過去拍手や短編 願い事G 雲雀SS "願い事G" 「学ラン着た人とハグするのが夢なの、私」 応接室で僕のいれた紅茶をすすりながら、彼女は唐突にそう言った。 「何…?」 わざと聞こえないフリをして、もう一度彼女に尋ねる。 人は信じられないことがあると、内容が理解できても聞き直す、という癖があるらしい。 かくゆう僕もその一人だ。 「…だからね、学ラン着た人とハグしたいのっ」 彼女はやはり同じ事を繰り返す。今度は紅茶を置いて、真剣な顔でこちらを見ながら。 ……………。 一体全体、どういうつもりだろうか。 学ラン着た人とハグ? 「じゃあ草壁を呼ぼうか」 僕はまたわざと、君をはぐらかす。 まさか本当に草壁なんかにハグしたら、はっきり言って僕、どんなことするか分からないけどね。 「じゃー、学ランで黒髪で、切れ長の目の人とハグしたい!」 「…そういえば草壁って、意外と切れ長の目じゃなかったかな……?」 「えぇぇ……、じゃあッ!学ランで黒髪で、切れ長の目でトンファー使う人!」 「…………。とりあえず、ネットで検索してみようか。」 「なんでぇーッ!!?」 彼女の奇声に、びりびりと鼓膜を震わせられながら、それでも僕は嫌な顔ひとつせずに奇音の根源へと足を向けた。 「誰にハグしたいって?」 またまたわざと。 知ってて尋ねる僕は悪い子だろうか。 君の口から直接聞きたい。 ただそれだけなんだけど。 「学ランで黒髪で、切れ長の目でトンファー使って、それで…………、」 「それで?」 「ひ、…雲雀恭弥って名前の人……。」 素直に答えた君にご褒美。 ぎゅうっと後ろから抱き締めてやる。(彼女はこれが一番大好きなんだ。) 「僕も…、 君を抱き締めるのが夢だったんだ。」 ――――――――…… ご褒美はうそ。 僕が我慢できなかっただけ ―――――――――…… [*前へ][次へ#] [戻る] |