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風紀委員長様!(完)
油断





ひどく疲れた日だった。

私は雲雀と齋藤さんがいないことをいいことに、応接室で仮眠を取っていたときのこと。


―――――――――……


「だから私、あなたが好きなの…!!」

「……、」


たとえばそんな言葉が応接室の前の廊下から聞こえてきたとして、予想するならば、それは誰の声だろうか?


「答えて、お願い…、」

「……、」

「あなたが、好きなの」

「…僕も、君のことが好きだ。…でも、」

「……でも?」

「僕には、あの子がいる、から…、」


悪趣味といえば悪趣味。
私は部屋の扉の前に立ち尽くして、壁に耳を押し当てて。

廊下では今まさに、ときめきメモりあっているような。

(どうした私。へんな汗かいちゃってんじゃん)


告白が終わるのをただじっと耐えて、タイミングを見計らって、ソファーに戻る。
雲雀に告白だなんて、一体、誰だろうか。

―――――――――……


雲雀だけが、応接室に入ってきた。

この時間にはもう部屋にいる齋藤さんは、今日はいなかった。

さっきの声の主は、じゃあ…、彼女か?


彼がなにか言いにくそうに口をパクパクさせて、でも何も言わずにデスクについた。

…「僕も、君が好きだ」
さっきのセリフが頭にこべりついて取れない。



「…雲雀」

「……。」

「雲雀、」

「………、」

「……。」


応答ナシ…か。

どうやっても返事するつもりはないらしい。
私に呼ばれて返事しないなんて、雲雀も良い度胸だ。(なんて彼のまね。)


「……どーしても、返事しないのね。」

「…。」

「…。」


あー、そーですか。
返事しないんだ?
ふーん、じゃあ、何があっても返事しないよね。


「…。」

私は、まだ黙りっぱなしで目を泳がせる彼を呼んだ。


「恭弥。」

「!」


名前で。


…初めて、ではないだろうか。雲雀のことを、名前で呼ぶなんて。
別に名前で呼ぶのが何か特別な意味だとは思っていない。
ただ何となく、彼が名前で呼ばれるのを特別だと思っているのなら、反応が楽しみだなと思ったまでで。
(とにかくは返事をしない彼に返事をさせる一手段として。)


「……っ、」

まさかここまで、過剰に反応するとは予想外であった。

「……反則だ…、」

彼は一言、返事するでもしないでもなく、言う。
いつもは決して悪い訳ではないが冷淡な血色をしている彼が、まるで逆上せたような真っ赤なほっぺをして唇を食い縛っているのだ。


「……、」

予想の範疇を超えた行動にびっくり。
名前で呼ばれるのがそんなに嬉しいのか。
だったら呼んでやろうじゃないか、君が返事をするまでね。


「…恭弥」

「、」

「恭ー弥!」

「…ッ」

「返事しなさいよ恭弥!」

「…っ、な、何…、」


あ、返事した!
名前効果絶大!


私はまだ、デスクに座って手の甲で頬を隠したままの雲雀に近づく。

彼なんかは、別に名前で呼ばれる如きで動揺するようには見えなかったのだが。
(現に私のことだって平気で名前呼び捨てだ。)


彼より視線を低くしようと、デスクの前に座った。
(雲雀より上から目線だと、ろくな受け答えが出来ないのは百も承知。)


「何か、あったでしょ」

話を元に戻そう。
(彼に言わせよう、告白も相手も。だからあえて、誰に告白されたのなんて聞いてやらないんだ。)


「何か、って何。」

また、嘘をついた目で白を切る。

…どう、したのか。
いつもはこんなに動揺なんてする彼じゃないのに。
今日はえらく様子がおかしい。


もしか、して。

私はもう相手が分かったような気がして、怖くなった。
もしかして、それは、


「齋藤さん、関係…?」

いつもいるはずの齋藤さんが、いない。

「…、」

彼が俯く。
それは、肯定と取っていいのだろうか。


「…何、言われたの?」

聞きたくないような、聞きたいような、不安な焦燥感に苛まれる。
(実際は聞いていたので何を言われたのかは分かっているのに、どうしても彼の返事が信じられなかった)

「……、」

黙ったままの、彼。

「もしかして、雲雀…」


本当に、齋藤さんが…



言い掛けたとき、


「ちとせ、委員会が始まるんだけど。」


間の抜けた、なのに怒気を孕んだ声がぼんやりと頭に響いた。


…委員会?

まて、目の前の雲雀は、何も言ってないぞ。
誰だ、雲雀の声で委員会を語るやつは。


「ちとせ、起きて。」

声と共に、ガクガクと頭を揺さ振られる。


え、…「起きて」、?


変な感覚が治まってきて、段々と、神経が正常に戻ってきて…、


「あ、やっと起きた。」

…覚醒。


「………へ?」

え、え?

覚醒ということは、つまり、今のは、…夢、ということで。

ちょっと不機嫌そうな雲雀が、私の寝ぼける頬をつるりと撫でて言った。


「もう少し起きるのが遅かったら、僕がもっといいモーニングコールをしてあげたのに。」

…こうやって、さ。

言いながらまだボーとした私の半開きの唇に、チュってキスされる。


「……あ、」

「おはよう、ちとせ」

君、意外と寝言うるさいよね。

雲雀がニヤと意味ありげに笑う。

…!!
まさか!


「き、聞いてたの…!?」

私が言ったこと?

な、名前、呼んだことも?


「さぁ?」

現実の雲雀は夢の雲雀よりも憎たらしく綺麗に笑って、委員会に遅刻したらもう一回キスするからね。って部屋から出ていった。


「……あ、りえない、」

あとにはこれっきり。

ひとり、馬鹿みたいに赤くなった私が応接室にいた。

――――――――……



寝言でまで僕の名前を呼ぶなんて、
ちょっと、油断してた。




continue…

ぎぃやぁあ!
なんだ、この駄文は!
申し訳ないです!
久々に更新してこれか!みたいなね(T_T)
しかも夢オチ二回目はダメだろ!
みたいなね(T_T)

すみません本当はこんな話にするつもりなくて…―
齋藤さんに告白させたかったんです…!
次回、次回させます!
多分。

ではまた次回!

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あきゅろす。
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