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過去拍手や短編
が・ま・んー



雲雀SS




恭弥は、私のこと、どう思ってんのかなぁ。


付き合い始めて、結構長くなるのに。
彼は一向に、手すら繋いでくれない。


私は恭弥のこと、はっきり言って、誰より大好きなのになぁ。


――――――――……



それは、やっぱり今日みたいな日、だった。



「君、風紀委員だよね。」

「は、はい…、」

「じゃあ何なの、これは」

「それは…、ぷ、プレゼント、でして…。」


「プレゼント?誰に?」
(ちょっと待ってよ、君、好きな人なんていたの?)

「え、えーと…、」
(はい、雲雀さんです!なんて言えるわけないじゃんかぁっ)

「何、言えないような奴に渡すわけ?」
(ああもう、鈍いなぁ。僕がここまで深く検索してるんだから、気付いてよ!)

「い、いや…。あ、まぁ、言えないといえば言えないような…、」
(だって目の前にいるじゃん!告白になっちゃう!)

「なにそれ、もういいよ。とりあえずこれは僕が没収するから。」
(あぁイライラする。全部僕が食べてやるから!)

「ホントですか!やった!…あ、いや、ありがとうございます!」
(わぉ、何だかんだで雲雀さんに受け取ってもらえた!)

「……?何、なんで喜んでんの。」
(いや、別に、君に悲しい顔をさせたいわけじゃ、ないんだけど…、)

「…へ?だ、だって、雲雀さんがプレゼント受け取ってくれて…、?」
(あれれ、待って、雲雀さん…、気付いてないの?)

「え、プレゼントって、僕に…?」
(あれれ、どうなってんの?彼女は、僕にプレゼントを?)

「えっ、気付いていなかったんですか!?」
(なっ、何それ!これじゃまさかの告白!?)

「………いや、」
(君からプレゼントなんて照れる……、じゃなくてまぁ、うん。嬉しくないわけじゃないけど、さ。)

「うそっ!あれだけ毎日、応接室にも通ったのに!」(えっ、雲雀さんって、私が雲雀さんが好きってことも知らないの!)


「……、」
(わ、ワオ。どうなってんの?)

「……、」
(え、えぇ?どうなってんの?)


「……。」


「……。」


「と、とりあえず、ありがとう…」

「え、う、うん…」


「まぁ…、
君からの気持ちに応えてあげなくもない、よ」

「…!ひ、雲雀さん!」



――――――――……

って感じの。
ラブラブな甘甘な。

そんな感じの結ばれ方をしたんだっけ、僕ら。

馬鹿なのに一生懸命な君が可愛くて可愛くて。
出来る限り抑えてたんだけどね。
まさか君も同じ気持ちだったなんて。

素直に運命だと思った。
……なんて言ったら僕が、馬鹿みたいだけど。


これはやっぱり、
あの日みたいに、清々しい春のぽかぽか陽気の日。


――――――――……


「恭弥ー?」

「…なに」

「なんか機嫌悪い?」

「………別に。」


僕らは薄桃色の風の中、葉桜並木の公園に来ていた。
…景色は夏なのに、肌に感じる空気は春。
なんだか不思議。


「ねー恭弥ー…」

「なに、」

「…手、繋いでいい?」

「……………だめ。」

「なんでー!?」


って。
だって君の手が小さくて、僕が繋いだら壊れてしまいそう。

(それじゃなくても君ってふんわりしてて女の子らしいんだから…。
それ以上、女の子らしさを感じてたら身が保たない)


「じ、じゃあ、ぎゅうしてよ!」

「…馬鹿じゃないの。」


そんなんしたら止まらなくなるでしょ。
もうちょっと考えて発言してよ。
君に意思はなくても僕にはそう取れるんだよ。


「じゃあ何でいつも手も繋いでくれないのよー!」

「(それは)…、」

だってそうしたくなくても、身体が勝手に動いちゃうんだから。
(それは狩る本能と同じ。
繁殖の本能とか何とか。)

いや、実際のところはそんなの言い訳に過ぎなくて。

ただ僕が今まで、「我慢」を知らなかったというだけのこと。


だから最近は、隣に座るのすら危なくなってきて。
つい、横に付いた手をそのまま君に向けてしまいそうになる。
(つまり今、僕らは背中合わせで座ってるわけで。)


「うー…、恭弥のばかっ」


「…ぅっ!?」

あまりに長い間、考え事をしていたせいか。
背中に突如、やわらかくて暖かい感覚が。


「なっ、何してんの…っ」

「だって恭弥が、ぎゅうもしてくれないって言った!だったら私からするしかないでしょ…!」

なんだかちょっと泣き声っぽいのは気のせいか。
…問題はそこではない。
それこそ僕は今、硬直状態で。無闇やたらと動きまわれない。
何故って下手に動くと、
その…、僕自身が精神的にダメになりそう。


「ぅ、ひっく…、」

「…!」

や、やっぱり泣いてる。
どうしよう、泣かしたのって僕!?

「付き合ってるのに、手すら繋いでくれないし…っ、ホントに私のこと、好きなのかって不安なのに…っ」

悲痛そうに、訴えかける君。まさか、そんな風に思ってたなんて。


「わ、私は…、恭弥のこと、大好きなのにぃ…っ」

最後の方は学ランの下にも伝わるほど涙を流していて、ぐりぐりと押し付けてくる額がどうしようもなく胸にきた。


僕は身体を捻って、後ろを向く。

頬の涙を消すように口付けて、驚きで半開きの唇にもひとつ。


君の髪が風で、僕の頬に触れる。

素直に、そんな君が好きだと思った。



――――――――……

君に我慢なんて。

―――――――――……

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あきゅろす。
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