風紀委員長様!(完)
密閉空間
「今日こそ!風紀委員会に入れてもらいます!」
「……。」
「……。」
…彼女は宣言通り。
いうなればジャイアニズム?
人の迷惑省みずというか。(いやいや、せっかくの風紀委員入会希望者に失礼だが。)
とりあえず、ちゃぁんと来ました。
今日は清楚にお下げ髪。
三つ編みがとてつもなく似合う女の子だなぁと思う。
「雲雀さんっ!」
彼女はキリリと眉を吊り上げて部屋を見渡す。
…しかしもちろん応える声はなく。
彼女の視界に私たちが入ることもなく。
「…あれ、雲雀さん?」
「……、」
「………、」
つまり私たちは、クローゼットの中にいるわけで。
「…いない、か…。」
齋藤さんが寂しげに呟いた。
「……、」
「……。」
何故こんな狭い密室にいるのかといえば、更なる彼のジャイアニズム。(本当に彼女といい彼といい、本当にやめていただきたい。)
我らが雲雀様の「あの子鬱陶しいんだもん。…ほら、来た。ちとせちょっとこっち来て。」「え、いやちょっと…!?」という会話から。(まさかクローゼットとは…。もうちょっと何かなかったのかな)
私たちは窮屈な密閉空間で、扉と扉の間から洩れる少しの光以外は真っ暗の中で。
…見事に、抱き合っているわけで。
向かい合ったまま彼に腰に腕を回されて、それが恥ずかしくて、彼の胸板を押し返してみたり。
…小さな声で話す。
「ちとせ、狭いんだからそういうのやめて。」
「だ…っ、だって…!」
「君、そういうので照れるガラじゃないでしょ」
「照れるとか、そういうのじゃない…っ!」
「うるさいな、静かにしないとバレちゃうってば」
「……っ。」
押し返してたら反対に余計腕に力を入れられてしまって、引き寄せられる。
彼の匂いや体温がリアルに近くにあって、怖いくらい心臓がどくどくしていた。
どうかこの音を聞かれませんように…、彼のいつもより早いような心音を手のひらに感じながら目をぎゅうっと固く瞑る。
「はーあ……、」
齋藤さんのため息が聞こえて、続いてバフンとソファーに座る音。
雲雀が眉をしかめた。…彼はあの黒革のソファーを気に入っているようで、乱雑に扱われるのを嫌うのだ。
「雲雀さん…、」
彼女がまたつぶやく。
どうやら雲雀を待つ気らしい。
(…全く運が悪い。いつまでこんな状態でいなくてはいけないのか。)
雲雀の呼吸する微かな音とか、それに従って動く華奢なのに広い胸板とか。
外の様子を窺う凛とした横顔や、時々ほっぺに掛かるサラサラの黒髪。
ど、どうし、よう…。
よく考えたら私、こういう経験、あんまりないんだった…っ!
告白とか付き合うとか。き、キスだって…。
雲雀があんまりに強引すぎて、嫌がることに必死になりすぎて、今のこの状況が、普通じゃアリエナイ状況だって。
「…ちとせ?」
「……、」
「どうしたの。」
「い、いや…なんでも、ない…」
「ふぅん…?」
「な、なによっ」
「…もしかして、今頃になって恥ずかしくなってきたの?」
「ち、ちが…ッ!」
「しーっ、だめ。そんな大きな声出さないで。」
「うぅっ…だって…、」
彼は人差し指を口元の前で立てて私に制止を掛ける。
今のは彼が悪くないか?
しかしそれを言っても何だかんだで切り返されるに違いなく。私は仕方なく口を閉じた。
それから、実に3時間。
彼女は読書をしていたものの、私たちは特にすることもなく。互いに近すぎる距離のまま、ずっと恥ずかしい思いをしてきたのだ。(彼はきっとそんな思いしていないと思うけれど。)
彼女が、ぽつりとつぶやいた。
「雲雀さん、私のこと、どう思ってるのかなぁ…」
「……。」
「…。」
…彼はキョトンとして小首をかしげたけれど、私にはそれの意味が、はっきり聞こえたような気がした。
「私は、雲雀さんが好きなのに」…って。
――――――――……
二人でかくれんぼって何かいいね。
continue…
あららら。
らららのら?
すごい、なんか、駄文度アップしてる。
ではまた次回!
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