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献上品とかお宝とか
◆椿ナナさまへ!



「雲雀嫉妬夢」



"NeverEnvy"




「ちょっと、君。」

私の朝はつまりコイツの第一声から始まる訳で、コイツということはつまり嫌いで、彼は、雲雀恭弥という名前な訳で。


「…校則違反はしていないはずですが。」

私は校門で立ち止まる。
が、決して彼の方を振り返るわけではない。
立ち止まるだけ。


「校則違反だよ。」

彼はお決まりの台詞をまた毎朝のように今日も繰り返す。聞き飽きた。

スカートは膝下、くつしたは三つ折り、髪はお下げで黒色だし、ブラウスのボタンも開けてない。
ついでに不要物は持ってきてないしカバンにはストラップの一つもついてない。

何がご不満だ暴君暴力風紀委員長様は。


「電卓がカバンに入ってるよね。」

だって。

数学の授業で使うんですよ平方根を求める筆算を計算するためにね!(と、いうか何故貴様は私のカバンの中身を知っている?)


「だから不要物ではありません。」

私は主張する。
知ってるんだ、校則に「授業でつかうものは不要物としない」ってあるのを。


「…その授業、今日は無いみたいだけど?」

にやっと風紀委員長が笑う。彼がそういう笑いをするときは大抵私に圧倒的不利をもたらしているのだ。


「無い、とは?今日は数学があるはずです。」

目線を合わせることはない。彼はわざわざ私の前に回ってきて学ランを靡かせているが目は合わない。
私の目に映るは進行方向にある校舎のみ。


「ないよ、数学担当者が休みだからね。」

昨日から。
彼は付け足す。
しかし昨日は確かに時間割で数学を確認したのに。
数学担当者の藤村先生も確かにいたはずだが。


「でも事実無くなったんだから、その電卓は不要物だよね。」

ふふんと笑ってみせる。

どうせ、どうせテメーが殴ったんだろう?
咬み殺すだか何だか知らないけど、トンファーで学校の秩序を乱してるのは貴様だと罵ってやりたい。


「…では没収で構いません。先を急いでますから」

たったかコイツから離れたい。とっとと離れたい。


「…ちょっと、君、」

もうあんたに話す事なんて何もない。
彼の制止も聞かず、掴まれた腕も振り払って走り去る。全力疾走をするのは遅刻とこのときくらいだ。

ひゅーひゅーと痛い喉を無視して席に着く。

元彼、という響きはあまり好きではないが、彼についてはそう言わざるをえない人物であるから仕方ない。

つまりは別れたのだ。
(誤解を招くが私が別れようって言ったんだ。)

友達はもう大喜びで「別れて正解だよ!」と笑うのだが「君には物事の正解不正解が分かるのか」と冷静に返したい。


「あ、ちとせ!」

この学校には珍しい金色の髪が弾む。
彼は学校関係者であるが学校関係者にあらず。
学校の秩序=雲雀恭弥の家庭教師と名乗る方である。


「ディーノさん!」

私は表情を輝かせた。
彼が思いっきり振る手と同じく、思いっきり教室のドアまで走っていく。
(…全力疾走、まではいかないけれど。)


「今から授業か?」

「はいっ」

彼はいつみてもヤバイくらい格好いいと思う。
(…彼も格好いいといえばそうだけど、ディーノさんとはまた違うよね。)


「そーかぁ、じゃあオレも一緒に受けようかなー」

なんておどけながら、くしゃくしゃって頭を撫でられた。
(彼も時々は私の頭を撫でてくれたっけ、いい子いい子するみたいに、子供扱いして。)


「あははっ、そんなのしたら先生にバレちゃいますよ!」

「大丈夫大丈夫!恭弥の知り合いだっていえば、何と、も……」

「………、」

恭弥、という単語に微か、ぴくりと反応してしまう。ディーノさんも口にして気付いたのか、はっと手で口を覆った。

「わ、わりぃ…」

「いえ…、謝らないでください。」

「…そっか。じ、じゃあ、また放課後にな!」

最後の方は半分苦笑いで、ディーノさんは教室を出ていってしまった。

彼と付き合うことになったのは雲雀と別れた次の日で、雲雀と別れたのは彼に迷惑をかけていたからで、
ディーノさんと付き合ったのは、半分アテツケで。

雲雀と一緒にいると、強い彼の足手まといになっているようで、自分が惨めで。


「本当に、好きなのに…」


「…誰が?」


「あの人が…、……え?」

ふと独り言に応える声があって、隣に視線を移す。

うわっ、な、な!
何であんたがここに…!?

「僕が教室にいたら悪い?」

「……いえ、別に。」


元彼、との接し方がまだイマイチよく分からない。
変に敬語になってしまう。
(それもそうか、私がフッたんだから…、)


「外、出よう。」

いきなりそう言われて、あっと言う間もなく教室の外へ。(先生に許可を得てないのですが雲雀くん。)



「あの人と、何話してたの?」

屋上に通じる階段の下。
急に立ち止まられて、危うく彼の背中にダイブするところだった。


「特には、何も。」

素っ気く返す。
ドキドキするけど、表面に出さないように。

「…ふぅん。」

「……。」

「あの人のこと、好きなの?」

「………。」

「答えなよ。」

「関係ない、でしょ」

言ってはいけないと思いながらも、言ってしまった。

彼を拒絶する一言。


…雲雀は俯いてすぐまた顔をあげると、
階段に腰掛けた私のリボンを引っ張りあげた。
立っている彼にされれば一溜まりもない。

言うまでもなく上向きになってしまう。

「い、いたっ」


「何度も言わせないで、」

怒った彼が繰り返す。

「あの人が、好きなの?」

「………、」

「あの人と君が話してるとき、今すぐにでもあの人を咬み殺してやろうかと思った。」


「……(暴君め)」


「あの人と君が一緒に下校なんてするから、僕、放課後が暇になったんだよ」


「…(なんて自己中な)」


「君が、あの人を好きなら、咬み殺したいのに、」

「……。」

「…満足に、咬み殺せやしないよ。」

ちとせが、またすぐ泣いちゃうから。

彼は付け足して、うなだれるように前髪をかきあげた。私に、一体どうしろと言うのか。


チャイムが鳴る。
放課後。
ああ、ディーノさんが待ってるのに。


「ねぇ、ちとせ。」

「……はい、」

「あの人は大嫌いだけど、ちとせに好いてもらえてるなら、」

「…。」

「僕はあの人がもっと大嫌いだ。」

「それ、は…」

大嫌いだけど大嫌い?
日本語がおかしいよ、って言い掛けたら、
掴まれたままのリボンを更に引かれて、耳元でボソッて何か言われた。


「えっ、なんて?」

「…もう、言わない。」

「嘘、今、だって…、」

「じゃあね。」


言った後で後悔したらしい彼は耳まで真っ赤にしてしまって、チャイムが鳴り終わる前に唖然とした私の前から消えてしまった。


―まだ君が好きだ―
なんて言い残して。



―――――――――……



ディーノさん、ごめんなさい!




continue…

11111キリ番椿ナナさまリクエストの「雲雀嫉妬夢」でした!

も、申し訳ないです…。
何やらグダグダで意味不明な駄文に…、

返品交換お申し付けくださいませ…!!




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あきゅろす。
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