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献上品とかお宝とか
◆柚蒔さまへ!




"I want you..."






「…あ」


「あれ、ちとせ?」


……早朝。
春は曙。

…鳥がまだ欠伸をしている時間だった。

つい先日に立春を迎え、寒い日もまばらになり、街の人たちは薄着になった。


……世間は春休み。

もちろん私もそうなのだけど、部活という名の青春に休みは無い。

故に本日も、私は通学路に立っているのである。

だから、
…途中で雲雀恭弥に会ってしまったのだ。

…雲雀恭弥という名の、
片想いの相手に。


「ちとせも今から学校行くの?」

「え、うん、まぁ」


私を見つけて近づいてくる彼に、「うあぁぁあ!来るなぁあっ!」と気が気ではなかった。
(ハンドパワーが使えるなら私は、すぐさま両手で雲雀の進行を拒んだだろう)


「へぇ、こんな早い時間に登校するんだね」

「あぁ、まぁ、違う道で行ってみようかなと…」
(時間ずれたらアンタと会うからだよ!)

…っていや、早く出たのに彼に会っちゃったし。

…矛盾してるんだけどね。

好きなのに、会いたくないってのは。


「そう、面白そうだね。
僕も一緒にいいかい?」


「あぁ、まぁ、……って、ええっ!いや、ちょっと、それは……」

彼の言葉に驚いた。
僕も一緒にいいかい?
だって!

勿論いいわけないでしょ!
彼といたら心臓が保たない……というより心配停止するから!

それこそ全力に近しい勢いで断った。


「…ふぅん、君、部活サボる気でしょ」

「ま、まさか!そんなことしないよ!」

彼の思いがけないセリフにまた驚いた。
部活サボる気だったら、もっとうまくサボるわよ!
…言い掛けたけど、言わなかった。


「…じゃあ、僕が一緒でも構わないよね」

…否、言えなかった。

「え、…いや、そうだけどさ……」

丸め込まれるとはこういう事だろうか。
彼の口車にうまく乗せられてしまった。
(いや、ここで「それは関係ない!」と言わなかったのは、やっぱり彼が好きだから……)


「さ、行こうか」

…という訳で始まった。
実に奇妙な登校劇。

並盛町最強風紀委員長と、その最高風紀委員長を好きな凡人女の子A。
(実を言うと、その最強風紀委員長を好きな時点で、凡人ではないのだけど。)


――――――――……


何気ない話をして、というか緊張してあまり話せなかったけど、
着いたのは赤い橋。

家と学校の中間地点に位置する橋だ。

まあ橋というほど大きな橋でもなくて、全長はおよそ3mほどしかない。
…下には、これまた川というほど川らしいものは無く、小川、というに相応しい小さな川が流れていた。

春には桜、夏には清水、
秋には紅葉、冬には氷といった季節折々のものが流れていて、隠れた名所でもあった。


…ふと、この橋について思い出した事がある。


「…この赤い橋って、恋人同士が手を繋いで渡ると、ずっと一緒にいれるんだっけ……。」

思い出した事が、そのまま口をついて出てしまった。

はっとして、パシンと音が出そうなほど口を勢いよく塞ぐ。
これじゃあまるで、催促してるみたいじゃないか。


私はそこで後悔し、慌てて前言撤回した。

「な、なんてね!ハハハ、ごめん、行こうかっ」

出来る限り自然に撤回しようとしたけど、それがかえって不自然だった。

急いで渡り切ろうとした私の腕を、彼が掴む。

今まで無いくらい、動悸は激しくなった。


「……やろうよ」


言われた瞬間に、死ぬかと思った。

あ、ありえない。
彼は、何を言っているのか自覚しているんだろうか。

恥ずかしいとも切ないとも違う感覚が、胸の中で踊ってる。
……これは、期待、なんだろうか。


でも………、

「これは、だって、
恋人同士じゃないと意味ないから……」


そうなのだ。
恋人同士が手を繋いで渡るから効果があるわけであって、私と雲雀のような、友達(もしくはそれ以下)の関係で効果はない。


彼が…、いつもの気まぐれでそんな事をいうならば…


「じゃあ、恋人同士になればいいの?」

「……ふぇ?」


自分の考えに涙が出そうになって、でも彼に話しかけられたから、彼に掴まれた腕もそのままに、振り返った。


「…だったら、恋人同士になったらいいじゃないか」

「………は?」


いよいよ訳が分からなくなってきた。

突然、彼に掴まれた腕を引かれて、胸に抱き締められる。

……それだけで、私の緊張のバロメーターはとうに振り切っていた。

彼の暖かさだとか、
心音だとか、
抱き締められる力だとか、

頭は彼でいっぱいだった。


「ひ、ひひひば…っ」

言い掛けたときに顎が持ち上げられて、いままで恥ずかしくて見れなかった顔が目の前にあった。

彼意外に何かを考える余裕がなくて、
世界が二人だけのような気がした。


「ちとせと、
ずっと一緒にいたいんだ」

先に言われてしまった愛の告白に、私も、と続いて、恥ずかしくてまた胸に顔をうずめた。


…繋ぐ手は、もちろん恋人繋ぎ。

彼と繋いだ手が熱かった。



――――――――……



これからデートにしましょうか。




continue…+おまけ

キリ番3333柚蒔さまリクエストの、「雲雀激甘夢」でした!

ヒィィ全然激甘じゃないぃぃッ!!
ごめんなさいませぇぇっ!orzorzorz。

こ、こんな駄文でよろしければどうぞ!

ではおまけ。

――――――――……





「ねぇちとせ、」


「なに、雲雀?」


「雲雀って言うの、変えない?」


「……えぇっ」

まさかまさか、それって!

「うん、名前で呼んでよ」


「む、無理!」

そんな恥ずかしいこと!


「じゃあ僕も田中にするよ?」


「えぇっ」


「ほら、はやく」


「……き、」


「………。」


「きょう、や…」


「…ちとせ、可愛い」

襲ってもいい?


「なんで襲うのっ」


「……あ、」


「…え?」


「そういえば君、部活サボったね?」


「…えっ!そ、それは雲雀が……」


「また雲雀って言った」


「あわゎ…っ、き、恭弥がデートしようって…」


「…彼女と言えど、風紀の乱れは良くないな。
………生徒指導だ。」


「なっ、なんでぇっ!」


………、
その後、僕はみっちり、
ちとせと生徒指導をした。




continue…

ここまで読んでくださいましたちとせ様、ありがとうございました!

ではまた次回!

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あきゅろす。
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