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秘密部屋
I miss you.
SSS












ちとせ、君を、迎えに来たよ。


ごめんね、突然、いなくなったりして。君の前から、消えてしまって。
ねぇ、ちとせ。
泣いてる、の。
参ったな、泣かせるつもりじゃなかったのに。
せっかくこうしてまた会えたのに、君は、ちっとも昔と変わらない。ああ、髪は少し伸びたね。
ねぇ、昔の君は、こんなに悲しそうに嬉し涙を流す子だったかな。
ちとせ。
変わらないね、変わってしまったね。僕たちは。

君は、十年前の約束を覚えているかな。覚えてる?
君の傍に、ずっと一緒に。
ちとせとのこの約束を僕はすぐに破って、君の前からいなくなったね。
僕が消えてしまった十年間、君がどうやって生きてきたのか、僕は知らない。
僕たちの空白は大きい。
時間はたくさんのものを変えるね。

僕は、ちとせに見合う男になるために強くなった。
君を守るため。
僕がいた並盛はいいところだったよ。
風紀委員にもなったよ、
部下もできたし、
隣町の意地悪な悪戯の首謀者も倒したよ。
強い人と修行して、
機械とも戦って、
それからまた強くなって、
負けそうにもなったけど、
そのたびに、君だけを、
守りたくて。

やっと、君との約束が果たせる準備が出来たんだ。
すごく長かった。
強くなったけどね、
少しだけ、寂しいって気持ちが分かったよ。
会いたいって気持ちも、
抑えきれないくらい、
分かったよ。


……でも、

君にはもう、君を守ってくれる人がいたんだね。
散々、振り回して、今更なことだ。
当然のことだよ。

…聞いて。
君に見合う男は、君の幸せを一番に考えてあげられる男だと思ってる。


だから、僕はね。


僕はまた君の前から消えるけれど、僕にとっての君は永遠に世界でただ一人だ。

僕たちがこれから長い間生きて、
君を想っていた十年と
君が泣いた十年が
どんどん僕たちにとって小さいものになっても、
この十年が無くなることは無い。



ねぇ、そうだろう。


さあ、泣かないで。
君を泣かせたくて戻ってきたわけじゃないんだ。
笑って欲しかったんだよ。


そしてね、
怒って欲しかったんだ。

どうして置いていったのって怒って、もう知らないって叫んで欲しかった。

そうしたら、僕は、
もう少し、強く生きていけたかも知れないからね。

僕のわがままだけれど。
君をひとりにした罪の証が欲しかったんだ。
君には相応しくないって証拠が、諦めの悪い僕には必要だったんだよ。


でもね。
だから僕はこれからも、
君の優しさに、
弱さを殺せずに生きていくんだ。


ねぇ、ちとせ。


幸せにならないと承知しないよ。


僕をここまで丸くしてしまったんだから、ね。





お願い。

もう、
後ろは振り向かないで。







僕も、もう振り返らない。









I miss you.

(後ろは振り向かないで。涙は見せたくないよ)
(僕も振り向かない。もう君しか見えないから)











なんか切ないのが書きたかったんです。非ハッピーエンドが書きたかったんです。結局沈没でした。

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あきゅろす。
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