風紀委員長様!(完)
お花見と再来月
「お花見に行きたい。」
時刻は只今、午前8時を過ぎたところでございます。
もちろん私は、…否、私と彼は応接室。
部屋には80年代に流行ったWhamのFREEDOM(?だったかな)がかかってる。
当然ながら私の趣味ではないので、雲雀の趣味。
(彼は本当に何才なんだろうか。少し心配になる。)
と、冒頭にもどろうか。
………花見。
(なんでアノ雲雀が"花見"を"お花見"だなんて。)
「…花はとうに散ってる」
つい先日の雨で。
暴風暴雨、強風波浪。
桜は無惨にもその餌食となりましたよ。
道路の隅には、それこそ桜だったの?ってくらい茶色く縮れた桜の花弁。
桜だって、たまったモンじゃないと思ってるよ。
いや、やめてっ!私の苦労の結晶を…風さん、どうか持っていかないで!
とかね。
「…発想がお子ちゃまだね、君は。」
「……悪かったね。」
「でもお花見行きたい。」
「もう散ったってば」
とにかく花見は出来ません。ほら、桜餅もってきたからそれ食べようよ。
「だって、お花見…」
「はいはい、桜餅ね」
私はまるで駄々っ子をあやすお母さんみたいな気分になって、桜餅には紅茶よりほうじ茶の方がいいなと思った。
「ちとせ、僕、毎年お花見に行ってるんだよ」
「知らないよ、そんなの。ピーク過ぎちゃったし、来年にでも行けば?」
「……………。」
私がそう提案すると、
「ワオ、そうか。いいね」
少々考えた彼は、なぜか知らないけれど、気に入っていただけたようである。
…普通は来年行けば?なんて言ったら怒ると思ったんだけどな。
雲雀は尚も嬉しそう。
「(だって来年って事は、もちろんちとせも一緒に居てくれるって事でしょ?)」
……、彼の考えている事はよく分からないけれど、きっと彼なりに何か思う事があるんだろう。
私は勝手に自己完結させて、二人分の桜餅とほうじ茶を用意する。3時のティータイムにはかなり早い、モーニングティータイムである。
―――――…………
「………ねぇ、」
3つ目の桜餅に手を伸ばしたとき、雲雀が話かけてきた。
「…ん?」
「じゃあ再来月は、ちとせと海に行きたい」
「…っ、ごほっゴホ」
あやうく桜餅を喉に詰めるところだった。
「…う、海って…」
また季節外れな。
…再来月といえば6月。
暦上は夏であるけれど。
「…なんで海なの」
「僕は毎年、夏は海に行くんだよ。」
彼はまだひとつめの桜餅を手にしながら、ほうじ茶をすする。
…うみ、海。
夏にはいいかもしれない。
(まさかあの雲雀が海で泳ぐだなんて!)
でもでも。
夏は女の子にとって、敵、なのだ。
「…日焼けしちゃうから、私は行きたくない。」
最近はようやく美白ブームがきたものの、日焼けはシミ、ソバカス、皮膚癌の原因となり非常に危険です。
(あれ、何か医者みたい)
……私はキッパリ無理だと言った。
この時代にガングロは避けたい。
当然…彼は私が断ったことに対し、敵意むき出しでこちらを睨む。
わぁ、やっぱり慣れたとはいえ、雲雀に睨まれたら怖いね。
「怒った、キス100回。」
「いやぁああぁあ!」
とかいう結果になりかねないよね経験上。
………そうなると、ハァ、私から折れる、か。
と思った矢先。
「……じゃあ、室内プールとかでもいいよ。」
「………ゎぉ。」
あれれ、雲雀が折れちゃった。うわ、珍しい!写真撮ってもイイかな。
毎年海に行くんじゃなかったの雲雀くん。
「…べつに、海なんか毎年行かなくてもいいし、」
「………ほぉ、」
「…それに、」
「それに?」
「………、何でもない。
(ちとせがいないなら意味ないよ、なんて言えたもんじゃない…)」
「…なにそれー」
雲雀って、ほんと何考えてるか分かんないな。
私は食べおわった食器をお盆に乗せ、すると私ではなく、彼が片付けてくれる。
(前に私がやるって言ったんだけど、いいから僕がやるって言ってくれたんだっけ。)
日焼けしたくないって言ったらすぐ折れてくれたし、
こいつ、案外男として出来てるからなぁ。
「…室内プールなら、行こうかな、」
私は結局、そんな雲雀の紳士的(っていったら大袈裟?)なところに負けて、室内プールならと条件をのんだ。
「……ほんと?」
お皿を洗いながらこちらを振り向いて、ちょっと嬉しそうな彼の顔。
「うん。日焼けしないし」
当然私も嬉しくなる。
(私の言葉ひとつで、あの雲雀の感情を左右できるなんてさ。)
「じゃあ、約束だよ」
まるでカップルみたいな会話を交わして、私と彼は再来月、プールに行くことになった。
…まぁ来年も花見くらいなら、付き合ってやらんこともないぞ、うん。
―――――――――……
君と一緒にいれる、
約束が欲しいだけ。
continue…
やばいね。うん。
なんか、雲雀さんめっちゃ好きです。
もうそれだけで、うん。
あとはぐだぐだ。
根性プライド気合いの三角柱でたってます。
ではまた次回!
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