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60.シャウト
幸村の精神をズタズタにし、俺の皮肉を受け止めたgirlは俺達を無理やり俺達を先程いた部屋に押し込めて、気配を殺せと言ってきた。なんだ、気配さえ殺して悟らされなければ 動いてもいい、と言うわけか。
幸村の野郎はまだ落ち込んでいやがった。

「おい、幸村。しっかりしろ。あれはfalseなんだ。Not true だ。All right?」
「しかし、」
「虎の若虎さん、信じりゃいいんじゃねぇのか?」

鬼が急に横やりを入れてくる。

「Ah?何をだ?」
「やっこさんの言った言葉を。虎の若虎さんよ、あんた、彼女といた時間が長かったんだろ?なら、信じてやればいいじゃねぇか。」
「・・・・・・・・・・・そう、であるな。」

幸村は目を瞑って長く時間を掛けて考えた後、そう答えた。ズタズタの幸村をそうしてそしてここまでするとは・・・あいつ、一体どういう奴なんだ。
毛利がピクリと動いた。そして女の悲鳴が響く。幸村が口を開けて立ち上がろうとしたら、真田の忍が幸村の口を手で塞いで、幸村を制した。

「旦那、真っ白ちゃんが言ってたでしょ。『気配を殺せ 動きを悟らせるな』、って。」
「だ、だが しかし・・・」

幸村は困惑した顔で佐助を見やる。なんだ、あんたも様子を見る、って奴か。

女の悲鳴の後、あのgirlが説得する声が聞こえる。どうやら、先程の来客は男で悲鳴を上げた女の夫らしい。この男、聞いているだけで腹が立ってきて仕方がない。よく見りゃ、鬼も苛立たしそうに扉を睨みつけていやがる。


最初は静かに聞いていたgirlかと思っていたが、どうやら違っていたようだ。段々声色が変わってきている。 girlはあくまで夫に説得をしているが、夫は何を勘違いしているのか、girlに何かを要求している。girlはそれをやんわりと断りつつ、夫に妻と話し合うように要求する。この原因は貴方が原因だと。貴方が彼女と話しあわなかったから、だと。
話は段々と口論になってきた。girlは一貫して悲鳴をあげた女の味方に立っているようだ。girlが夫に向かって何かを問いかけた時、夫が何かを答え、girlがそれにキレて声を荒げた。

"っざけんじゃねぇよッ!!!知らなかった?こんなんだとは知らなかっただぁ? ふざけんなッ!!!奥さんがこうなったのも、アンタが一因でもあるだろうがッ!!アンタが奥さんと話さなかった、奥さんはアンタの真意が知りたいが為にこう言う方法にたった。それが真実じゃねぇかッ!!!!一生添いつげる気が無いんなら 結婚すんじゃねえよッッ!!!!!"

怒声は続く。
アイツ、こんなキャラだったけ、って聞きたいが、今は聞ける空気ではないので流しとく。

"本ッ当、良かったなぁ!!!此処に来てッ!!アンタが刺されてたら 一生奥さんと話ができなかったんだからなッ!!!"

・・・“刺され”?

"奥さんも、刺した後がどうなるか、分かっただろ? まず、こういう事になりそうな時は深呼吸して、ん、そう。深呼吸して落ち着けば、落ち着くはずだから。夫を殺して私も、なんて 止めてくれよ?家族や友達はいる?いないならいなくてもいい。周囲は? 例えそうでなくてもそうであっても、私はそれをしたら泣くからな。「なんでこんな事をしたんだ」って。馬鹿な事じゃないって?そうじゃない。死ぬ事より、夫と対話して話し合う方法を見つける事だ大事だろ。おい、逃げるなよ。夫さん。"

男の情けない声が聞こえる。

"あんた、奥さんと向き合う気がないんなら、別れな。どうせ、奥さんの美貌と金に釣られたんだろ。中身を見ずに。個人的な意見から言わせてもらえば、最低だがな。"

yes. That's right.

"裁判、起こすなら起こせよ。生憎、私はあんたと奥さんとは今日が初めてだし、刺されたのは私一人だけだし、目撃証言はアンタと奥さんと私だけ、だ。それに、私はアンタの裁判に乗かかって奥さんから金取る気無いし、もともと、アンタが奥さんの内面見て付き合わなかったのが悪い。自業自得だ。"

girlは話を続ける。

"奥さん、勢いに任せてこう言っちゃったけど、嫌なら断ればいいよ。今まで言った事は、私が全て 自分勝手に言ったことだ。"

アハハ、と渇いた笑みが扉越しから聞こえる。

"奥さんも、もう少し前を向けるようになったら、この夫よりいい人、たくさん見つかるから。え、あぁ。帰っていいですよ。貴方の“依頼”は一応、終わったのですから。あぁ、奥さんと向き合ってくれるのならば、報酬はいりませんよ。"

男の叫び声とドンッと力強く扉を閉める音が響く。
男の文句は陳腐だった。

"とりあえず、色々とあるので 今から迎えを呼んで、奥さんを家にお送りします。え、帰りたくない?じゃぁ、ちょっと今からお世話になる場所に電話していいですか? お世話になる場所?えぇ・・・ぼやかして言うと騙す事になるから、包み隠さず言います。『心の病院』です。"

・・・それは包み隠さず言っているのか疑問に思ったが、throughする事にした。

"あ、大丈夫ですよ。その人、そっちの気が無いみたいですし・・・。あ、ちょっとすいませんね。"

誰かと話す声がし、ピッと音がした。

"二十分待て、との事です。まぁ、お茶飲みますか?あぁ、包丁達は貰いますが、ね。"

貰う?“達”?
奥さんとgirlの話を聞いていると、どうやら二十分経ったのらしい。ガチャリと軽く開く音が聞こえる。
girlが玄関へと歩くと驚愕の声が聞こえた。girlは笑って流す。声はgirlを怒鳴るが、妻に気付くと落ち着いた口調で話した。girlは「不問にしてね」と言うと、声は重たい溜息を吐いて「お前 本当馬鹿」と呟いた。

girlは奥さんと声の主を見送ったのらしい。ガチャリと扉の閉まる音を聞くと同時に、ガタガタガチャンガンッと言う金属音と人の倒れる音がした。

その音を合図に俺達が寝室を出ると、血まみれで倒れている真っ白の姿があった。


Damn it!

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あきゅろす。
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