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献上品とかお宝とか
●悠兎さまへ!
スパナ甘夢
相互リンク記念!








身体がちぢこまるくらい、気温が低い。

手に持ったほうじ茶がせめてもの救い。
ちょっと息をためて吐けば、たぶん白い息だって出るんじゃないだろうか。


「………寒い、」


そう、指先や足先が冷たくなって身体の筋肉が働きにくくなることを、世間一般ではそう言うのだ。
寒い。


…私はもう一度うらめしげに後ろを振り向いて、呑気に機械弄りなんぞしているつなぎ服の男を睨んだ。


「………」


しかし私の念力…、もとい殺意も虚しく、彼はひたすらにネジやらラジオペンチやらを巧みに使い、棒飴をお供に恋人のナントカモスカの内臓をいじくりまわすのにご執心らしい。


愛と勇気だけが友達さ…、なんて昔のアンパン野郎もうまく言ったものだと思う。
人間じゃないモノだって、友達となりうるのだ。

この男の友達は機械で、恋人も機械で、挙げ句ライバルも機械ときた。


このクソ寒い機械室、横で彼の食事やら洗濯やらを健気にも毎日やっている幼なじみの私なんか、
ポジション的には吉野家の紅ショウガなんかと変わらないんだろう。
(あれば美味しい、けど無くても困らないみたいな)


「……はぁ、」


ため息をつくと、熱い焙じ茶の所為か、やはり白い息がぽぅと出た。
カチャカチャ、と耳障りなはずの機械を弄る音が、何故か心地いい。


私もスパナみたいにブーツか何か買おうかな、と彼の後ろ姿を眺めながら考えていると、
キィンという軽い金属音。


「……あ、」

足元に転がってきた、タッピングねじ。
これがないとどうとかって、前に散々聞かされたような気がする。


「……」

確認するように彼を見ると、いつもの眠そうな顔つきで振り返って、私を見つめ返してきた。
…自分で動く気はさらさらないようで。

これでは、暗に、「取れ」って言われてるようなもんじゃないか。
そんな「動くのめんどくさいし今大事な部品押さえてるの」みたいな目で見られたら。

(スパナの微妙な表情の違いまで分かるのは、幼なじみの功ってヤツなのか…)


「はい、」

「ん…、ありがと」


芸術的な渦巻きをピョコピョコさせながら手を差し出す。

ご機嫌で上下に揺れる棒飴の棒に微かな嫉妬を抱きながら、
差し出された手のひらにタッピングねじをコロンと乗せた。

これごとき投げつけてやればよかったと悪態をついて、引き返そうとしたのだが。
自分の手を引っ込める前に、手が動かなくなった。


「ん?」


確認するまでもなく私の視界はぐんっと前のめりになり、つられて必然的と身体もつんのめる。
…結果、バランスを崩した私の身体はきれいな放物線を描きながら豪快なジャンピングをかまし、地面に…


…落ち、なかった。


落ちなかったということはどういうことかというと、つまりそれは、地面ではない何かに着地したということで。

私の場合…それがスパナの膝、だったわけで。



「…あ…、は?」

「ん?」

「ん?じゃないよ」

「え?」

「え?じゃなくてさ」

「んぇ?」

「何がしたいわけ」


手っ取り早く説明するとそういうことで、
私はあぐらをかく彼の足の上に見事なダイブをかましたということだった。

彼の手によって。


「引っ張ったら倒れるじゃん」

「うん」

「危ないよね」

「うん、……うん?」

「危ないよね?」

「でもちとせは痛くなかっただろ?」

「そ、れは、スパナが…」

下で私を受け止め………、ゴニョゴニョ。

なんだか知らないけど、いきなりされた彼からの行動があまりに恥ずかしい気がして、私は言葉を濁す。


濁している間に、スパナは次なる行動に移っていた。

私の、無防備に曝された背中の衣服を、あろうことか捲り上げたのだ。


「寒、ってええああ!?」

「色白い」

「なにを呑気な!」


色が白いのは当たり前。
だれが極寒の冬に背中を露出しながら太陽で焦がすか。
寒がりの私には死活問題!


「はっ、早く戻して!」

「え?ああ、」


彼はそう合致すると、背中になにやら異物を滑り込ませて服を戻した。

その異物は、温かい。


「…あ、」

「ん?」

「カイロ…」

「うん、…温かい?」

「う、うん、まぁ…」


まぁ、大半がアナタの足の熱ですけど。
(なんて体温の高いやつ。つなぎ服ってそんなに温かいのか?)
でも流石、身体を温めるポイントを知っている。


彼はそのまま私の上で作業を始めてしまい、アレ?
動くに動けなくなってしまった。(もう、)
仕事の邪魔をするのも悪いし、何よりここから離れてまた寒地獄を味わうのはこりごり。


ほかほかと血の巡りだした指先を眺めながら、スパナを見上げる。
「え、なに?」みたいなキョトンとした瞳と目が合うと、棒飴の棒がピンと上にあがった。


「…飴、欲しいの?」

「いや別に…」

「どうした?」

「ん、なんか、スパナが珍しいこともするもんだなぁとね」

「あー、うん」


…うん、なんだ。
自分でも珍しいと思ってるんだね。

口の端で上機嫌に揺れる棒。機械を弄ったり、新しい機能を思いついたりしたときに見せる特有の動き。


何か嬉しいことでもあったのかな、と思いながら彼の言葉を待つ。


「ちとせが寒いって」

「え、やだ聞こえてたの?」

「いや、聞こえなかった」

「…はい?」


棒飴が無くなったのか新しいピンクの飴の包みを開きながら彼は渦巻き前髪をピョコピョコさせる。


確かに寒い、とは言ったが聞こえていないのにどうして分かったんだ。


「テレパシーとか」

「て、テレパシー?」

「うん。背中にものすごい殺気と一緒に、SOS信号が送られてきた」

「………」


それは、あの、アレか。

あのときの。

私の呟きにも気付かず呑気に機械弄りしていたときの。

(どうして彼はいつもいつも…、私の念力が伝わってしまうんだろう。)
彼の言葉に唖然としながら、ちょっと飴ほしいかも、だなんて思った。

(そういえば前に、電波はそれぞれのチューナーが合わないとどうっ、て聞いた記憶が。)

思わず口をついて出た言葉。


「……す、ごいね」

「なにが?」

「テレパシー」

「ん、ちとせの電波系には強いんだ」


スパナはもう一度、機嫌良さそうに前髪を揺らした。






──────────……




ウチの言いたいこと、分かるだろ?






END…








相互リンク記念夢!
⇔Dyouの悠兎さま、ありがとうございました!

スパナ甘夢……と、いうことで、申し訳ありません、私の文章力の最大出力でありました……。

いろいろと危ない話になってしまいましたが、こんなものでよければ貰ってやってください……、


ありがとうございました!

英国紳士につき腹黒



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