献上品とかお宝とか
◆つばささまへ!
「風紀委員長夢」
"嘘の約束と次の約束"
なかなかどうして、伝わらないものがあるんだろう。
応接室の窓から、体育の授業中の彼女が見えた。
デスクで資料の整理中に後ろから聞こえたちとせの声に、何故だか居ても立ってもいられなくなって、運動場を覗き込む。
ああやっぱり、彼女はああして、弱い草食動物と群れたがるんだ。
(でも君に「群れるな喋るな」なんて、言えるわけないけど。)
……その中に、
「よーお田中!」
僕が見てるのを知ってか知らずか。
ちとせに話し掛ける輩が一人。(顔を覚えておこう。)
きっとその輩に向かう他の女子たちの視線が熱いから、あの茶髪や腰パンは人気の高い輩なんだろうか。
(まったく、最近のバカの考えが分からない。…否、知りたくもない。)
遠くではあるが、ハッキリと会話が聞こえる。
…彼女にしても彼にしても、どうしてあんなに声が大きいんだろう。
「なぁ、知ってるか?並盛駅に新しい店できたらしいぜ!」
「あ、知ってる!クレープ屋さんとかたこ焼き屋さんとかが出来たんだよね!」
「そうそう!そこ、今度行かねぇか?」
「いいじゃん!…誰と行くの?」
「へ?そ、そりゃ二人で行くんだよ…!」
「え…!そ、そうなの?」
「お、おう…!嫌か?」
「いや…。うん、楽しみにしとく!」
「(っしゃ!)おう!じゃーな!」
…だって。
気分が悪い。
モヤモヤするし…、
…ああ、この感覚を、僕は知っている。
前にも何度か、こんな感じのイライラがあって。
…僕はその時、どうしたっけ?
その答えを探す片手間に、僕は資料整理を再開した。
…彼女が来るまで、たっぷり1時間。
―――――――――……
「…で、どうするの、君」
「いや、行くよ」
彼女が授業を終えて、昼食を応接室で食べだした時。
唐突に、さっき(馬鹿な輩から誘いを受けた時)の彼女の嬉しそうな顔が思い出されて、またイライラが胸を襲った。
「男と二人で?」
「…そう、よ」
彼女はしどろもどろで答える。
どうして僕が知ってるの、なんて聞かない。
それほど余裕がないんだろうか。男と二人で出掛けるってことが、悪いと思ってるから?
いったい誰に、悪いと思ってるの?
「ふぅん…。ちとせ、君ってああいうのが好きなわけ?」
(チャラチャラした茶髪の腰パンが?)
「……。雲雀には、関係ないでしょ?」
うつむきがち、でもハッキリと言い切るちとせ。
その彼女の言葉に、カチンときた。
「…へぇ、ああいう弱い奴が好きなの。」
自然と、口が動いて言葉が出る。
本心だからしょうがない。
「…そ、そんな事はないけど。でもたまには、いいでしょ?」
「……。」
僕はデスクの椅子の背もたれをちとせに向けたまま、分からないように拳を作る。
まさか、彼女は、僕なんかより(っていったら誤解を受けそうだけど、)彼の方がいいんだろうか。
「…じゃあ僕も茶髪にすればいいわけ?」
「……は?」
「腰パンだったらいいわけ?」
「な、なにを…、」
「彼みたいなら、君は僕と何処かに行ってくれるわけ?」
「…………、」
まだ彼女には背中を向けたまま、だけど。
きっと彼女は驚いた顔をしてるんだろうな。
「…雲雀、なんか変じゃない?」
困ったように、デスクに手を付くちとせ。
「雲雀も、新しい店行きたいの?」
「まさか。」
そんなわけない。
ただ、僕は君に…、
(ああ思い出すと、またモヤモヤイライラする。)
「じゃあ…、」
僕の後ろから回って、後ろから覗き込む。(そんな彼女の仕草に、さっきのモヤモヤが少し収まった。)
目は逸らしたまま。我ながら大人気ないとは思いつつ。
「(ただ僕は君に…)」
「行って、ほしくないとか……?」
「…!」
心の中で思った本音が、そのまま彼女の口をついて出たのかと焦った。
いや、確かに考えとしては当たってる。
でもそんなこと、言えるはずもなく。
「…その日は会議があるんだけど。」
…なんて。
一応、言い訳。(仕方ない、今日の会議は延期か。)
「素直じゃないなぁ…」
「……、」
「あは!私が好きならそう言いなさいよー」
なんて彼女が冗談っぽく言うものだから、僕は冗談なんかキライだって言う代わりに、グイッとリボンを引っ張った。
「ちょ…っ!伸びる…っ」
やっとあわててくれたちとせに、まだ不機嫌は治まらないけど、さっきとか違うイライラになった気がする。
チクチクするのにぎゅうってなってる。
ああ、顔が近い。
丁度いい。
「うわっ、…んぅっ」
「ん、…」
「ちょま…っ、ふ、ぅ」
「いいから…」
「よくな…、んくっ」
彼女にキスしてると、なんとなく、イライラが治まるような気がして。(いや違う、決してちとせとキスするのが好きとか…そういうのじゃなくて…、)
僕は君から唇を離して、顔を覗き込む。
怒ったようなのに、頬が赤い。
(君ってホント、不意打ちに弱いよね)
「とにかく、会議は絶対参加だよ。」
「今日も会議じゃん。」
「……延期になった。」
「いつ?」
「……、さっき。」
「自己中め」
「別に。」
君が誰かと出かけるくらいなら。
それくらい構わない。
「…あーあ、その日は雲雀と二人で出掛けようと思ったのにな」
「……。」
「ざんねーん、会議だもんね。」
どうやら彼との約束は断るらしい。わざとらしく言う彼女が憎い。
「………会議、来月にしようか」
「雲雀、クレープ食べられるの?」
「…食べる。」
いや、食べてみせよう。
生クリームでもチョコレートでもバナナでも苺でも、プティングでもフレークでも何でも来い。
…咬み殺すから。
「…まぁ、雲雀が嫉妬なんてねー」
「……咬み殺すよ。」
「!?(…あ、でも否定しないんだ…)」
――――――――………
あの男、パンツ一丁で屋上から吊るしてやる。
continue…
はい、つばささま7000キリ番リクエスト、「風紀委員長嫉妬甘夢」でした!
え、甘?嫉妬?…てかこれ雲雀?って感じになってしまいました…((+_+))
すいません。
こんな駄文でよろしければ、どうぞお受け取りくださいませ!
リクエストありがとうございました。
ではまた次回!
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