過去拍手や短編
ばぶぅちゃん
雲雀SS
"ばぶぅちゃん"
先日、幼児化してしまったのは僕だけど。
(不覚にも学校の保健医に薬を盛られたらしい。)
いや言ってしまえば彼女はちょっとぬけてる所があるし、さらに言ってしまえば元々、精神的に幼いところがある。
彼女の幼い手が、僕の指を掴んだ。
「ばぁぶーぅ」
まさかこれほど、逆成長してしまうだなんて。
…彼女と会う約束をして、なかなか来ない彼女の家に行った。
もう何といったらいいか。
面影こそかろうじて残っているものの。
耳に付いたピアスが無かったら、僕はこの赤ん坊が彼女と誰かの隠し子だと思ったかもしれない。
…推定年齢は5ヶ月〜1年半といった所だろうか。
首がようやく座ったかどうかというような、危うい状態である。
…とりあえずはその赤ん坊、彼女を、ベッドに移動させた。
彼女には大きすぎるくらいのシングルベッド。
普段はそうでもないんだろうけど。
…一緒に寝ると潰してしまいそうなので、そこは我慢。
とにかくベッドの横に座り込んで、彼女を眺めていた。
「あーぅう、だーぁ」
空中で水掻きするみたいに手足をばたつかせて、遊んでいる。
(…何が楽しいのか分からない……)
…ここは、
彼女の部屋、彼女のベッド、彼女の匂い。
無駄に胸は高鳴ってしまって、彼女自身もちゃんといるのに、どうもこれでは手が出せない。
何故って、彼女が今、
僕の手が出せるような年齢かい?
下手したらお縄頂戴されちゃうよ。
「だぁ、ばっ、やぁあ」
……もしかしたらヒーローごっこでもしているんだろうか。女の子なのに。
未だに水掻きを止めない彼女を見て、無性に悲しくなった。
…戻らなかったらどうするんだ。
まさか好きな女の子の世話なんて出来ないよ。
(いや待て、その前に保健医を咬み殺してやる。)
ふぅぅ、頭を突っ伏した。
彼女の匂いがこんなに近いところにあるのに、何も出来ないなんて、拷問じゃないか。
ぎぅぅっと掴まれた髪に、顔を上げざる負えなくなった。
いつの間にかヒーローごっこも止めて、僕の顔を覗き込む。
赤ん坊特有の甘い匂いと、ぽってりした赤い唇。
赤ん坊であっても、彼女だと思うとムラムラしてしまう僕は、相当アブナイ大人だろうか。
(彼女でなければ、髪を掴まれた時点で咬み殺してるんだから。)
「あーや、う、ばぁ」
「…僕も愛してるよ」
赤ん坊言葉を勝手に解釈して、それに答えた。
よく考えれば僕は、
僕の知らない頃の彼女に会ってるんだ。
……それって、かなり貴重じゃない?
まだ誰にも、汚されてない頃の君……。
そう考えるともう、居ても立ってもいられなくなって、まだ軽い君の身体を引き寄せた。
「ぁうー?」
疑問符を浮かべる君に堪らなくなって、その小さな唇に吸い付いた。
「ぅっ、むぅ、ぶ」
当然そんな事に慣れていない彼女は、ふっくらしたその手で僕の頬をペシペシと叩く。
唇を離して、
君でありさえすれば、
僕はどんな君でも構わないと思った。
――――――――……
これは、僕だけの秘密。
―――――――――……
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