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執事雲雀(完)
2月の季節







「あ、あいあむ…ぺん?」
「違うでしょ」

「ひーいず、バカ執事!」
「…咬み殺すよ?」

「ぎゃっ」



朝からそんな会話ばかりだった。

なんでも、英語が究極に出来ないお嬢のために、学校の先生がくれた問題集をやっているらしい。



時刻は昼過ぎ。

お昼ご飯を食べるのも忘れて集中していたお嬢に、少し同情を誘われてしまったのがいけなかった。


「しー、いずぼーい?」

こんなに英才が無いなんて、思わなかったんだ。


はーあ、何度目のため息かも分からないため息を吐く。

お嬢だって、精神的にドンヨリしてるに違いない。
(だってあれだけ英才皆無なんだもの。)


……あ、そうだ。
アレがあったな…。


彼女が勉強に集中して気付かないうちに、こっそり部屋を出る。

僕はとっておきのものをキッチンより頂戴してきて、お嬢の座る勉強机の隣に置いた。


「はい、これ。一旦休憩したら?」

「!」

途端に、彼女の表情に花が咲く。

「チョコだっ!」

飛び上がらんばかりに椅子から立ち上がって、小テーブルに駆けてくる彼女。


「雲雀、最高!」

もちろん、彼女の好きなベアー&ベアーのチョコレート。
至極の笑みでチョコレートを頬張る少女に、自然とニヤけてしまう頬。



でも彼女の行動で、それは一気に消滅した。


「雲雀、あーん」

ニコニコと、フォークの先に刺さったクマ型のチョコレートを差出してくるお嬢。


これは、なに?


いやもちろん、食べろと言われているのはわかる。


ただ初めての事に、戸惑いが隠せない。

もちろん生まれてこのかた「あーん」なんて、された事があるはずもなく。(幼少期は除いて、だ。)


いやいや待って、お嬢がしてるんだから食べるべきじゃないの?


ああ違う、僕は執事だよ?お嬢と同じフォークで食べるだなんて……
そんな嬉しいハプニング、あっていいはずない…

って、そうじゃないでしょ。
これが嬉しいハプニングだと思っている事自体がいけないんだ。


そんなことを悶々と考えていたら、痺れをきらしたのか、お嬢が怪訝な顔で呼んできた。


「雲雀ー?」

食べないの?甘いもの嫌いなんだっけ?


訪ねてくる少女に、さらに焦ってしまう。


うわ、どうしよう…
(お嬢、かわい…い…)
(…え!?い、今僕、何を思った!?)


迷って迷って、焦った挙げ句に、

ぱくんっ

少々腰を曲げて、チョコレートを口に含んだ。

それはあまく、とろけてしまうようなチョコで。


「ふふ、おいしい?」


笑いかけてきた彼女に、


「……ぅ」

「ありゃりゃ?」


不覚にも真っ赤になってしまったのは、今の季節のバレンタイン、という言葉が頭によぎってしまったから…。



―――――――――……


別に、そんなつもりじゃなかったんだろうけど…

正直、嬉しかった。




continue…

えー…ハイ。
バレンタインねた!
ちょっとね、ちとせ様と雲雀の間に関係らしきものが!
ってか雲雀が一方的に意識しちゃってるだけです。
あー、ちとせ様と雲雀の年齢差考えてない……。
お好きな年齢で…!
10年後ってのもアリかと……!
ではまた次回!

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