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風紀委員長様!(完)
笑顔のワケ







…異常気象。

もうすぐ春、受験シーズン真っ只中の(もちろん私たちは受験なんて関係ない)…桜の蕾が、桃色の季節を準備する期間のはずなのに…………



「なんで、雪が止まないのよ……」

登校を躊躇うほどの吹雪。もちろん、家の屋根やら車のボンネットやらには雪が厚く積もっているわけで。


「学校、行きたくない…」

というのは毎度の事だけれど(雲雀に会いたくないもん)、今日はそれが一入だ。


…ケータイ画面を見る。
「今日は絶対登校。来ないと咬み殺す」。
送り主は当然、風紀暴君委員長。はぁぁ、これ、警報出てんでしょ?


そこまでして、仕事やらせたいかなぁ……。
そんなに手が足りないんだろうか。



……………

「まさか、仕事なんて無いよ」

「…じゃあ何で呼ぶのよ、バカ……」


霜焼けの出来てしまった赤い指先にふぅふぅと息をかける。

やっぱり警報だったみたい。だって、校内に誰もいなかったから。


「何となく…呼びたくなったから?」

…イヤ聞かれても困るけどさ。
なんだよ、呼びたくなったからって。
私は何でこんなエゴイズムの塊の為に、わざわざ朝早くから登校したんだろう。


むかぁっと怒りを覚えて、雲雀のいれていた紅茶を横取り。


「え、それ僕のなんだけど……」

ふん、そんなこと、知った事か!

私はストレートで紅茶を口に含む。比較的雲雀は、紅茶をいれるのが上手いために、ミルクやらレモンやらを入れるのは少々勿体ない気がするのだ。

…ん、やっぱおいしい。


「…雲雀、これおいし…」

感想を言い掛けた口をつぐむ。

肝心の本人がいないためだ。

「え、雲雀…?」

ついさっきまでいたと思っていたら。
いきなりこれだもんなぁ、スネちゃったのかな?


そう思ってふと、吹雪が止んだことに気付く。

窓に近づいてよくみれば、それは俗に言う銀世界、とやらなのだろう。

「…わあ…っ!」

思わず歓喜してしまった。まだ、私にも子供心が残っていたらしい。

勢いよく窓を開けると、ヒンヤリと涼し風が頬を撫でる。暖房の所為で溜まった二酸化炭素が、一気に放出される感じ。


「んーっ!気持ちいー、 ぶはッ!」

爽快感を味わっていた私に、…詳しくは私の顔面に、なんと雪玉が飛んできた。


犯人なんてもちろん決まってるけど。


「…雲雀〜っ」

恨めしげに声を出して、校庭一面の雪の上を探す。
銀世界の中に、ぽつりと落とされた黒一点。


「はっ、ちとせ、雪だらけだよ」

いつもの雲雀なら、考えられない様な笑み。(嘲笑でも妖笑でもない、笑顔のこと)

ああそのとき、
真っ白な雪が、顔をだした太陽に照らされてキラキラしてて、あの雲雀がはにかみにも似た(決してはにかみではないけど)笑顔だったもので……

一瞬、その中にいる彼が、ものすっごく格好よく見えてしまった…


「あ……。」

いつもと違う雲雀の笑顔と、いつもと違う真っ白の校庭。

そして、私の編んだ黒のマフラーを巻く彼が…



「ちとせ?どうしたの」

「………。」

ヤバイ。私、自分でも分かるくらい照れてる……。
(だって今まで私はそんな彼と普通にキスしたり、してたわけだし…。)

思わず急いで部屋に引っ込めば、何とも勘のいい雲雀くんが戻ってきてくれた。(なんでこういう、都合の悪いときに限って!)



「ちとせ、」


部屋に戻ってきた雲雀が、マフラーをコート掛けにかけながら私を呼ぶけれど。

当然ながら私は顔を上げない。
(だってまだ真っ赤だ…)


それにムッとしたのか、顔をうずめたソファーに歩みよる雲雀。

正直、今は来てほしくない。


「ちとせ、顔上げなよ」

「…………や。」

「犯すよ。」

「……。」

その言葉に、仕方なく顔を上げる。
彼の言葉は、脅しでなく本気だと思うから。


「ちとせ、真っ赤」

「…うるさい」

くすっ、と笑って、自分でも分かってる姿態を説明される。
…それが余計に恥ずかしいって、知ってるくせに。



彼は私の隣に座り込んで(雲雀の体重分しずむソファーに、どうしようもなく恥ずかしくなる…)くぃと私の腕を引いた。

ああ、分かってる。
キスされるんだってこと。


大っっ嫌いな相手にされるのはもちろん嫌だけど、最近はそれにも慣れてしまったのか、嫌悪感を感じなくなってきた。
(慣れって恐ろしい!)



「ふ、…ん。はぁ…っ」

「ん、んん……」


キスといっても、当然濃い方の、である。

もっとも、濃い方以外のキスなんてされたことがない。


「ァ…、ひば…んっ」

「ん、…まだだよ」

「んぅ、ん……ふ、あ」



長い長い長い長い…っ!

死ぬって君、死ぬって!


意識がふわふわ、抵抗する力すら弱まってきて、そのころようやく雲雀は口を離してくれた。



「ねぇちとせ、雪だるま作ろうよ」

ははぁはぁ、まだ、息も整わない私をひょいと抱えて、マフラーをもう一度手に取る雲雀。

「え…っ、雲雀、まっ…」

その制止を飲み込むかのように、再び口を塞がれる。


私たちは、お互いに体が悲鳴を上げるまで、校庭中の雪を遊びまわした。


警報の日は、二人で雪あそび。




―――――――――……



これだから止められない。君と遊ぶのは。




continue…

暑っ……
いま、非常に暖房の効いた部屋でかいてます。
汗が……(;;´Д`)=3

ではまた次回!

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あきゅろす。
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