sweets=scout&other= 動揺向かう様無(戯れ言・零崎×柘植) そもそもが間違ってたんだ。 「普通」であることが幸せだ? 自分はそれで満足していない、と。 それ自体を全否定しなければ、俺は死ぬってこと。 「……。」 三点リーダの続く静かな空間。 喋らないのか 否 喋ることができないようにされているのだ。 この時代、暗い部屋に閉じ込められ、挙句の果てにガムテで人の手足や口を封じるのは、全くもって危険になったという証であろうか。 確かにこの状況は平凡では無いから面白い。 だが、非常に危険だ。 死ぬなら楽なのがいいよなぁ…、死ぬって決めたくはないけどさぁ。 「よぅ、目覚めた?」 「……。」 話しかけられたって返せるわけがない。 空気も吸えないものなのに。 「まぁまぁ、そー睨むってなよ。死ぬ姿は美しい方がいいだろ?」 死ぬ、完全予告を受けた。 この後、殺される。 静かに汗が手に滲む。 本心では殺されたくないと確かに感じてる。 「ほら、な。笑えよー。」 頬をつままれる。 反抗もままならない。 「 、あのまま死にたかったか。そういう趣味ね、OKOK。受け止めてやるぜ。」 最期を思い出す。 自分は死んだはずだ。 目の前の奴に、コインを貰って。 殺されたはずだ。 自分は既に、ならば何故? 此処に居れるのだ? 死んだ、鮮血のなか、赤のなか自分は。 傷跡がふさがっているのは何故? サヨナラを言われた奴にまた会うのは何故? 疑問が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。 「生きたい?な。生きたい?」 生きる、今更になんて綺麗な言葉だと感じる。 必死に首を縦に振る。 生きてぇよ、生きる。 生きなくちゃ、ナニモテニナイ。 「んー、つまんねぇな。うん、つまんね。」 横暴な、なんて横暴な。 音が裂けるように口に当てられたガムテを剥がされた。 「ツッ!!」 「おー、顔が良く見えんな。」 抑揚のない声。 聞こえだした心臓音。 「ん。やっぱ。ダメだよな。」 「な、…何が。」 「差別だよ、好きでも差別はしちゃぁいけないってこった。」 「つまり、つまりか…。」 不思議と落ち着く。 ああ、これが殺される猶予というものか。 「殺して解して並べて揃えて晒してやんよ」 ナイフが見える。 暗闇でもよく映えるナイフの銀。 それから 「殺して解して並べて揃えて晒して…愛してやんよ」 声に出ないほどの痛みと共に時が止まる。 無抵抗の心臓に一突き。 無抵抗の身体にかかる重力。 眼前に幕が降りる感覚。 固まればそのまま。 (揺れることなく美しさは保たれる) [*前へ][次へ#] [戻る] |