風紀委員長様!(完)
よくも
あなたは、同学年の……
しかも嫌いな男に、
ハダカを見られたことがありますか。
「最っ悪だ…。もう、お嫁にいけない……」
私は一人ぽつぽつと、それでも止まることなく通学路を歩いていた。
――幸い椅子の横に正座するような姿勢だったから、きっとあまり何も見えなかったと思うけど…――
(それでも屈辱的だ…)
いっそのこと、雲雀の裸も見てやろうか!と血迷ったけど、冷静に考えてそれは犯罪だ。(私は決して痴女じゃない。)
ふと、
〜♪
今の気分に相応しくない、軽快なリズム感の着うた。(何度か雲雀に校歌に設定されそうになったけど、その度に私は変えている。)
「(あ、委員会メール…)」
風紀委員会限定の、連絡や告知メールだ。大抵は、雲雀が敵地に乗り込んだとか、町内会で雲雀が暴れだしたとか、雲雀中心の話題が多いのだけど……………、
「今日は委員長が休みのため、本並盛中学校は休校とする」
今回も雲雀中心の話題だった。
雲雀が休んだから学校が休みになるのは、なにも初めての事じゃない。
雲雀が休んで目の届かない内に、風紀と秩序が乱れないための、私たち風紀委員からの細やかな贈り物である。
まぁハッキリ言って、細やかではないけどね。(草壁さんがそう言い張るんだから、仕方ない。)
…ああ、暇になっちゃったなぁ………。
空を見上げれば、暗雲とでも言えそうな雨雲が低く垂れていて。
(雨ふりそう………)
急いで今来た道を、引き返した。
……………。
「にゃーん」
…猫に行く手を阻まれるまでは。
「にゃうーん」
猫はもう一度、私を見上げて鳴いた。
…トラネコ、っていうのかな。色は普通のトラネコと違って、ホワイトタイガーみたいな白地に黒の虎模様だけど。
「…きみ、飼い主さんは?」
猫の視線に合わせて、私もかがむ。
もちろん返事なんて「にゃーん」に決まってるけど、一応聞いてみた。
「にゅうん」
あ、やっぱり猫語だ。
理解できそうにない。
ぽつぽつぽつぽつ、
雨足が増えてくる。
「…とりあえず、うちおいでっ」
まだ家までは距離がある。
急いで猫を抱えて、私は早い帰路についた。
―――――――……
結局急いだけれど、ビチョ濡れ。
猫のほうも不快そうに、貼りついた毛をその柔らかい肉球で拭っていて。
「た、タオル……」
自分より先に、猫の方を拭いてやった。
「にゃあー」
気持ちよさそうに目を細めているあたり、雲雀(の私にキスしたあとの満足げな顔)に似ている。
今までの記憶を辿って、ゲンナリして、
ちょっとムカついた。
が、この子に罪はない。
「とりあえずミルクかな」
温めたミルクを盛皿にいれて猫の前に差し出した。
しかし一向に飲もうとしない。
じとーっ、とした目で私とミルクを見比べていて、
「ぅにゃー」
結局飲まずに私の方へ来た。
(でも飲まないと、身体弱っちゃう……)
猫には悪いが、少々乱暴に飲ませる事にした。
ミルクに指を浸し、猫の口元に持っていく。(子猫とかにはこうして飲ませるらしいから。)
「にゃ、にゃー」
もちろん嫌がってたけど。
それでも何度かすれば、渋々ながらも舐めてくれた。(嬉しいやらくすぐったいやら………)
「んーっ、いい子!」
猫の頭を肩に乗せ、抱きつくように抱擁すれば、猫は意外にも嫌がらず、スリスリと首に擦り寄ってくるものだから。
「きゃ、可愛い!」
ついつい度が過ぎてしまった。
猫の頬にちゅうしたり、耳くわえてみたり。
猫の方もまんざらじゃないようで、くすぐったそうに目を細める。
そんなことを長い間繰り返していたから……
べろん、と唇を舐められたときも、そう不快感は感じなかった。
「んー……」
目を瞑ってそれを受け入れる。ザラザラとした舌の感じは慣れないけれど、こんな可愛い猫なら問題ない。
……可愛い猫なら。
問題は無かった。
――――――……
ボフン、軽い爆発音と共に、(いや、ハハハ……)
こんなベタな展開あってたまるかと思ったけれど。
「ちとせ…」
私に事実を曲げられるほどの力はなかった………。
なんとも嬉しそうな雲雀の顔。
と、私の冷や汗の量は比例する。
「よくもミルクなんて舐めさせたね」
馬鹿にしてるの、と雲雀は(笑ってるのに目が笑ってない)不気味な表情を浮かべて、私の頬を両手で挟む(ひぃぃっ)。
「咬み殺す……」
ああ、お決まりの…。
(てか待てまず服着てよ……)
―――――――……
そのあとは、皆様のご想像にお任せします。
ただひとつ、言っておきたいのは、あれでいて雲雀は、案外なにもしてこなかったということ。
(いやもちろん、最低限の事はされましたけど、ね)
――――――――……
僕としては、役得だった。
continue…
口移しでアノいかがわしい薬を飲んだヒロインですが。
もちろん口移しですから雲雀も当然摂取しているわけです。
…ただ量が少なかったから、効果が遅れたんだそうです。
とかなんとか………
へんに無駄な設定を(笑)
ではまた次回!
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