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61.ぶすり
幸村さん達を無理やり寝室に押し込めて、扉を開くと焦燥した男が一人。男が言うには「妻に追われている 助けてくれッ!」だとのことだ。どうして電気の消した何でも屋に来たのか・・・と思ったが、幸村さん達と話していたこの場を思い出し、そういや電気を付けていたと思いだす。
とりあえず、男を床に上げ、奥さんが来るまでに男の話を聞く。
妻がいきなり怒鳴り散らしてきた事。いきなり包丁を持ってきて自分を殺しに来た事。命からがら逃げてきた事。とりあえず奥さん待って、奥さん来たから説得しつつ 扉を開けたら、奥さん包丁持参で登場。
その場で奥さんと話す限り、どうやら「人の死」について無知識なのらしい。男がさっきからちょっかいかけるように横槍いれてきて煩い。自分の保身が大切ですか。
奥さんが男の一言にブチ切れて、男の言葉で私を何かと勘違いして、私に包丁を刺してきた。


ブスリ


両手で包丁を止めるつもりが、腹部まで、ちょっと包丁の先が入ってしまった。確か、右は・・・腹部。肝臓。
肝臓までは行ってないが、炎症とか感染症が怖いな。
両手で作った鞘を通って包丁が私の腹部に通っている事を感じた奥さんの手は震えていた。一歩でもその手が上下左右どちらかに動いて傷口を開くような事をしたら、一気に距離を取って敵とみなして排除するところだったぞ。
奥さんの震える手を見つつ、床に落ちる血液を見る。
なんだろ、私 この頃床を汚してばっかだ。床を水ぶきなんて、一ヶ月の内でこんなにしたの、初めてだ。
奥さんの悲鳴が耳を貫通する。痛む。男も情けない声を出した。
なんだ、うっとおしい。
奥さんは包丁の柄から手を離し両手で自分の顔を覆っていた。包丁のやり所に困る。キャーキャー言われては煩い。
本当は抜いちゃいけないが、包丁は肝臓まで行ってない。弾貫通した時も何とか生きてたし、まぁ 大丈夫かなー。炎症さえ起こさなければ!後、戦時中でも少ない医療器具でこんな傷口癒してたって言うし。傷口残っちゃうけどねー!
明らかにポジティブな事を考えて、傷口から包丁を抜く。痛ぇ。ジンジンと痛む両手で腹部の傷口を押さえる。だらだらと血は出る。
カランと包丁が落ちないように片手をしっかりと握る。そして、突如の事で混乱している夫婦に向かって一言、「話しあいましょうか」と言って話しあいを始めさせた。

だらだら流れる血に気を留めながらも二人の話に耳を傾ける。二人はしょっちゅうこちらを気にして話しているが、「本当の事言って 話しあって下さい。」とだけ言っといた。あれ、包丁片手に二人の話聞く自分って、脅し役みたいじゃないか?なんて思ってくる。
その内段々二人は私の目を気にしなくなって本性を現した。一方は身勝手で一方は病的な。後は頭に血が回らなくてブッチギレて散々罵って、後は無意識の行動だと思う。

気が付けば 佐助さんが私の腹部を縫っていた。

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