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献上品とかお宝とか
◆心希さまへ!
雲雀甘夢
55555キリ番夢









これは、
雲雀恭弥の無愛想さとポーカーフェイスの理由を立証すべく捏造された、

崩壊の崩壊による崩壊の為の、物語である。


そこんとこヨロピク。
(いっぺん死んでくるといいよ。)





♂♀♂♂♀♂♀♂♀♂♂♀




「でね、その店のケーキが……、」


ああ、どうしよう。


「中にクリームの…、」


究極の選択を迫られた。


「……って、聞いてる?」

「聞いてる。」


怒ったように唇を尖らせる隣のキミ。

彼女の話も上の空。
話題は耳の、右から左へ。

だって僕は今、世界の誰より究極な状態にあるから。


「そこのチェリーパイが…」


ああ、お願いだ。

もし叶うなら今、時間が止まればいい。

そうすれば僕はずっと幸せだし、キミも幸せだ。
知らぬが仏っていうでしょ?

キミは尚、拗ねてぎゅっと僕の腕を握る。
そうする度に僕がどんな葛藤をしているか、知らないんだ。


「もう。少しは真面目に聞いてよ。」

「…真面目にきいてる」


僕は進む道の先を睨むように見据えて、出来るだけ意識を分散させようと努めた。


真面目になんて、聞けるはずないだろ。


腕を組むたびにキミの…、ゴホゴホッ。

…色々当たるでしょ。



考えてもみてよ。


例えば仮に僕に好きな子がいたとして、
(例え話だよ、別にキミが好きとかそういう話じゃないからね。)

その好きな子と何処かで待ち合わせして遊びに行く…つまりデートみたいなことをしたとして、
(…いや、だから今のコレがデートだとは思ってないよ?本当に。)

彼女が自分の腕に抱きついてきて、ゴホゴホッ、
色々、男の理性が切れそうな状況になったとして。
(だって、や…、柔らかいんだよ…。)


一体僕にどうしろっていうのさ。


キミにそれを注意してしまえばきっと、キミは僕から離れてしまう。
でもだからっていつまでもこのままだと僕自体が危険だ。

言うべきか言うまいか。

僕は今、究極の二者択一を迫られている。


「…ねぇ、なにか怒ってる?」

「怒ってない。」

「うそ。だってさっきから全然こっち見てくれない」

「……、」


答えに詰まった。


怒ってると言えば分かってないキミに怒ってる。

でも怒ってないと言えば、…うん、ごめんだけど役得だと思ってる。


「じゃあ、怒ってない?」

「…うん。」

「……、」


僕が素っ気なく返せば、すがるようにまた腕に力が込められる。(う…、)


…あのさ、あのね?
キミはそこまで自覚してないだろうけど、僕はガンガンに意識しまくっちゃってるの。

ねぇ、気付いてよ。

キミは……、
僕の、あの鳥みたいな感じなんだ。
(って言ったら「鳥頭って言いたいの?」って睨まれたけど。)


そうじゃなくて、あの鳥を見たときの感情と同じ気持ちになるって言いたかったわけ。

だからつまりね、


か、か…、




かわ、か、わ……、







川………。川?







川って、いいよね。

あれ、何言ってんの僕。



「ちょっと……、」

どこ、見てるのっ?


ギロリ、と激昂の滲んだ瞳で彼女は僕を睨む。



「…?」


考え事(僕の理性の崩壊スピードとその被害について)をしていて気付かなかった。

いつの間にか、喫茶店に入ったようだ。


「ああいう人が好きなんだ?」

冷めたような口調。

僕の視線の先には、(見てたつもりはなかったけど)大人っぽい、いわゆる熟女だとかいった類の人間。



………あ、れ。



「ふぅん、私みたいなのより、ああいうのがいいんだね、恭弥は。」


鼻をツンと上に向ける。

どうやら真剣に怒らせてしまったみたいだ。
(けど怒った顔もまた…。)


嫉妬してくれてるのかな、と思うとにやけてくる。

それは一層気を引き締めていないと、今にも緩んでしまいそうだった。



「…あんなの好きじゃないよ。」


不潔そうじゃないか。


そう付け加えると、怒りの色は少しだけ薄くなった。


ほんと?と確認するように上目遣いで……。

(ああ、それで睨んでるつもりなんだろうか。)



当たり前じゃないか、どうして僕がいかにも誰かのお古ですーみたいな女を好きになるんだ。




僕は清楚で無垢で何も知らない君が……




す、す………





……す、すき、



っぷ。






なに?
いきなりスキップしたくなっただけだけど、何か文句ある?


僕はもう一度、「じゃあ、許すっ」と唇を尖らせて笑う君に視線を向けた。


…どうにも重症らしい。


僕は飲みかけのぬるくなった紅茶に口を付ける。


さっきまであんなにちとせに切迫詰まっていたのに、今ではもうキミを甘やかしたい気分になってる。


本当に不思議な子だと、頭の片隅で思った。


「あれっ、恭弥が笑ってる!」


僕の笑顔ひとつに喜んでくれるキミが、…好きだ。


「えへへ!」


そう言ってキミはまた無造作に僕の腕にしがみつく。


「………、」



嗚呼、
やっぱり我慢デキナイ。




「へっ、え?恭…ッ!?」


ここ、街中ーっ!
という君の悲鳴は、僕が飲み込んだ。







──────────……


(好き過ぎて困るくらい)

──────────……

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あきゅろす。
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