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風紀委員長様!(完)
帰り道








そう、たとえばこんな日。


朝から晴れて、昼間は快晴、放課後は夕日が綺麗。


…そんな日。

彼と一緒に、下校する日。



「…遅いよ」


「ご、ごめん…っ」


きれる息と痛い喉を無理やり押し込んで、彼に駆け寄る。
雲雀は校門にもたれかかっていて、その長い学ランを風が踊らせていた。


「何やってたのさ。」

彼が腕を組み替えて、上目遣いに私を睨む。

「先生に呼ばれてたの」


私は肩の学校カバンを掛け直して、髪の乱れを直す。
一応、女の子なのだ。



「…ふぅん(咬み殺す。)」


「雲雀にこのプリント渡してってさ。(うわ、こいつ今ゼッタイ咬み殺すって思った!)」


赤のファイルから数枚の資料を取り出し、彼に渡す。

彼はカバンを持ち合わせていないので、少し嫌そうな顔をした。


夕日が住宅街の白い壁をオレンジに染める。
2つの長い影が、道路に落ちて私たちのマネをした。

…晴れの日の帰り道。

ぼんやり、今日はなんのドラマがあったかな、なんて考えながら。

特に話すことがあるわけでない私は、今まで疑問だった事を聞いてみることにした。


「…ねぇ、」


「なに。」


「雲雀って、なんで晴れの日だけ私と帰るの?」


…晴れの日だけ。

彼は校門で服装点検と生活指導を行い、そのついでに私を待つ。


「…………。」

雲雀は押し黙った。
と、いうよりかは、言葉を探していると言った方が正しいか。

私はそれを気長に待つ。

彼は彼なりの考えがあるのだ。
最近、私はよくそう思うようになってきた。

(何故って最近彼は、訳の分からない事や黙って何かを考えることが多くなったから。)


「雨、僕きらいなんだよ」

雲雀は唐突に言った。
雨。

……ああ。雨。


「鬱陶しいし、何より傘を差すのがめんどくさい。」


「なるほど、雲雀らしいね。」

私はその理由にさして疑問も抱かず、帰り道にあったコンビニで苺ミルクを買うことにした。

雲雀はたしか牛乳だったかな。…見た目アレのくせに、志向はお子ちゃまだ。


「あー、もうすぐまたテストだなぁ…」

私は苺ミルクをすすりながら、彼の横に並んでポツポツと独りごちる。

だって別に彼にはテストなんて関係のないもので、私にも大抵は関係ないものだから。

「…別に、ちとせは頭いいでしょ?」

でないと資料整理なんて任せられないよ。
(だから草壁には頼まないんだ。)

彼は片手に持ったプリントを鬱陶しそうにピラピラとさせて、紙パックの牛乳にストローをさす。

「いやー、でも、やるからには一番とりたいじゃん」

負けず嫌いの私はそれに反発した。
出来ることは1番。出来ないことはさっさと諦めるがよし。

「…そんなものかな」

納得いかないように首をかしげ、彼は「でも賢くなくてもちとせなら…」と何か言いかけて止めた。
私はまた、ああ彼なりの考えをしているんだな、と思い、黙って隣を歩く。




空が、なんとなく。
曇ってきた気がした。

「明日は、雨かな?」

「…さぁ。」

彼は曖昧に返事して、ご丁寧に牛乳パックを折りたたんだ。

「じゃあ一緒に帰れないね」

思ったままを口にする。
彼は一瞬息を詰めたかの様になって、きっと牛乳を飲んでいたなら咽ていたところだった。


「………分かってて言ってるなら君、最低だよ」

雲雀は怒ったように早足で進んでいく。
…悪いことを言ってしまったようだ。

「え、なんか…とりあえずゴメン」

「…。」


彼がハッと、空を見上げる。
私もつられて上を向いた。

「…あ、」


空は先程までの綺麗な夕日を隠し、かわりにグレーのカーテンを広げている。
ぽしゃん、頬に冷たい何かが当たった。


「雨が……、」

「ハァ…」

とうとう降りだした。
きっと、すごい雨になる。


「…ちとせ、走るよ」

彼はプリントを小さく折って学ランのポケットへ。



私たちは走った。

…家までいちいち送ってくれる彼は、心底しっかりした人間なんだと思う。



……空は泣き出した。

風が強い。


…嵐になるかも、しれなかった。



「…ねぇ、」

「ん、何。」

「明日は晴れるといいね」

「………まぁね。」




――――――――……



雨の日は機嫌悪くなっちゃうから。




continue…

君には八つ当たりしたくない。だから鬱陶しい雨の日は、一緒に帰らない。


…って設定だったんですがね。
なんだろうアレレ?
おかしいな。


ではまた次回!

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