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狐の嫁入り
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「雲雀くん喰わずは武士の恥って、よく言うよね!」

「言わないね。」



――――――――――……




「お腹空いたな…」

「…」

「おなかすいたなー」

「……」

「おーなーか、すーいーたーなー!」

「うるさい。」


何なんだこの女は。

朝から僕の応接室(自室)に入り浸って、ソファーで勝手にくつろいで。
…授業はどうした。


「だって朝から何にも食べてないし…」

朝ごはん抜きで勉強に集中なんて出来ないよ。


ぷぅっと頬を膨らませて僕を睨むけど、はっきり言ってかわいくないよ。
むしろ腹立たしい位だ。


「今まで君はそれで勉強してたんでしょ。」

飢え死にしかける程だったんだから、我慢しなよ。

(だって君のご飯って、つまりアレでしょ?てことは僕が君とアレでしょ?それは中学生としてアレだからね。)

淡々と書類に目を通す。
文化祭プログラム、体育祭予算案、転校手続き書。
これくらい校長がやればいいのに、僕の決定に背くのが怖いからってみんな僕任せなんだ。
(そのせいで毎日、朝から晩まで働き詰めなのに。)

君はいいよね。
お腹すいて、寝て、起きたらそれで一日が終わるんだから。


「だから頭悪いんだってば。」

家で復習すらできないし。
この前のテスト、英語で真剣な0点を取ったときは流石にビビったよ。
まぁ私は日本の伝統あるお稲荷様だから、仕方ないんだけどねー。

ハァ、なんて何故か満足げなため息。一体何を誇らしく思っているのかさっぱり検討もつかない。
それより君、僕お気に入りのカップを勝手に使うなんて言語道断だよ。


「自業自得。」

だからちょっと仕返ししてやろうと思って、辛辣な言葉を投げ掛ける。
(それに君、お稲荷様じゃないでしょ。お稲荷様って一応神様なんだから。…僕は信じてないけど。)


「だってみんな生気薄いしさぁ…」

食べても満足出来なさそうだし。不味そうだし。

って話が噛み合わない。
僕は君の頭の悪さについて話しているのに、肝心の君はさっきから食べ物の話しかしてないよね。

それに生気が不味そうって…、この子は随分と酷いこと言う子だ。

「それに比べ雲雀くんの生気ときたら!あれ、ヤバいよ!ムフフだよ!」

「…む、ムフフ…?」

それって誉め言葉?
ムフフって何?
とりあえずは僕のほうが他の奴より上だということだろうか。
(まぁそこらの草食動物と僕が違うのは当たり前だけどね。)

「んんーっ、チョコケーキ美味しー!」

と彼女は頬に手を当てる。

言っとくけど、美味しいものを食べてもほっぺは落ちないからね。
…そう昨日彼女に教えて、ええ!?と大げさに驚かれたのを覚えている。



人間に化ける狐に興味が湧いて、彼女についていくつか分かったことがある。

彼女は尻尾が9本の「九尾の狐」といって、人間の生気を栄養として長生きしているらしい。
「天狐」になれば、神に等しい存在…つまりお稲荷様みたいになれるっていう…感じかな。やっぱりよく分からない。

ていうか君の食べてるそのチョコケーキ、草壁のだからね。怒られても知らないよ。
と僕は心のなかで呟き、早く草壁帰って来ないかなと楽しみにしている。



「はぁ…労働の後のケーキって、何でこんな美味しいんだろ!」


嗚呼…仕事の後の君の言葉って、何でこんなムカつくんだろ!
君、勉強も仕事もしてないでしょ。


「……ねぇ、」

ケーキを食べる幸せそうな顔が癪に障って、ちょっと無愛想に呼んでみる。


「珈琲いれてよ。」

朝から何もしてないんだから、それくらい働け。
顎で給湯室をしゃくって、彼女を向かわせる。

僕は砂糖もミルクもいらないから、ブラックで。あとあまり熱すぎたら飲めないから気をつけるように!


「注文多いな……。」

「何?」

「何も!」


部屋から消えた君に一先ず安心。
さて、彼女が帰ってきたらまたうるさくなるからね。
その前にさっさと終わらせるか…、と目の前のプリントを一束掴む。

…ん、あれ?
これ、彼女の英語の答案用紙じゃないか。(なんでこんなとこに……、しかも本当に0点。)

『次の言葉を英単語に直しなさい。
Q1,鳥→ チキン』

「…」

敢えて突っ込まないけど。
ベタすぎて言葉も無いっていうか彼女はきっと脳ミソが溶けだしているんだろうきっとそうに違いない。
でなければ脳ミソが昨日の味噌汁に使われたに違いない。


「はぁ…」

明らかに今のは仕事からの疲れではなく、もっと別のことからきた溜め息だ。

僕は机の上の資料をまた一束掴む。

パタパタ、と廊下で足音が聞こえた。
草壁かな君かな。
君だったらまず馬鹿にしてやろう。草壁だったら君の悪業をばらしてやろう。


どちらにしろ君に待っているのは嫌な道だけど、何でかな。
そうやって君のことを考えているのが楽しいよ。




――――――――――……



もう一仕事、頑張るか。




continue…

皆様奥様こんにちは。
世界に革命を起こす男、六道骸です。
いやぁ久しぶりに僕オンリーの後書きがきましたね。
まったく、沢田綱吉も山本武も、ちょっと目を離すとすぐあれですからね!よっぽど僕の出番を減らしたいらしい。
…あ、一応、念のため一応訊きますけど、この後書きはもちろん僕オンリーで充分ですよ、ね?
え、いやいやいや、別に、不安になったとかそういうんじゃありませんよ!ただ僕は皆さんに愛されている証拠が欲しかっただけで、別に答えなんて決まってますけどね!
…え?パイナップルなんかお呼びじゃない?私はミカン派だ?
…クフフ、クハハハハ!
さて、そう言っていられるのもいつまででしょうね。
きっとそのうち僕が本編に登場したときには……、
おっと、口が滑ってしまいました。クフフ。

ではまた海辺のレストランで会いましょう!

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