献上品とかお宝とか
◆千鶴さまへ!
「幼なじみ夢」
"トンファーの貴公子"
「ちとせ、好き」
「はいはい。」
「…ちゃんと聞いてよ」
「きーてるきーてる。」
「聞いてないじゃん…」
――――――――……
朝。おはよう。新学期。
私は今年で中学2年生!
彼は今年で小学6年生。
「…どう言ったら君は信じてくれるのさ」
「どーにもむり。」
「…もう…、」
彼はめげじと告白し続けるも、どうにも効果がないのは目に見えてる。
日常茶飯事だ。
告白だって、そう毎日毎日、来る日も来る日もされてたらさすがに飽きる。
「ねぇちとせ。」
毎朝となりの家の雲雀くんと、おててつないで学校へ登校。
そうなったのは他でもない、彼のご指定だけど。
「はいはい、むりだよ」
私はまた、彼がつまらない事を言いだしたのかと、空いてる左手を振った。
「ちがう、」
彼は右手をクイクイッと二回引いた。
私はその合図に、ハッとする。
「……つけられてる。」
雲雀くんは小さな声で、要件を言った。
……付けられてる。
尾行。…ストーキング。
私は誰にも見えないように溜息をついて、つないだ雲雀くんの手に力を入れた。
最悪もう、学校チコクしないといいけど。
(あと、けがしたくない。)
「そう、じゃあこっちの道から行ってみようか雲雀くん!」
私は少し大きな声を出しつつ、路地裏に入る道を指差す。
大袈裟だったろうか。
雲雀くんがもう一度、右手を引っ張った。
…路地裏、に入る。
私と雲雀くんは、付いてくるであろうストーカーに備えて、武器を用意する。
息が詰まったような、お腹が重くなるような緊張感。
あんまり好きな感覚ではないのだけど。
壁に背をぴったりと付け、雲雀くん越しに向こうをチョロッと覗く。
いつもは見晴らしのいいその景色が、今日は雲雀くんの背中でほとんど見えない。
……それを考えると、やっぱり雲雀くんって、大きくなったなぁ。
妙に広くなった背中に、まてまて相手は小学生だぞ、と言い聞かせる。
(いやそれよりストーカーだ。)
…犯人の姿、を捉える。
わお、見事に高校生だ。
(まさか雲雀くん、こいつら相手にケンカ売ったんじゃ……?)
…不安は大抵が当たる。
「オィこらテメェ、この前はよくもやりやがったな」
バカみたいに腰パンをした、眉なしの高校生。
うわわ、めっちゃ怒ってるよ!
雲雀くん、お願いだからあんまり怒らせるようなことはしないでね!
「……………。」
うわ!こっちはこっちでTHE・シカト!
いや、雲雀くん返事!
「聞いてんのかコラ!」
ほら、怒ってる!
「…きーてるきーてる。」
……。
え、何、これは、私への仕返し?
私が雲雀くんの話聞いてなかったから!?
(…人の話を聞くことが、こんなに大切なんだと知った瞬間でした。)
「馬鹿にしやがって!クソガキ!」
高校生のひとり(たぶん主犯格かと思われる)が、額の横に青筋をたてて怒鳴る。
(きゃぁぁ、私カンケイありません!)
「死ねぇぇ!!」
きったない罵声を飛ばしながら、金属バットを振り上げる高校生。
(わ、私の平和主義が…)
二人は戦闘態勢に入る。
…おそろいの、白と黒のトンファー。
それぞれが、宙に孤を描いた。
……………
「てめぇ、コイツ(雲雀くん)の女か!?」
「いや、ちがいます」
「ウギャアァッ」
「お、オイ!オマエ(雲雀くん)の女メチャクチャ強えぇじゃねぇか!…はぁっはぁ、」
「残念ながら、彼女はまだ僕の女じゃないんだ。…て、無駄口たたく暇あるの?」
「うぅっ、ギャッ!うわぁぁああぁあっ!」
私たちはそれこそ、無我夢中で敵を倒していく。
(だってでないと、私がやられる!)
…無我夢中で、無我夢中すぎて、
気づいたとき、足元に転がったソレらの数に驚いた。
(うわぁ、これ、正当防衛でいける?)
「ちとせ、」
少々息の切れた雲雀くんが、立っていた。
トンファーについた血をビュルンと振り払って、小さく収納する彼。
(派手にやったねぇ…)
とか、思いつつ、自分のトンファーについた血液の量にも少し驚く。
ポタポタ、の範囲じゃない。ドロリドロリって感じ。
「雲雀くん、大丈夫?」
「…ん、大丈夫。ちとせは?」
「私は平気だよ。…それより、どうしよ、血だらけになっちゃった…」
私はブラウスの襟にできた血痕に触れて、とれないなぁと眉を寄せた。
「…そんなの、いいよ」
雲雀くんは不機嫌そうに口をへの字に曲げる。
「だって…、」
私が一旦家に戻るかと言ったら、さらに機嫌は悪くなる。
(一体全体、まったく小学生の考える事なんて…)
雲雀くんは、うんうんと考えている私の前にくると、
「……ん」
ちょっとだけ背伸びして、ふにっ、と彼の唇が私の唇に当たった。
…、
「…………!!!」
私は驚いて後ろに飛び退きながら、口を押さえた。
雲雀くんは尚つづける。
「なんで、僕のこと見てくれないの…。」
唇を噛み締めながら、何かに耐えるように短パンの裾を握る彼。
…まるで訳がわからない。
「ひば、りくん…」
俯いた彼の前髪の間から、かすかに光る何かが落ちた気がした。
「ちとせ…っ、」
雲雀くんはまだ整理のつかない私の首に手を回して、抱きついてくる。
まてまて、なんだなんだ。
「僕が小学生だから?」
「………、」
「僕がまだ、弱いからなの?」
彼はぐりぐりと肩に顔を押し付けて、なおさら腕に力を入れた。
……そうじゃない、
そうじゃないよ。
だって雲雀くん、
急激に大人っぽくなっちゃって、背も伸びて、背中も広くなって…、
まだ声変わりはしてないものの、きっとすぐ大人になっちゃう。
雲雀くんの方がまだちっちゃいし、小学生だけど。
だってこんなにドキドキしちゃうなんて、
悔しい。
「雲雀くん…、」
「やだ、やだよちとせ。僕ちとせが好きだもん…!」
彼は苦しいくらいに力を込めてきて、おかげで彼の足は地面スレスレ。
ずっと背伸び状態。
今日は、彼の意外な一面。
意外に甘えたさん。
意外に強い。
私のためにこんなに、たくさんの思いをくれる雲雀くん。
「雲雀くん、」
「……、」
「ちゅーしよっか」
「………!」
意外な一言に、彼はバッと顔をあげる。
あらら、おめめが涙でいっぱい……。
しかもほっぺたまっかっか!
「僕で、いいの?」
「…雲雀くんも私でいいの?」
「……ん、ちとせじゃないとダメ。」
「…私も一緒だよ。」
私たちは学校へ行くのも忘れて、
無数の高校生の残骸の上、
やっと、雲雀くんの願いが叶いました。
路地を出れば、
満開の桜並木です。
――――――――………
僕以外のこと考えたら
咬みころ……、
…ちゅーしていい?
continue…
はい、キリ番5555千鶴さまリクエストの「雲雀幼なじみ夢」でした!
…強引な雲雀、とのことだったのですが、
なんだかワガママへたれっぽい感じに…(T_T)
こんな駄文でよろしければどうぞ、お納めくださいませ!
ではまた次回!
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!