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ファンタの味
第10話






一体どれくらい涙を流したのだろうか

あれから結局日が傾き沈むまでただひたすらと手塚の腕の中で泣いていた
いままで抑えてきた分を一気に解き放つかの如く……

涙が枯れるとリョーマは腕からスルリと抜け出し顔を上げる





その表情はスッキリとした笑顔――――ではなく、未だに何か抱えているような沈んだ表情





苦しみという渦から抜け出せていないような……


「越前―…」

「なんスか?」


どちらともなく漏れた言葉にリョーマは普段通りの口調で返す
もしやこの表情は無意識なのかもしれない…
そう思うと二人はいたたまれない気持ちになる


自分達はこの少年の重荷を少しも分け与えてもらえないのか……と


「他に何か言う事はない?」

「……」

「乗り掛かった船だ、最後まで付き合うさ」


二人の心優しい台詞が
リョーマの心に何度も響く

けれどそんな二人に対して申し訳なさが生まれ始めた……が


「……もう疲れました」


思わず本音を漏らしてしまう


そして唐突に解き放たれたリョーマの台詞に二人は一瞬戸惑う

《疲れた》

いったい何に対してなのか……


考えなくともわかってしまう
この 疲れた はきっと…


「恋愛も……何もかも…」




















「ねぇ手塚」

「……」


帰り道、方角が同じ不二と手塚は共に帰宅していた
リョーマはというとあれから一言呟くと直ぐにいつも通りに戻り…いや、いつも通りに振る舞いそのまま一人で去ってしまった


「越前と桃の事…どう思う?」


いつもラリーをしていた

いつも仲良く帰宅していた

いつも楽しそうに笑いあっていた――…

そんな二人が何故こんな事になったのかは知らない
けれど…

二人の想いが本物で…嘘偽りのないモノだって事は手塚や不二も……
他の人達だって知っている


だからこそ…こんな終わり方


「絶対にダメだよ…こんなの…」

「あぁ…」


けれど……
脳裏に浮かぶのはリョーマの最後の一言

『桃先輩の事…もうキッパリ忘れます』

苦汁の決断であっただろうその表情は先程にもまして暗く…微かに瞳が揺れていた


「……手塚、越前の事好き?」


不二のいきなりの質問に手塚は驚く

好きか?

そう聞かれれば確かに好きだ
けれどそれは……一人の人間としてではなく後輩として、仲間としての感情

リョーマの事をこうやって気にかけるのも大切な仲間だから…
そうゆう意味での好きだから


「あぁ…好きだな」


そう答えれば不二は小さく笑い 少しやけちゃうなぁ とぼやいた

次の瞬間…例えるならば刹那の瞬間
夕日に照らし出された二つの影が重なる

影が再び二つになると不二はニッコリとした表情で


「僕たちが恋のキューピッドになろっか…」

「…それは幸せのおすそ分けってところか?」

「うん…」


二人にもこうやって、幸せになってもらいたいんだ――…



最後の言葉は夕焼けの空に静かに吸い込まれていった。













後書き




やっと10話〜


そしてこんかいは無茶苦茶だ

前に手塚の思いで《自分も好きだからか…》みたいな事を書いちゃったからそれを恋愛の対象じゃないって事にするのが大変というより無茶苦茶だった




そしてさりげなく今回は塚不二風味




塚不二は結構好きなので書けて嬉しいです!





のこり約5話


皆様どうか最後までお付き合い下さいm(._.)m




08/04/16

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あきゅろす。
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