学園天国!
冗談やめろ!
「メロンソーダ」
「はい」
「飲みたい」
「畏まりました!」
─────…
「ほんと、羨ましいよな」
出て行った草壁を尻目に見て、雲雀に視線を戻す。
「…なに?」
雲雀はふと動かしている手を止めて、こちらを見た。
「草壁、なんでもお前の言うこと聞くじゃん」
「…あれは風紀委員長補佐だ」
「そうなのか?」
「知らなかったの?」
「補佐って、委員長の我が儘係なのか?」
「………」
彼はそれを聞いて、むぅっと口をつぐんだ。
くるくると鉛筆を弄んでいた手も止まる。
しかし彼はまたすぐに口元を緩めて、
「…委員長が快活に仕事を出来るよう補佐するのが、彼の仕事だからね」
「む…、そうきたか」
さすが組の頭と言うべきか、頭の回転はよろしいようで。…頭の回転は。
(性格はよろしくない。)
「委員長ー!」
メロンソーダですー!
勢い良く入ってきたのは、先ほど勇んでメロンソーダを調達しに行った草壁。
パシられてることにも気付かないのか、パシられてることが嬉しいのかは定かではないが、彼は至福そうであった。
「ん」
当たり前のように彼はデスクを離れる。私の座るテーブルの向かいに座って、草壁がジュースを持ってくるのを待っている。
ご丁寧に彼の持ってきたのはサクランボの付いたメロンソーダで、雲雀もそれに異論はない様子。
「では、私は校内の見回りに行ってきます」
草壁が下がる。
彼はもうメロンソーダに夢中で何も言わないが、沈黙を肯定と解釈したのか、部屋は二人きりになった。
…No.2の美学か。
私の分まで用意してある。
私は、メロンソーダの正体がメロンシロップの入った炭酸水であることを知っているので、あまり好んで飲んだりはしないのだが。
「たまにさ、無性に炭酸が飲みたくなるときって、無い?」
「ああ、あるな」
刺激物が欲しくなるというか、スッキリしたいというか。分からないが、モヤモヤと胸焼けがする日は特にそんな感じがする。
雲雀は、平穏な雰囲気に慣れてると炭酸が飲みたくなる、と言った。
よく意味が分からないが、彼なりの「咬み殺したい衝動」を発散したものなのかもしれない。
「そういえば、」
サクランボを加える彼を見て、唐突に思い出した。
「サクランボの茎、口の中で結べるか?」
「…結ぶ?」
「うん、固結び」
舌使ってな。
私が言うと彼は「ふうん」と、茎を口の中に含んだ。
様子からして初めての試みらしい、これがどれだけ難しいか知らないんだな。
噛み千切っちゃうなよ、間違えて。
しばらく眉間にしわを寄せて口をモゴモゴさせていた彼だが、ようやく諦めたようにこう言った。
「…舌がつりそう」
「だろうな」
私は元々できないと知っていたので、初めからそんな無謀な挑戦はしない。
ぺっ、と吐き出された茎を見て、しかし私は唖然とした。
「か、たむすび…」
二個、出来てるんだけど。
おかしいな、なんでかな。
むしろ怪訝な目を向けると、誰も出来なかったとは言ってないよ、と彼はストローで氷をカラカラさせる。
舌、つればよかったのに。
ボソリと呟くと、ストローをくわえたままで上目遣いに睨んできた。
「で、結べたら何かいいことでもあるの?」
「…いや、」
「何?」
「キスがうまいらしい、って、それだけ」
「……」
「……」
しばらくの沈黙が過った。
なんだ、何だ。
なんで緊張しているんだろう。なんで、雲雀は黙ったままなのだろう。
よく分からないが顔が上げ辛くて、彼の表情は見えない。
しばらくしたのち、彼が鼻で笑ったのが分かった。
「…試してみる?」
「遠慮する」
そう、残念。と、さほど残念でもなさそうに、彼は言った。
な
ん
だ
その余裕は
(気付いたんだ)
(いつだって、試すことは出来るって)
─────
わーい、みじかーい(゚∀゚)
これからはこういう短編になります。
連載なんだよ、長編、じゃなくて。だからブチブチッと切れてていいんだ。
うふふ。
改装するんだあ。
もっと短くてもっとシンプルな話のサイトにします。
覚悟しててね。
誤字脱字、辛口評価、
お待ちしております。
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