アブノーマルライフ!
第八夜
買い物は、
ひとりで行くに限る。
相手に関係なく食材や服を選べるし、何より、
時間という概念を忘れられるからである。
――――――――――……
「お願いします!」
「いやだね」
『僕も。』
朝から何度頼み込んでも、頑として自分の意志を曲げようとしない双子。
もうどれくらい頭を下げたことか、この非常識コンビに!
(この生活になって困ったことは、多数決をとるといつも負けてしまうということだ。)
『僕たちはね、世界で一番雨の日がキライなんだ』
「だから僕らは行かない」
キョウヤが私に人差し指を突き付けて、恭弥は私を鋭い瞳で睨み付ける。
─なるほど、理由は分かった。
「でも付いてきてくれないと困るの!」
今日はティッシュの大安売りの日だから、お一人様限定1つなの!
私一人じゃ1つしか買えないでしょ。
『…』
「…」
顔を見合わせて、怪訝な目を私に向ける。
自分でも、オバサン臭いことを言ってるなぁとは思うのだが。
「でも、私だって欲しいものが……、」
あるんだから。
つい本音がポロリ。
ああ、墓穴…。
同時に寄せられた双子の眉。
あちゃあ…、
こりゃ、もうだめだわ。
「ごめん、やっぱ一人で…」
「そんなことならもっと早く言いなよ。」
『仕方ないね、たまにはちとせの為に濡れるっていうのもアリか。』
二人とも残ったほうじ茶を飲み干したかと思えば、薄手のジャンパーを手にとって立ち上がる。
やっぱり黒に赤のラインがキョウヤで、青が恭弥。
「えっ、え…?」
突然なんだと玄関に向かう双子を目で追えば、
『早く立ちなよ。』
「僕らの気が変わらない内にね。」
「………あ、」
ありがとう!
素早く立ち上がって、玄関に向かった。
────…
のだが。
「これは失敗したわ…」
呆れにも似たため息。
「押さないでよ、」
『ちとせ、僕が濡れるでしょ。』
「あ、あのー、」
「君、近いんだけど。もっと離れてよ。」
『だから僕が濡れるってば!』
「ちょ、ふ、二人とも危ないよ…!」
おしくらまんじゅう状態。
私たちが何をしているかと言えば……
「そもそもなんで二人とも傘持ってないのよ!」
『僕たち雨はキライだって言ったでしょ。』
「外なんか出るわけないじゃない。」
だから、傘なんて必要なかったんだ。
つまり、
私たちは一つの傘に三人で入っているわけで。
大人用とはいえ、ものすごく窮屈なのは目に見えて分かる通り。
「ちょ、やぁっ、押さないで…っ」
「君どこから声出してるのさ。」
『そうだよちとせ、言っておくけど、君は今男ふたりに挟まれてるんだよ。』
「そんなこと言ったって……っ」
─ふたりとも近すぎ!
あの近寄りがたい恭弥も今はすぐ隣で肩が触れちゃってるし、
キョウヤなんかどさくさに紛れて私の腰に腕まわしたりして……、
「ちょっと、キョウヤ。」
『なにちとせ。』
「手、離してくれる。」
『……ちっ、』
あっ、今、舌打ちしやがりました?
「キョウヤ、いい加減にしときなよ。」
恭弥が彼を叱咤する。
やはり血族のいうことは聞くのか、大人しく離された腕。
油断の隙もあったものじゃない。
そうして私たちはスーパーへと着く。
─────────……
買い物へ行くだけで、この疲労。…大丈夫だろうか。
continue…
お買い物第一弾!
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