ファンタの味 第1話 付き合って2ヶ月 大抵のカップルはキスなんてとうに済ませその次の段階に進んだりする程の月日 しかしこの青春学園中等部男子テニス部2年桃城武と同じく男子テニス部期待の生意気なルーキー越前リョーマはその先どころかキスにまで進んでいなかった いや、進むことが出来なかった 何故ならば…… 「えちぜ〜ん、キスしていいか?」 「…ヤダ」 「お前そればっかりなのな〜」 リョーマが頑に桃城とのキスを拒み続けているからだったりする 何故かは桃城にも不明 だからこそどうしようにも手が出せなく、言わばお手上げ状態だった 桃城は はぁ と溜め息を1つ溢すと読んでいた漫画本をパタリと閉じた それにリョーマが気付き、飲んでいたファンタを口から離し桃城に目線を合わす 暫く、堅苦しい時が流れた 視線は合うのに、合っているのに、喋れない…そんな時が―― しかし桃城はそう気が長い方ではなく、寧ろ短気で 直ぐにそんな時も終ってしまう 「なぁ越前、なんでそんなに拒むんだよ。理由位…教えてくれよ」 「……」 「なぁ…」 思わず視線をそらしてしまう。 そんな些細なリョーマの行動に、桃城は頭にきてしまった。 そして桃城の頭の中では ― 本当は俺のこと好きじゃねぇんじゃねぇか? ― 遊びだったってわけか? ― ……お前、なんなんだよ… 等と相手を傷付ける言葉しか浮かばなくなっていた けれど次の瞬間、その最悪な言葉は桃城の口から無償にも解き放たれてしまう 「お前…俺のこと好きじゃないんだろ?遊びだったんだろ?だからキス出来ねぇんだろ? 最低だな、そんな奴だと思わなかったぜ」 「――っ!?」 そんな言葉にリョーマは只でさえ大きな瞳をこれ以上は開かないと思える程開き、うっすらと涙を宿した ― そんな訳ない 今目の前にいる桃城が恐くて、そんな否定文すら述べられない そしてそれがまた桃城を怒らせる、という最悪の悪循環となる 「出てけよ…」 「……」 「とっとと出てけよ!! お前なんかもう知らねぇ、顔も見たくねぇ」 ズキリ リョーマは自分の心が痛むのを感じた 痛すぎて、痛すぎて…… 心の痛みが強すぎて涙すらも出てはこなかった ただ胸が苦しい、締め付けられるように苦しかった…… 08/02/12 [次へ#] [戻る] |