風紀委員長様!(完)
神サマよろしく
だいたい僕はね、他力本願だとか占いだとか、…神サマだとか。
…信じてない。
――――――――……
それはいつも通り、と言っても、近頃はすっかり春らしくなってきたけれど。
そんな午後のティータイム。
もちろん紅茶を煎れるのはちとせの役割で、お茶菓子を用意するのも彼女の役割だ。
先日は僕の命令で、彼女の手作りアップルパイ。
(…よく分からないけど、アップルパイってなんだかイイ響きだよね。)
今日は何かな。
抹茶ケーキだけはダメだよ、洋風と和風が混ざるからね。(はっきりしないのは嫌いだ。)
「はい、今日はバナナバウンドケーキでございます」
彼女がウェッジウッドのワイルド・ストロベリーで揃えられたティーカップとデザート皿を運んできた。
きっちり二人分。
ダージリンティーのさわやかな香りと、バナナバウンドケーキの甘い匂いがふんわりと香る。
上品でゆったりしていて、僕はこの時間がとても好きだ。
彼女がくる前からティータイムはあったのだけど、ちとせがきてからは特に、この時間が好きになった。
「へぇ、バナナバウンドケーキ?」
「うん、案外簡単に作れるんだよ」
「ふぅん。…じゃあ、いただきます」
「どうぞ、召し上がれ!」
僕らは向かい合わせには座らず、並んで座る。
もちろんそうなると話にくくなるんだけど、
机に二人の間を割られるよりマシだ。
…まぁ、二人で並んでると前の席が寂しいので、そこにはティータイム限定で、クマさんとウサギさんが座ってるんだけど。
(これは彼女が勝手に用意したものだよ。)
……クラシックが流れる。なんていう曲だったかな。ゆったりした、重厚感のある曲。意外とこの曲は好きだな。
だってちとせがこの曲をかけたいと言い出したのだから。
(…この年でクラシックなんて、ちとせは将来大丈夫だろうか。)
……それからしばらく経って。
紅茶も充分に味わったし、バウンドケーキも美味しかった。
ちとせはまだをおかわりしようかと言っていたけど、僕は甘いものを摂りすぎた所為で頭が痛いから遠慮する。
(それでもちとせにお茶菓子を持って来させるのは…、もちろん僕が食べたいからだよ。)
「………あれ?」
「なに?」
「雲雀、睫毛が…」
ちとせが僕の顔を覗き込む。
どうやら睫毛が付いているようだ。
「…どこら辺?」
別に見た目が気になる訳ではないけど、付いていると言われれば取りたくなる。
自分の頬を手で擦ってみた。
「あ、待って。取ったげるから…」
彼女はそう言って、僕の右目の少し下に指で触れる。
なんとなく、くすぐったい気分。
「…ありがとう」
素直にお礼を言って、食器を片付けようかと立ち上がった。(用意するのは彼女の役割だけど、片付けるのは僕の役割だ。…それくらいは、男として当たり前だろう?)
「あ、雲雀!願い事!」
立ち上がろうとした僕の腕を思い切り下に引かれたので、僕は半ば強制的にソファーへ戻された。
肩が痛む。
無意識に眉をしかめて、彼女に理由を尋ねた。
「願い事だよ、願い事!
人に睫毛を取ってもらって、願い事をしながら吹き飛ばすってやつ!」
「………はい?」
何を言ってるの、君。
そんな事初めてきいたよ?
と思った刹那。
「えっ、雲雀しらなかったの?」
「………し、知ってるよ」
さっき初めて聞いたって思ったばかりだったけど、
彼女が知ってる事を僕が知らないなんて嫌だから。
案の定、彼女は疑り深そうに僕をみたけど、僕はお決まりの「何、文句あるなら咬み殺すよ。」で何とか乗り切った。
「ふ〜ん?じゃあ、早く願い事してよ」
ちとせは笑って、指先に乗せた僕の睫毛を目の前に持ってくる。
何だかその、彼女の余裕にカチンときて、僕は立ち上がった。
ちとせの腕も一緒に持ち上げて、無理矢理に彼女を立たせる。(さっきのお返しだよ。)
「いたっ、」
ちとせの指に僕の唇を近付けて、(バカらしいと思いつつ)願い事をしながら吹き飛ばす。
「さ、これでいいでしょ。ちとせも片付け手伝ってよ」
「…え、うん。願い事したの?」
「………したよ」
キョトンとして尋ねてくる彼女に、僕は素っ気なく答えた。
…願い事をするときは、
そうでもなかったのに。
「ねぇ、何をお願いしたの?」
改めてちとせにその内容を聞かれて、よくよく恥ずかしくなった。
「…教えないよ」
我ながら、なんて恥ずかしい願い事をしたんだろうか。
「えー、ケチ!」
ブーブー文句を言いながら食器を片付ける君に、
ちとせの事だよ。
と、いつか素直に言える日が来ればいいと思った。
――――――――……
君と、ずっと…
continue…
はい、……あれ?
なんだろう、この書き切ったのに何故か残る敗北感は。
間違ってない?
私、間違ってないよね?
ではまた次回!
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