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ファンタの味
第9話






『部長と幸せになれよ』


今のリョーマの頭のなかは先程桃城が放ったその言葉でいっぱいだった


― 確かに部長に抱きしめられた

― けど…けれど…俺は部長が好きな訳じゃない。


手に持つ資料が先程よりもとても重たく感じられる…
今すぐ立ち止まって、この重い資料を……気持ちを下ろしたい


やっとこさ着いた第二資料室の扉を開けると奥のロッカーに資料を詰めていく

1つ1つ丁寧に並ぶ資料…
ぐちゃくちゃになった心…

重い資料を下ろした身軽さ
まだまだ重い……心


― 俺はどうすればいいの?


誰一人としてリョーマの心の問いに答えるものはいなく、ただ心中で虚しく響く。


刹那――…


ガララララと小気味の良い音をたてて資料室の扉が開いた
リョーマが扉を見るとそこにはひそかに憧れを抱く部活の先輩達が2人いた。


「越前か」

「久し振りだね」

「ぁ……どもッス、部長.不二先輩」


片方は今回桃城に殴られた原因である手塚と
青学テニス部の天才と言われている不二

二人の手にも資料があり奇遇だな…なんて思う
二人はロッカーに寄ると資料を着々と詰めていき、あっという間に詰め終わってしまった

その早さにポカンと口をあけてみていると急に、不二のクスクスという笑い声が聞こえ思わずムッとした顔で睨む

そんないつも通りの二人を余所に手塚はいつもより険しい表情でリョーマを見つめる。

その目線の先には……リョーマの微かに腫れ少し赤く染まっている頬に注がれていた

不二はそんな手塚の様子に気付くと同じ様にリョーマの頬を見、驚き心配そうな表情になる

そんな事に気付かないリョーマは黙り込んだ二人に息苦しさが沸き上がる。
唯でさえ二人は黙ったり怒ったりすると恐いのにそれが今は自分に向けられているから……そんな事もあったのかもしれない


「越前…その頬はどうした?」

「っ…!?」


言われてやっと気付く
頬に手で触れれば微かに伝わる熱
触れた時の一瞬の痛み
それは先程の出来事をリアルに思い出させる


「別に何でも…」

「無いわけないよね?」


不二が追求してくる
そんな先輩の威圧感に普段は気にしないリョーマでも黙り込む


「越前、屋上で話した事を覚えているか?」

「屋上…」


屋上で話した事…
部活を休むといって
その理由をいって
部長に抱きしめられて

その後に…


『越前は一人でなんでも抱え込みすぎだ
何か辛い事があれば頼っていいんだぞ?俺だって相談にいつだってのる。
俺では役不足なら不二や大石、菊丸や河村だって、他にも色々な奴らがいるんだ』

『越前はもっと俺達を信頼しろ
仮にも仲間なんだからな』


そうだ、そう言われたんだ
抱え込みすぎだって
仲間を頼れって
信頼しろって……


「…さっき……」


不二は話がわからないにも関わらず真面目な顔でリョーマの紡ぎ出す言葉一言一言を聞き入れる


「桃先輩にあって…殴られました」


手塚の眉間がキツクよる

あれだけカリカリしていた桃城と対面してしまえば何かが起こるのは当たり前だ…

手塚はそんな事に頭が回らなかった自分がふがいなく思った


「そして………」

「「越前…」」


手塚と不二の声が見事にハモる
二人の目は驚きただ見開かれていた


「部長と…」


ツウ――


「…部長と……幸せになれって……」


ポタリ…


リョーマの瞳から初めて涙が流れ落ちた
ボロボロと溢れてくる涙はとめどなく流れ…顔を俯かせる


泣いた事などあまりないのだろう、リョーマはただ一人で涙を流す

すると手塚が寄って来て…


ギュッ


リョーマの……小さな少年の身体を自分の腕の中におさめる
不二はその傍らでリョーマの頭を撫でる…



辛かったね…

もう我慢しなくて良いんだよ



そんな意味を込めて。
リョーマはそれが伝わったのかのように背に手を回し、ひたすら涙を流した












後書き


何だか文が適当になってきてますね(;^_^A
ここで不二が初登場!
この不二はこのお話で結構大切な存在になりますから……


そして本当に最終回に向かってる模様




結末は当初と少しずつずれてきましたよ〜
不二は最初は重要な人物になる予定はなかったし手塚もこんな事にまさか2回もつかう予定はなかったし……



08/04/10

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あきゅろす。
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