学園天国!
さあ食べろ!
彼の食生活が極めて不健康であることは、重々承知の上だった。
睡眠時間もてんでばらばらだし、御飯を食べるといえば、草壁にパシらせたコンビニのおにぎりを2、3個…。
これでよくあれだけのパワーと肌艶を保っていられるものだと思っていたが、流石にこれはないだろう。
「…いつだっけ」
「何が」
「最後に食事したの」
「……はぁ?」
私は口をへの字以上に曲げて、デスクに片肘を付きながら唸っているその人物を見た。
なに食べたっけ?じゃなくて、いつ食べたっけ?か。
これは記憶力が無いバカ…とは違うらしい。
「お前、お昼食べたんじゃねぇの」
「いや、食べてない」
「き、昨日の晩は?」
「…コーヒーを飲んだことだけは覚えてる」
「一昨日の……」
「たしか草壁に貰ったチョコレートを3、4粒」
しれぇっとして、そう答えやがった。この三日で、チョコレート3、4粒!
戦闘マニアが戦闘以外に興味があるとは思ってなかったが、まさか、ここまでなんて、いくらなんでもルーズ過ぎるんじゃないのか。
「体内で原子力発電でもしてんじゃねぇの、お前」と開いていた参考書を閉じる(こうなるともう集中できないのは見えてる)と、彼は眉をひそめた。
「頭の中で年中花が咲き乱れてるようなやつに言われるとムカつく」
「ばっ、んなわけあるか!ちゃんと脳ミソ入ってるよ!」
「じゃあもう消費期限切れだね」
「まだ使える!」
憤慨して立ち上がる。
なんだよ、こっちはお前の心配してやったのに!
(…と、言うとまた「大きなお世話」だとか言うんだろうけど!)
そういえば私が昼御飯食べてたときも、こいつずっと仕事ばっかりして…。結局、一番大事な自分のことをおろそかにしちゃうんだよなぁ。
ため息をつくと、奴が少し哀れになってきた。
細い身体、色白、なのに強がってばっかでさ。
「…仕方ないやつ、」
私は財布の中身を思い返しながら取り出し、雲雀の前に進み出る。
「本来なら私がこんな役をするなんて考えられないが…、有り難く思えよ。何か奢ってやる」
めいっぱい、これが不本意だと思わせるように言葉を選んだ。フフン、と勝ち誇った顔をしてやれば私の勝ちだ、と思っていたが、やはり世の中甘くない。
「それって、僕のため?」
またまたシレッと、こいつは恥ずかしいことを恥ずかしがる風もなく言ってのける。
しかもそれが遠からず近からずといったところで、私は意表を突かれてドギマギしてしまった。
「ん、なわけあるか!誰がそんな…!」
「ふぅん、違うんだ」
「当たり前だ!早くしないと、気が変わるぞ!」
「へぇ、じゃあ、気が変わる前にお願いするよ。僕は出来合いものなんて食べたくないんだ」
と、話の流れは私の思わない、よからぬ方向へ向かっている。
イタズラを思いついた。
雲雀は今、そんな表情をしている。私は、ああ、こいつに同情だなんて、やっぱりしなければよかったと、今さらになって後悔した。
「調理場は用意するからさ…」
僕のために、君の手料理を作ってよ。
…少女マンガ顔負けの甘いセリフは、今や悪魔の囁きにしか聞こえない。
─────…
「…で、」
「なに」
「どうなんだよ」
「なにが」
「料理だよ!」
「…うん、期待した以上に不味いよ」
「……っ」
人を本気で殺したい、と思ったのは、紛れもなく今が初めてだ。
こっちは慣れない包丁とフライパンで一生懸命作ったというのに。
「…もう、作ってやらん」
「何?」
「私だって、文句言われてまでつくるほど、お人好しじゃないんだからなっ」
「……」
私が一喝してやると、雲雀も考えを改めたのか、無言で残りの料理を食べはじめた。
不味いなら無理して食べる必要など、何もないのに。
「…練習すればいいよ」
「あ?」
「君の料理がうまくなるまで、僕が味見し続けてあげる」
「……」
すっかり完食してしまった後の皿を私に押しつけて、彼は学ランを羽織った。
どうやら見回りの時間らしい。が、なぜこっちを向かない?
「…それって、」
「……」
「また、私の料理が食べたいってことか?」
「………」
睨むように振り向いたかと思えば、鈍いね、と彼はため息をついた。
鈍いのではない、貴様の表現が遠回しすぎるのだ、とは言うまい。
「…見回り行くんだ。君も、くるよね?」
その言葉が、さっきの質問にまるでYESと答えたかのようで、なぜか私の心の中は、冬だというのに春がきたような気がした。
気がしただけだ、あくまで気のせいだ、うん。
「……まぁ、」
行ってやらんこともないが?
と挑発気味に言えば、彼は機嫌悪そうに私の上着を取ってよこす。
「僕好みの味が作れるように指導してあげるよ」
「それ、私の得になるのか?」
「将来の役に立つでしょ」
「……」
帰りに、料理の本でも買って帰ることにする。
ち
ょ
っ
と
喜んでいいかな
─────
話の流れガン無視で作りました。危ないよ、一年以上ほったらかしにしておくとこだった。連載の雰囲気なんてremenberだよ。スペル合ってる?
誤字脱字、辛口評価、
お待ちしております。
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