「ねぇ桃、今日の放課後ちょっと屋上に来てもらっていい?」
昼休み、不二は桃城の教室まで行きそう言う
そんな不二の回りは大量の女子がいて、ほぼ奇声に近い声を上げていた。
桃城はというと、それを少しうっとおしいと心中苛立たせていた
「別にいいですけど…今じゃだめなんすか?」
「うん……放課後じゃなきゃ…ね?」
それだけ言うと じゃぁね と一言放ちのんびりと教室を後にした。
放課後――…
不二は屋上に繋がる鉄扉を開く
少々重いソレは、ゆっくりと開き少しずつ光が差し込んでくる
「まだ来てないか」
呼んでおいた彼はまだ来ていなく、小さく苦笑を漏らす
桃城がまだ来てないのも当たり前、3年の教室の方が屋上に近い上に、不二のクラスは今日はいつもより数段早く終わったのだ…。
暫くすれば鉄扉が開く音が不二のもとまで聞こえてくる。
振り返るとそこには自分の待ち人である桃城がたっていて、不二は ニコリ と微笑んで招いた
「唐突だけど桃、君は越前と付き合っていたよね?」
不二の顔は一瞬にして厳しい表情へと変わる
普段はただ微笑んでいる眼も今は厳しいもので、少し威圧感を感じる
「はぁ……でも」
「なんで休んでるか知ってるよね?」
桃城の言葉に自分の言葉を重ねて遮る
それも疑問文ではなく半肯定文で…
そんな言葉に桃城は言葉がつまり、何も言えないでいる。
「越前は桃の事で…悩んでるんだよ?苦しんでるんだよ!?」
「んなわけっ」
「ないって言える?
現に越前は君との喧嘩以降から部活に来ない」
「けど越前は部長とっ!」
付き合ってるから…
俺なんかの事を悩む筈がないんだ…
越前の心-ナカ-には俺が入り込む隙間も…資格もない…
「手塚となに?」
言葉1つ1つを苦しみながら紡ぎだす桃城に追い撃ちをかけるかのようにその先の言葉を不二は追求する
そんな問いに、桃城は只々苛立つ
何故自分を追い詰めるような事をこの人は言うのか…
何故この人はリョーマの肩をもつのか……
「部長と…付き合ってるんですよ!!
俺は遊び…捨てられたんスよ!!」
「越前がそう言ったの?」
「言ってません……けど二人は抱き合ってッ」
「桃ッ!」
不二が怒鳴る
その声は静まった屋上に妙に響き…こだまする
不二が怒鳴るなんて……感情をあらわにするなんて滅多にないから…
苛々としていた桃城もソレがおさまる
けれど不二の怒りは一向におさまる事はなく…
「桃は越前の事本当にわかってるの!?」
リョーマの事…
そんなのわかっている
誰よりもリョーマの事は知っている自信だってある
友達としても、仲間としても、恋人としても……
「わかってますよ
あいつは常に上を見ていてプライドが高くて痛いとこをズカズカ刺してくる、けど妙に傷つきやすくてだんまりしたり一人で抱え…こんだ…り……ッ!!」
「ちゃんと…わかってるじゃない」
不二が顔をいつもの様に和らげ柔和な笑みをうかべる
そうだ……リョーマは、越前リョーマは傷つきやすくて
黙り込んでしまうんだ
ちょっと喧嘩して怒鳴れば直ぐに生意気な表情が消えて黙り込む…
けれど…
「桃、越前と手塚は付き合ってなんかないよ?」
「……」
「だって手塚は――――――――――――…」
「ッ!?」
不二から放たれた言葉は今の桃城には残酷以外のなにものでもなく
ただただリョーマの事を思い続けた――…
― 越前、俺、お前の事ちっとも理解してなかったな…
頬を涙が優しくつたった……
『だって手塚は僕と付き合ってるんだもん…』
後書き
リョーマでてこね〜
前回のお話で手塚と不二が付き合ってるような事をさせましたがここでははっきりと言わせました♪
取り敢えずテーマは『リョーマの思いを伝える』というところです
それに加えて『塚不二をハッキリさせる』も……
さて、残りはあと4話程になりました
着々と近づく終わりに何故だか涙が流れそうです……(T-T)
08/04/17
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