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献上品とかお宝とか
◆瑞穂さまへ!





「雲雀激甘夢」




"手は繋ぐため、唇は君のため"





ひとえにこの状況を説明し尽くそうというのは、余程無理なことでありました。

「ちとせ?」

姿こそ私の目には映りませんが、確かに私の後ろに彼がいるのだけは体感しております。

甘くて、コーラス部に入ればいいのにと思うほどよく通る低音。
鼓膜が痺れるような、頭が麻痺しそうな感覚が、それこそ末梢神経にまでビリビリと伝わっているのです。
彼の声はいつだって、そんな風に私の全てを可笑しくしてしまう。


今の状況に、どんなに男の子を避けてガードしてきた私でさえ、クラクラと彼に想いを傾けてしまいそうになるのです。
(だとすればそれは、一般的婦女子をオトすには十分すぎる魅力で。)


「ね、聞いてる?」

「…」

だからこそこの心臓の音が彼に聞こえてしまわないように、私は必死で狸寝入りを決め込んでいるのでありました。

…私たちは、そう、
ベッドの上に二人きり。

(違うんですそうじゃなくて、私がお昼寝をしていたらいつの間にか彼が後ろに寝転んでいて、私は寝たフリをしているのに彼が一方的に話し掛けてきているだけで!!)


私は彼に背を向けて狸寝入りをしているけれど、彼はそれに気付いているのか、私の腰に腕を回したまま、そっと、耳元に囁きかけてくるのです。
これには困るやら恥ずかしいやら何故彼がここにいるのやら。

…学校では、それこそ廊下ですれ違うのが精一杯だというのに。

「…寝てるの、ちとせ?」

また、また。
直接、廊下ですれ違うのとは比べ物にならないほど近くで、声がする。

はいはい、寝てるんですよ。寝てるんです。
あなたと会話なんて恥ずかしいから寝てるんですよ!

なんて、寝ている私が言えるはずもなく。


「…本当に君は、僕を魅了して止まないね」

「…」

だからこんなことを言われても、驚きを表すことすら許されず。
心臓がヤバイ。破裂寸前。

え?今なんつった?
魅了?なんすかそれ?
私には一生縁のない言葉だと思うのですが?

目を瞑ったまま、きっと彼から私の顔が見えたら一発で起きてるのがバレちゃうだろうなぁと思います。
だって私の頬はこんなに、見なくても分かる程の熱を発しているのですから。


「…」

「本当に起きてないの?」

彼がまた、私に話し掛けます。
起きてません起きてません。あなたがここに居る限り私は起きませんよ。
だって男の子が、しかもあの雲雀恭弥くんが!
こ、ここんな近くにいて、まともに話せる人のほうがおかしいでしょう!


私は、早く出てってくれないかなぁ、いっそ本当に寝てしまおうか、なんて一抹の願いを込めて、きゅっと唇を噛みました。

ふわっ、と首元に柔らかい何かが触れて、同時に熱いような吐息がかかります。

……吐息?

え?、と思い返そうとした瞬間に、べろり。
うなじを彼に舐められてしまいました。頭に血が上るのに、その唾液のせいで首筋がいやに涼しい…。

何をどう血迷ったのか彼が腰に回した腕にぎゅーっと力が入って、易々と軽くもないであろう私の身体が彼に引き寄せられてしまいます。

先ほどまではまだ余裕のあった二人の身体と身体の距離が、ほとんど0になってしまう。互いを別つものはもう、衣服二枚分だけ。


「……、…」

これにはたまったもんじゃない!私、だから男の子とろくすっぽ会話したこともないんだよ!

あまりの羞恥に、私は少しだけ身を縮めました。
大丈夫…大丈夫、これは寝てる人でもするって!
許容範囲だって!
そう自分に言い聞かせ、出来る限り動き回る心臓の鼓動を抑えようと、彼に気付かれぬように深呼吸。

早く出てけー出てけーっ!
平静で表情筋を動かさないように呪文を唱えます。
エロイムエッサイム!
(違った違った、悪魔呼んじゃだめだ。)


…と、やはりこの呪文がいけなかったのでしょうか。

途端に腕を掴まれて、ぐるっと身体を反転させられてしまいました。

………反転……。

あぁあーっ、ヤバイ、ヤバイですどうしましょう!
雲雀恭弥くんと向き合っちゃってる!
ひーっ、目を開けたら目の前には超容姿端麗な美少年が!?いやぁぁぁ!

「…」

「やっぱり寝てる?」

「…」

それでも狸寝入りは解除しません私。意地です。
ここまできたらもう意地ですから!(絶対に彼が帰るまで起きてやらない。)

負けず嫌いが故の、小さな見栄なのでありました。

そこで雲雀恭弥くんは当然のように、誰も聞いていないはずの言葉を紡ぐのです。

「目、開けないんだったら…キスしても、構わないかな。」

「…(!?)」

「だって学校じゃできないし…、チャンスだよね」

「…(ぇ、ぁああ゙!?)」


き、きききキ〇!?
(思わず伏せ字。)

な、何を!何をおっしゃるウサギさん!?
(いやこの場合は狼さん?)
(ってそんなことはどーでもよくって…!)


「しちゃおうかな…」

「……(!!!)」

彼が甘い声で囁きます。
…なんて官能的な声。
この人を前にして、理性を保ち続けられる人がいるんでしょうか?
(…います、私です。)

だって男の子なんて大嫌いだもの。三次元に興味なんて皆無。いや決して二次元しか受け付けないわけではないのですが。


…ていうか近くない?

雲雀恭弥くん、明らかに顔近付けてるよね。
だって照明の光が遮られてきてる。

彼の骨張ったような麗しく長い指が、私の頬を撫でます。くすぐったいような、安心してしまうような。
(これってファザコン症状なんでしょうか。)

私はそのまま寝たフリを続行しようと、ドキドキする心臓を気のせいにしようとするのですが…


「ん…ちとせ、」

ふぅ、と、まるでペパーミントみたいな爽やかな香りが鼻腔を掠めたときにはもう一溜まりもない。
口からハートが飛び出しそうです。彼の鼻先が、私の鼻先に触れて……


「…だっ、だめ!」

「……、」

とうとう我慢できなくなった私は、目を開けて顔面に迫る彼と私の間に手を入れます。
これでひとまずは、唇が触れることはなくなった。

…けれど、もっと厄介なことが私にはあります。


「…やっぱり起きてた。」

「…ぁ、」


にやりと彼の口が綺麗な弧を描いて、知っていました風な目が私を射抜きます。

あ、あの、私……
言い訳を考えている最中にも彼は、男の人に似つかわしくないほど美しく微笑みました。


「でも、止めてあげない」

「あ…、」

…心臓が一際大きく跳ねて、さっきまで考えていた男の人の苦手さなんて、どこかに吹き飛んでしまいました。


「もう一度、男の魅力ってものを教えてあげよう。」


ぼぅと惚ける頭で何が何か分からないまま、私はこくんと、頷いておりました。




continue…

20000キリ番、瑞穂さまリクエスト「雲雀激甘夢」でした!
甘く…なってましたでしょうか微妙にエロすぎた気がしてなりません申し訳ないです(´;ω;`)
ではではまた、よろしくお願いしますね!
ありがとうございました!

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