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鍵をちょうだい、


※古泉くんが軽く病んでます。








暗い暗い闇。いや闇ではないな、と僕は少しだけ笑ってみせた。
まるでどこぞの誰かが作り出す閉鎖空間のようだと思う。
混沌の象徴のような、灰色の空。
もう、何も見えないような気さえする。
どこか浮遊感があり、あてもなく彷徨っている気もする。

「ああ……本当に。」

このままどこまでも堕ちてしまえば、楽なのだろうか。
彼女によって与えられた「古泉一樹」という役を演じるのも疲れてしまった。
戻れるならば、三年前に戻りたい。世界も神も機関も関係がなかった、あの頃に。
涼宮ハルヒがとりまく世界は確かに楽しい。
何をすることがなくてもみんなが文芸部に集まって、涼宮ハルヒや長門有希や朝比奈みくる、そして彼がいて。
けれど、そこはどこか鳥かごのよう。
彼らも僕も、彼女という鳥かごからは出ることが出来ないのだろう。
誰か、鍵をちょうだい。ここから逃げるために必要な。

「おい、古泉?」

誰かが僕の名を呼ぶ声で、目が覚めた。
周りを見れば、夕日に赤く染まる教室に、同じく夕日で赤く染まった彼が僕を覗きこんでいた。どうやら寝ていたらしい。

「……涼宮さんたちは帰ったんですか?」
「まあな。安心しろよ、今日はご機嫌だぞ。」

一体何をしたのか、どこか自慢げなキョンくん。
僕が眠っている間に何があったのだろうか。
考えるのも面倒で、僕はいつもの笑みを浮かべて「そうですか、有難う御座います。」と言葉を返した。
キョンくんはその言葉に(もしくは僕の表情に)微かに眉をひそめた。
あの表情の変化に乏しい長門有希の表情に気付くくらいだ。
何か僕の作った表情に思うことでもあったのだろう。
しかし彼が口にしたのは、まったく予想外の言葉。

「そういえば、結構うなされてたけど大丈夫か?」
「うなされてました?」

涼宮さんの前では気をつけないといけませんね、と微笑むとキョンくんは少し複雑そうな表情をした。
そして、

「無理すんなよ。」

その一言でどれほど僕が救われるのか、貴方は知らないでしょう?
にっこりと笑ってお礼を言うと、キョンくんは「なんだよ、急に。気持ち悪い。」と少し焦ったようにそっぽを向いた。
それをどこか微笑ましく思い、僕はクスクスと笑う。

「さ、帰りましょうか。」
「……そうだな。」



鍵をちょうだい。鳥かごから出ることが出来るような。
鍵をちょうだい。貴方をちょうだい。



――――――――――――
「鍵」=キョンと。そう考えていただければ幸いです。

by こあ   2009/04/06


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