狐の嫁入り
Η
芸術の秋、
スポーツの秋、
読書の秋、
……恋の秋?
――――――――――……
「失恋率が高いのって、春らしいよ。」
「へぇ。」
「続いて秋。」
「ふぅん。」
「その次が冬でー、」
「……」
「その次が…、」
「夏ね。もうわかったから黙ってくれる?」
雲雀くんに必死に話しかけてたら、集中できないって怒られた。
春はね、ぶつりてき距離が離れるからだって。
クラス替えとかで好きな人と離れちゃって、好きじゃなくなっちゃうって。
秋は、夏の恋の熱が冷めるころで、夏恋が一番おおいから、冬は三番目。
あーあ、お腹空いた。
彼の部屋にいても邪魔がられるばっかりだし、久しぶりに授業でるかな。
この前の雲雀くん(絶対会わないなんて絶対だめって言った!)を思い出してひとりニヤニヤしながら、部屋を後にする。
彼は私に不快そうな一瞥をくれただけで、何も言わなかった。
―――――………
休み時間。
数学の後ってどうしてこんなにお腹空くかな…。
ひとりぼやんと席に座っていれば、
「田中、これさ…、」
あ、山本武くん。
雲雀くんの次に美味しそうなにおいのする人。
前まで(雲雀くんを知るまで)は、彼を見る度よだれが出そうになるのを堪えるのに必死だったな。
「ん?…なにこれ?」
渡されたのは、バットと硬球のミニストップ。
わー、野球少年らしい。
「すごーい!ちっちゃーい!」
この硬球、すごい。
ちゃんと縫ってある!
「これ、どうしたの?」
私の前の席に馬に乗るように座っている山本くんに尋ねる。
「それ、やるよっ」
目を輝かせてストラップを眺める私に、嬉しそうに彼は言った。
「え、あげるって…、いいよ、そんなの…!」
私なにもしてないよ!
あわてて山本くんに突き返そうとすれば、おきまりの「まーまー」でなだめられてしまう。
「俺が勝手に買おうって思っただけだしな!」
まぁ、去年わたせなかった誕プレくらいに考えといて!
ニコニコとまた差し出されて、まぁ、そういうことなら。もらっちゃおう!
「ありがとね!」
わー、これどこに付けよう?スクールバックに付けても怒られないかな。
雲雀くんの怒った顔がポンと浮かんで、あー、スクールバックはダメだ。
「なぁ、」
付ける場所を考えるのに夢中で、山本くんが声を掛けてくれるまで分からなかった。
「なぁ、それの代わりって言ったらなんだけど…、」
「うん?」
「今度、一緒にどっか行かねぇ?」
「………ヮォ。」
…ありゃりゃ?
爽やかに笑う少年。
「一緒にキャッチボールしようぜ!」の要領。
こ、これは……、
で、ディトのお誘い!?
まさか、いや、そんなはずはない…、
しかし今実際に起こっているのはそれだ。
どうする?
(だって雲雀くん私のこと嫌がるし、生気も気が向かないとくれないし、んん?山本くんだったらもらっても大丈夫かな。あ、でもそうなると交際契約をしなきゃいけないかな、あれ?なんかわけわかんなくなってきたぞー?)
わかんないなぁ。
わかんないけど、
……お腹空いた。
「うん、行こ!」
ちょっとくらいなら分けてもらってもいいよね。
……あれ?
なんだろうこの罪悪感?
…なにも悪いことしてないんだけどなぁ。
「よっしゃ!じゃあ、今度の日曜日!」
「オッケー!」
(日曜日は特別委員会があった気がするけど…)
まぁ、私風紀委員じゃないし!
気軽に思って、当日の服なんか考えちゃって。
そして私は、知るのだ。
雲雀くんを狙っているのが、
私だけではないことに。
――――――――――……
作戦決行は今度の日曜日。
continue…
みなさまこんにちは。
俺様僕様、六道骸です。
クフフフ…………、
やっと来ましたねこのときが!
え?なにかって?
いや、クフフ、こちらの話ですよ。
あなたはなにも知らなくていいんです。僕に付いて来さえしていればね…。
ではまた次回…。
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