献上品とかお宝とか
◆椿ナナさまへ!
「雲雀甘夢+10設定」
"私は予約制!"
「噂はかねがね聞いていますよ」
あなた、随分とお強いんですってね?
なんて気取りながら社長椅子に腰掛けて、組んだ足を右から上へ。
重厚感溢れる、イタリア風情のマフィアの屋敷。
確かに此処はイタリアだけども、どいつもこいつも相手にならない。
本当に君らはマフィアなのか、と問いたくなる。
「そう、僕は強い。…
でも君には関係ない事だよ」
彼はそう言って、私に歩みよる。
…おっと、危ないですよ。私がボタンを押したら、そこは落とし穴になりますからね、なんて、言ってやらないけど。
「どうして関係ないの?」
「君と戦うつもりなんて、これっぽっち無いからさ」
「…あら、やだ。だったら恭弥さん、どうして此処に来たの?」
「君は質問しかしないね」
彼はちゃんと質問に答えず、軽く受け流してしまった。
いやだなぁ、戦わないなら、とっとと出ていってほしい。私は少公女とやらを早く読みたいのに。
「君の為にね、特別なチョコレートを作らせたんだ」
日本では、バレンタインデーに対するホワイトデーというのがあるんだよ。
彼はクスッと優しく微笑んで、懐に手を入れた。
私はすかさず、銃口を相手に向ける。
懐に手を突っ込んだということは、銃を取り出すと思っていい。
彼は私を殺す気なのだ。
「ワオ、物騒なものを持っているんだね」
僕は接近戦派だから、銃なんて持ってないけど。
さも可笑しそうに、懐から取り出したのは、思いもよらずに硝子細工のされた小さな箱だった。
「…………。」
「これだよ、君にあげたかったもの。」
コツンと音が出ないように、小指をワンクッションおいて机に置く。
中にはひとつ、茶色くて丸い、チョコレート。
「毒が入ってるの?」
敵から貰った食べ物なんて、人間の心くらい信用ないんだけど。
「入ってないよ。
そんなもの、入れるわけないじゃないか」
僕は食べ物を粗末にするのが嫌いだから。
クスッ。
ほら、また。
そうやって馬鹿にしたみたいに笑うんだから。
私が年下だからって、あんまり子供扱いしないでほしい。
「口では何とでも言えるからねっ!」
憤慨したように声を荒げれば、ちょっと驚いたような彼の顔。
「ああ、そうだね」
納得してくれた様子で何よりです。
さあ分かったらとっとと出て行きたまえ。
ほら早く。遠慮はいらん。屋敷を出たと同時に闇討ちしてやるから。
私は声にこそ出さなかったものの、脳内では彼を追い出すセリフをまくし立てていた。
「大丈夫。こうすれば、」
いつの間にここに移動したのか…………、彼はもう私のすぐ隣にいて。
机の上の硝子箱から、その丸いチョコレートを取り出していた。
「な、なに、」
あわてて銃を手に取ろうとするが、焦りすぎのためにうまくいかない。
さっと恭弥さんが手で銃を払ってしまった為に、ガコンとそれは机の向こうへ。
「毒なんて入ってないよ」
クスクス、愉しそうに、品のある笑い方をする彼に腹が立つ。
と、次の瞬間に、
何を思ったか彼はチョコレートを口に含み、そして、
…私に口付けた。
「…!?…ん、く…、」
途端に広がる甘い味。
驚きに目を閉じる事すら忘れていれば、彼の大きな手が、私の目を覆う。
どろり、と溶けたチョコレートと彼の舌の感覚に、
背筋が泡たつのが分かる。
いやでもチョコレートを飲み込まざる負えない。
しかしチョコレートの味がしたのもつかの間。
奥歯に固い何かが当たったのだ。
がりっ、
何やら嫌な音がして、固い何かを噛んでしまったような(しいていうなら砂とか小石が口に入ったような)感覚。
「ん…、」
彼の唇が名残惜しそうに離れる。
つつ、と親指で私の唇をなぞられたあと、目隠しも外された。
「つ、…な、なにこれ」
固い何かの正体を暴くべく、私はソレを舌先に乗せて出した。
目を出来る限り下に向けてみる。
光った、…銀色の…、
「ダイヤモンドの、指輪」
恭弥さんが代わりに説明してくれた。
なに、ダイヤモンドの指輪だって?
手に出して見れば、私と恭弥さんの唾液に濡れてしまった指輪が光っている。
あわててそばのティッシュで唾液を拭き取り、彼に詳細を問うた。
「君は年齢的に、まだ無理でしょ。だから予約。」
何のことだかはハッキリと言わず、ただそれだけを彼は言った。
頬を染めつつ横を向いて。
嗚呼こんなの、
「ずるいじゃないですか」
こんな事されて、オチない女の方がおかしい。
「よかった。君、随分と僕の事嫌ってたみたいだったけど」
まさか愛情の裏返しだったなんてね、クスクス。
その腹立たしい笑い方も、見透かしたような言い草も、こんな、こんな、……
甘い時間を私の為に作ってくれる、優しさも……、
「やっぱり大好きです」
敵だとか味方だとか、そんなのはもう関係なくないか。
だって私は、泣く子も黙るマフィアのボスだもの。
彼の味方になるか敵になるかだなんて、些細なこと。
「じゃあ僕は、愛してる」
――――――――……
このプランを考えるのに、丸一ヶ月かかった事、
君は知ってるだろうか。
continue…
椿ナナさま2000キリ番リクエスト、「雲雀甘夢」でした!
え、甘夢?という疑問は置いといて、はい!(マテ)
すいません、リクエストに沿えているかどうか―…
椿ナナさまは「ストロベリィキャラメル」という夢サイトを運営なさっています!
みなさま一度行ってみてください!
めちゃめちゃ素晴らしい夢がたくさん……っっ!!
今後ともよろしくお願いします!
こんな駄文でよろしければもらってください!
ではまた次回!
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