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年下やら年上やら
隣のおチビさん




"まさかおチビさん"




―いよいよ春も本格的になってまいりました―



「足…大丈夫?ランドセルとか持とーか?」

「うん平気。ちょっとぶつけて擦りむいただけだから…」


―…雲雀くんのお隣さんの田中さんは、同じクラスの槇原くんと歩いておりました。
……これは我々の調査でもなかなか確証できなかった事なのですが、なんと、槇原くんは田中さんに淡い恋心を持っているそうなのです。いやぁ青春ですねぇハハハ!―――


「2組の田中の奴、わざと足元を狙ってボールぶつけるんだもんな」

「…よけようと思ったんだけど足が滑って…」

ドッジボール下手かも。
なんて苦笑いしている田中さんに槇原くんはメロメロです。
田中さんはおとなしいながら、その柔らかな物腰が人気でもあるのです。


「ところで、槇原くん家の犬、元気?」

「ロッキーは今フリスビーの訓練中なんだ。土・日は公園で練習してっから、見に来る?」

「うん、行きたい…」


…ちゃっかり会う約束までしてしまう槇原くんは、これでいてかなりの負けず嫌いです。
田中さんに近付く輩は、それこそ昨日の敵は今日も敵なのです。


「じゃあ今度の土曜の3時頃、並盛公園の西口で…」

「…あ」


田中さんはここで、意外な人物を発見いたしました。
槇原くんの言葉は耳に入っておりません。
……繰り返します、槇原くんはかなりの負けず嫌いです。―――


「お兄ちゃん…!」

「…田中さん」

なんと、下校中の雲雀くんだったのです。

「いつもより随分帰るの早いね…」

「今は中間テストの最中でね。……あ、その足、どうしたの」


雲雀くんはバイクでブンブン帰っている所を見つかってしまいました。


「あ、校庭で転んじゃって…」

あえてスポーツ万能の雲雀くんに、ドッジボールで怪我したのだと言いませんでした田中さん。

…槇原くんはそれを、だまって聞いておりました。



「あ、槇原くん。この人がこの間話したお隣のお兄ちゃん。」

田中さんは気を使ってお互いに紹介をしました。それに対し槇原くん。

(…ギロリ)

「…!」

――初対面の小学生がいきなりガン飛ばしてきた。

――なぜ?


雲雀くんの心の中を解説すると……

「小学生のくせに中学生(以上)にガンくれてんじゃねーよクソガキ。僕を知らないの、咬み殺すよ」

―――て、感じ?


田中さんは紹介を続けます。

「…こっちが同じ組の槇原くん…」

「…ふぅん、よろしく」

気に食わないガキでしたが、雲雀くんはわきまえた坊っちゃんなのでトンファーを装備しませんでした。


それに対し槇原くん。

「…でさあ田中。さっきの話の続きなんだけど」


―――あー?

年上の僕が謙虚に礼儀正しく挨拶したのに無視かよ

――なぜ?


そうだな、今の雲雀くんの心の中を解説するならば…

「小学生のくせに中学生(以上)をシカトすんじゃねーよクソガキ。マジで咬み殺す。早く救急車の手配しないと後悔するよ」

――て、感じ?


ちょっとムカつく雲雀くん。

「じゃあ気を付けて帰りなよ二人とも」

このままここにいたら、幼気で真っ白な少女の前で、真っ赤な地獄絵巻を繰り広げることになりそう。

「あ、うん……」

――だから、?

ふと魔が差して。


「…あ・そうだ」


普段なら考えられないよーなセリフを……


「ちとせ、足が痛いなら後ろに乗ってく?」

「えっ、ホント!」


……しかも名前呼び捨て。

小学生の小僧相手にさりげなく所有権を主張。

「………、」

槇原はただ呆然と立ち尽くす。


―雲雀くんはすぐに後悔したけど。

「またね、槇原くん」

「…しっかりつかまってなよ」


ふはは悪いな、槇原くん。

―まぁ別にいいんじゃないの?中学生なんてまだ大人じゃないし?
雲雀くんの場合は…、中学生以上かもしんないけど。


―――――――……


「いただきますっ」

「あら、ちとせ、今日はご機嫌ね。何かいい事でもあったの?」

「…うん。ふふ、内緒!」



――――――――……


「恭弥くん!今日、ちとせちゃんと自転車で二人乗りしていたでしょう!」

斜向かいの名古屋さんから聞いたわよ!


…夜の咬み殺し行事が終わって帰宅した雲雀くんに、またもやババサマがやってきました。
この時間帯、ババサマは庭のバラに水やりをするのが日課です。

やっかいなのに捕まったな……。今晩もディナーは、12時を過ぎそうです。


斜向かいの名古屋さん…。

噂やらご近所付き合いは、やっぱり大嫌いだと、雲雀くんは思いました。


「気を付けてよね!ちとせちゃんを乗せてあげるのはいいけど、ケガなんてさせたら承知しないからねっ!」

ババサマは雲雀くんを大切にしているのか、ちとせちゃんの母親なのか、よく分からなくなってきます。


最近、ババサマの自分に対する扱いが一段とぞんざいになったよーな気がする

――と、雲雀くんは思いました。


―――――――――……


なんて名前だっけ、あのクソガキ。
思い出したら即咬み殺す。




continue…

わー槇原くんの危機!

てかグダグタ。
クタクタ。

チョコレートが食べたい。


ではまた次回!

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あきゅろす。
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