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執事雲雀(完)
お友達!







キキィッ

タイヤが唸りを上げて、校門前に停車する黒のリムジン。
よし、予定どおりお嬢の出てくる5分前に到着。

彼女が来るまでの、もどかしくて楽しみな時間。

お嬢が帰ってきたら何を話してやろう?
13点の答案用紙?
今日入ったおいしいケーキ?
それともディナーのメニューから?



そんな事を考えていたら、ガチャっとドアが開いた。

「おかえり、お…「まあっ!なんて素敵なバトラー様なんでしょう!」


「……」


「わぁ本当!うらやましいですちとせさんっ」

「えへへ、そうかな?」

3人(一人はお嬢)の声に驚く。

急いでバックミラーを覗くと、そこには得体の知らない女が二人も増えていた。


「…お嬢、こちらの方々は?」

一応丁寧な口調で聞くと、聞いたお嬢ではなく知らない女が勝手に答えだす。


「私、ちとせさんのお友達の西園寺伊織ですわ」
「同じく、ちとせさんのお友達の三浦ハルですー!」

「ふふ、そういうこと!雲雀、今日はうちに遊びに来てもらうんだよ!」


「…そうでしたか、よろしくお願いします」

なんとも素っ気なく答えて、急いでこいつら追い出してやろうと誓った。
(だってお嬢のためのケーキをこいつらに出さなくちゃいけないなんて。)




「雲雀さーん!ミルクもう少しくださいな」

「かしこまりました」

「はひっ雲雀さんっ、何か拭くものをくださいっ」

「こちらをどうぞ。」


「雲雀さん、ケーキおかわりいただける?」

「すぐお持ちいたします」

……………。

僕…今、色々とキレそうなんだけど。

屋敷に上がり込んできた女たちは、必要以上に僕を使ってきた。(特に西園寺家のやつが)

僕はお嬢の、ちとせだけの執事なのに。


それでもここでキレたらお嬢が怒るだろう。(しまいには「雲雀キライ!」なんて言われたら……)

自分で考えて血の気が引いた。

それからも馬車馬のようにこき使われて、時々隠れて僕専用のサンドバックをトンファーでめった打ちにしてやった。(破壊欲が溜まって、お嬢に何かしないように旦那様がくれたもの)

時間が経つのが、永遠的に感じられた。



「ではそろそろ、帰りますですっ」

「そうねぇ、(雲雀さんと)別れるのはつらいけど…」

「あはは!いつでもまた来てよ!」


やっと、糞ガキが帰るみたいだ。

…はぁ、つかれた。
ニコニコと見送るお嬢に、やっとゆっくり出来ると安心。


する手前で、

「雲雀さーん!うちで働きませんことっ?」

……いきなりとんでもないことを言ってきた馬鹿がひとり。(西園寺め、まだ残ってたのか)。

もう僕、こいつ咬み殺していい?


仕込みトンファーを出しかけた腕を、すばやく誰かに止められた。

考えるまでもなくお嬢だけど。


「そりゃダメだねー。私の執事は雲雀しか出来ないから!」


そういって笑ったお嬢に、なんだかものすごく、負けたような敗北感と嬉しさが込み上げてきた。
(今すぐに君を抱き締めたいんだけど…。)


だって、僕しか出来ないってことは、僕以外いらないって事でしょ?

ぽやん、と満悦な気分に浸っていたら、そう残念だわ、といって車に乗り込む糞ガキが視界に入った。(早く帰りなよ)


さっき抱き締めたくなった衝動は抑えたけど、やっぱりお嬢の言葉が嬉しかったことを伝えたくて、ひとつ、彼女の頬に唇を落とした。



―――――――――……


ほっぺじゃなくて、もっと……。




continue…

お嬢抱き締めたーい!雲雀でしたー。
なんか最初に考えてた感じとエンディングが変わってしまいました。
友達にいわれたことをちゃんと聞く雲雀に嫉妬お嬢を書きたかったんですけど……ね。
いっか。次回、骸が出せたらいいなぁと思ってます。

ではまた次回!

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