掴まれた。


「………、」


「ちとせを離して。」

「いや、いつも田中と一緒にいるんだから、今日くらい譲ってくれても罰は当たんねーと思うけどなー。」

「何言ってるの?僕がいつ、ちとせと一緒にいるって?」

「いつもなのなー。」

「…ふん、君の目は飾りだね。どれだけちとせのこと見てるのさ。」

「んー、ヒバリと同じくらい?」

「…咬み殺すよ。」


ヤツが隠し武器を装備しようとしたので、私は素早く彼の足を蹴る。
い"…っ、と悲痛なうめき声も聞こえたような気がするが、それはあえてスルーの方向で。


「…私の意思は無視なのか?」

言いながらも尚、武器を出すタイミングを見計らっている彼のローファーを踏みつけ踏みつけ、ぐりぐりと痛め付けてやる。

ヤツはヤツで私の腕の内側をつねっているのだから、お互い様。
(…痛くないけど。)



「とにかくそんなに引っ張るな!」

二人とも、自分の力の強さをわきまえろ!


噛み付くようにまくし立て、両腕を引き剥がそうとすれば尚更抱え込むかのようにしがみ付いてくる二人。

お前らは母ちゃんに群がる子供か!


かなり頭にキて、そろそろこちらも力業に頼ろうかと不自由な手で空砲を取り出せば……、



「あれっ、山本?」


さてさて何処から来たのやら、学校一のダメ人間、
沢田綱吉の登場だ。


「え、…ツナ?」

「オレら外で待ってたんだけど、山本遅いから…、」

「うわ、わりー!」


急いで私から手を離し、エナメルバックを肩から掛ける。


「じゃっ、また明日な!」

ニカッと笑い、ダメツナの待つ扉の向こうへ消えていく山本武。
(さっきまでの強情ぶりは何処へ?沢田綱吉、恐るべし。)


「今度は、二人のときにな!」

ひらひらと私に手を振って、嗚呼、一難去った。



─────…



そういうわけで、教室に残されたのは雲雀恭弥と私だけだ。


「……ちょっと、」

「なに?」

「いい加減離せよ。」

「ああ、忘れてた。」

「忘れんな。」


いつまでも掴まれた腕を振り払うように離せば、何の因果かクスッと笑われた。
(本っっ当にこの男の内は読めない。)


「山本武と、今後二人きりになったりしないでね。」

忠告するような口調で私を睨む彼。


「分かってるよ、あんなに愚図られるのはもうたくさんだ。」

こちらも呆れ口調で返事を返すが、「そういう意味じゃない。」とかえって怒られてしまった。
(何なんだよ、もう。)



「ちとせ、見せたいものがあるんだけど。」

「あ?」

見せたいもの?

そういえばコイツが教室に来たのも、見せたいものがあるとか言ってたな。


「…今、行くよ。」


薄紫の羽衣を纏った夕暮れの天女が風を遊ばせる。

私は再度バックを担ぎ直し、教室を出た。



──────────……



こいつの強引さには、
やっぱり誰も適わない。





continue…




やっとテスト終わりましたね。
今日、現時点では社会と数学が返却されました。
社会が壊滅状態に陥りました。
数学の平均点が48点て。
ここにもゆとり教育の歪みが見えた瞬間でした。
ああ、ヤバイぜ。

ではまた次回!







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あきゅろす。
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