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悪魔のホロスコープ
★エピローグ★ 本日のホロスコープ、最高!
『ハッピーバースディっ!!大和ぉぉ〜っ!!』
 盛り上がる、ラジュたちのお屋敷のリビング。リーシャたちの飾り付けも甲斐あって、リビングでは、大和の誕生日パーティーが開かれていた。
「はいっ!大和っ!これっ、私からの誕生日プレゼントっ!」
「あっ、どうもすみませんっ」
 大和がリーシャから、きれいに包装のされた、小さな箱を受け取る。
「何々〜?何が入ってるのぉ〜?」
「えぇ〜っとっ…」
 横から覗くレントに急かされながら、大和がリボンを解き、包装紙を取って、箱を開く。
『んっ?』
 箱の中に入っているのは、少しイビツな形の、金色に輝く石のようなもの。見慣れないその石に、大和とレントが、同時に首を捻る。
「何ぃ〜?これっ」
「流れ星を取って来たのっ!」
「あれって無断で取っちゃいけないんじゃっ…」
「うっさいわよっ!」
 顔をしかめ、こっそりと呟くレントに、リーシャが勢いよく怒鳴りあげる。
「うぅ〜んっ…」
「んっ?」
 レントの横で、ひたすら流れ星を見つめている大和に、リーシャが目を丸くする。
「大和っ?」
「ふっはぁっ!まさかっ…!この光の玉で、聖なる光を放って、魔物を倒すんじゃっ…!」
「はいっ!違ぁぁーうっ!」
 目を輝かせる大和に、いつもの調子で、強く否定するリーシャ。

『ハッハッハぁ〜っ!お金持ちの僕らからは、高級ナベ百個を用意させてもらったよぉっ!』
「明らかにいらんなっ…」
 自慢げに山程の鍋を見せるガイとセイに、冷たく言葉を吐くラジュ。
『ではっ、僕らのリコーダー演奏をここでっ!』
「やめいっ!」
 リコーダー演奏を始めようとする双子を、ラジュが必死に止める。

「まぁ〜ったく、せっかく来てやったっていうのに、うるさいだけねぇ〜っ」
 リビングの様子を見渡しながら、並んだご馳走を頬張り、呆れた様子で呟いているメーナ。
「誰もあんたなんか呼んでないわよっ」
「何ですってぇっ!?」
 そこへ口を挟むリーシャに、メーナの表情が一気に引きつられる。
「呼んでないからっ、とっとと帰りなさいよぉっ!」
「あんたが帰ればいいでしょっ!?」
「ここは私の家なのよっ!!」
 火花を飛び散らせて、いつものようにリーシャとメーナの喧嘩が始まる。
「リーシャとメーナ…クリスマスを一緒に過ごすなら、どっち…?」
 喧嘩を始めた二人の横で、パーティーには似合わないテンションで、ひっそりと天秤を揺らし始めるロキ。
「うぅ〜ん…究極の選択っ…」
「そうだねぇ〜っ」
 ロキの言葉に、レントがうんうんと頷く。
「やっぱり僕っ、どっちも嫌でっ…!」
『ああんっ…?』
「ひぃっ…!」
 笑顔で答えようとしたレントが、背後に迫る二つの殺気に、背筋を震え上がらせる。
『どっちも…何ですってぇっ…?』
「ひぃぃぃ〜やぁぁぁぁ〜〜っ!!」
「どっちも嫌…イコール死、と…」
 リビングに、レントの悲鳴が響き渡ると、ロキは参考にするように、ひっそりとメモを取った。

「魚ンチュっ!」
「ギョギョっ!」
 ご馳走の並ぶ机の上で、使い魔の魚ンチュを飛ばせて遊んでいるのは、ルカ。
「部屋ん中で魚、放し飼いにすんじゃねぇーよっ、クソガキっ」
「むっ…!」
 人間界に戻り、またも子供の姿に戻っているキリアの言葉に、ルカが頬を膨らませる。
「自分だってガキのくせにぃっ!」
「おっ俺はガキじゃねぇーよっ!」
「どう見たってガキじゃんっ!!」
「んだとぉっ!?」
「ああぁ〜っ、もうっ」
 勢いよく言葉をぶつけ合うルカとキリアに、近くに立っていたラジュが、頭を抱える。
「くだらないケンカはやめっ…!」

―――パシャっ!

「……。」
 横から放たれる白い光と、聞こえてくる、もう聞き慣れ始めたシャッター音に、ラジュが一瞬にして、顔を引きつる。
「トージっ…?」
「怒った顔も素敵よぉ〜っ!ハニーっ!」
 鋭く響くラジュの声に、カメラを構えたトージは、陽気な笑顔で手を振った。
「ねっ!ヒショーっ!」
「俺に振るな…」
 トージに同意を求められたヒショーは、いかにも関わりたくないといった表情を見せている。

「みんな楽しそうだねぇっ、レオくんっ」
「ああっ…」
 そう言いながら、自分もどこか楽しそうに笑うココロに、レオが穏やかな笑みを向ける。

「大和さん、再生紙いただけます?ムシャムシャムシャっ」
「へっ?あっ、はいっ」
 ご馳走には目もくれず、再生紙をむさぼっているミブキに言われ、大和が流れ星を置いて、その場を立ち上がる。
「えぇ〜っと、再生紙、再生紙っと…」
 騒々しいリビングの隙間を縫って、再生紙を探す大和。
「ティッシュ…」
 とりあえず紙類を探していた大和が辿り着いたのは、いつもリビングに置いてある、ティッシュの箱であった。
「ティッシュって…何紙かなぁ…?」
「はぁっ…!」
「あっ、ラジュさんっ」
 ラジュが、ティッシュの箱を見て首を傾げている大和のもとへやって来ると、近くのソファーに深々と腰を下ろした。
「うるさいっ…うるさすぎるっ…」
「アハハっ、いいじゃないですかぁ?日常が戻って来たって感じでっ」
「嫌だ、こんな日常っ…」
 がっくりと肩を落とし、本気で嫌がるラジュ。
「……っ」
「んっ?」
 そんなラジュを見て微笑む大和に、ラジュが眉をひそめる。
「何がおかしいっ?」
「あっ!いえっ…!」
「ったくっ…」
 呆れたようには言いながらも、微笑む大和のその表情に、ラジュもそっと笑みを浮かべる。
「ガメェっ!」
「んっ?」
 そこへ聞こえてくる唸るような声に、ふと振り向くラジュ。
「ガメェェェっ!」
「どわああぁっ!」
 ラジュの顔面めがけて飛んで来る瓶ゴンを、焦ったように声を出して、必死に避けたラジュが、そのままソファーごと、後ろへとひっくり返る。
「ラジュさんっ!?」
「痛たたたっ…」
 ゆっくりと起き上がるラジュを、心配するように駆け寄る大和。
「ガメェっ…」
「瓶ゴォ〜ンっ!」
 力なく床へと落ちた瓶ゴンに、レントが泣きそうな表情になりながら駆け込む。
「ほぉ〜らっ!イチャついてないでっ、とっととケーキ食べるわよぉっ!」
「リーシャっ…」
 ラジュに瓶ゴンを投げたと思われるリーシャの言葉に、ラジュが強く拳を握り締め、怒りにその唇を震わせる。
「お前ら全員っ!とっとと星魔界に帰れぇぇぇっ!!」
 立ちあがったラジュが、怒りのあまり、皆に叫ぶ。
『やだよぉ〜っ』
「んなっ…!?」
 声を揃えて戻って来る返事に、顔を引きつるラジュ。
『だって、人間界、気にいっちゃったんだもぉ〜んっ!』
「あのなぁっ…!!」
「アハハっ…!」
 新しい王様の悩みは、まだまだ、尽きそうにないのであった。




「ふぅ〜っ」
 騒がしいパーティーが、まだまだ続いている十二月二十一日の夜。皆がリビングの床に無造作に寝転がり、寝静まり始めた頃、大和は一人、リビングを抜け、屋敷の屋上へと上がり、座り込んでいた。
「……。」
 よく晴れた冬空に、星座が輝いている。
「ほらっ」
「へっ?」
 そんな大和に横から差し出される、湯気の立った一つの湯呑み。
「ラジュさんっ!」
 差し出したのは、何とラジュであった。
「ラジュさんがいれたんですかぁ?」
「誕生日プレゼントになっ」
 大和の問いかけに答えながら、ラジュが大和のすぐ横へと座る。
「んっ!美味しいですっ!」
 湯呑の中のお茶を一口、口の中へといれた大和が、嬉しそうな笑みを零した。
「当然だっ」
「アハハっ!」
「……っ」
 偉そうに答えるラジュに、さらに笑う大和。笑い声を立てる大和に、ラジュもそっと笑みを浮かべる。
「……。」
 空を見上げたラジュが、大和の肩に、そっと寄りかかる。
「ラジュさんっ?」
「来年も再来年もやろうな、パーティー…」
「……はいっ…」
 ラジュの言葉に、しっかりと頷く大和。
「十年後も二十年後も…」
「はい…」
「百年後も二百年後も…」
「それはちょっと自信ないですけどっ…」
 大和が、苦い笑みを零す。
「ずっとっ…」
 星の輝く空を見上げ、ラジュが微笑む。
「ずぅーっと、一緒に居ようなっ」
「はいっ!」



 本日のホロスコープ、最高。



 ―――  END  ―――



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