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first & love
ひぃ


「失礼します」

「どうぞ、こんにちは。池田さん」

学校終了後、昨日よりも早い時間帯に直接さなだクリニックを受診した俺と克也。

克也は待合室で待たせ、治療の為診察室に入ると中に居たサナダ先生はにこやかな笑顔で出迎えてくれた。

「…ども」

軽く会釈しながら、昨日と同じ様に手前の円いイスに腰を下ろした。

「今日は早いですね。学校帰りですか?」

話しながら治療に必要な物を用意する先生を眺めながら、はぁ…と一応の返事をする。

昨日も思ったが、この人全く俺を怖がらない。こんな事自慢にならないが人より目つきの悪い俺は良く初対面の人には怖がられ敬遠される(不良君達は別として)事が多いんだが、この人はそんな素振りが全く無い。

真直ぐ俺の瞳を見返して話し掛けて来る。

しかも満面の笑顔で。
そのホワッとした雰囲気と相俟って凄く穏やかな気分になる。


何かいいな、この人…


そんな事を思いながら、怪我した方の腕を用意された手台の上に乗せた。











「ん、これでいいですよ。傷口も化膿してないですし、又明日来て頂けますか?」


包帯を巻き終わり、穏やかな笑顔を浮かべるサナダ先生。

いくら患者とはいえ、高校生のガキ相手になんて丁寧な対応してくれるんだろう。

「あ、はい。……あの…」

「はい?」

「あ、いや、その…「ああ、明日彼女とデートですか?」…は?」

あとどの位で傷は完治するのか聞こうとして、正面から綺麗な黒い瞳に見つめられ吃ってしまった俺に、突然のほぼ肯定的な問い掛けを投げ掛け、驚いた俺は馬鹿みたいに口を開けて先生を見つめていた。すると、先生がトントン…と自身の人差し指で自らの首筋を叩く。



一瞬その行動の意味が分からなかったが、ふと思い出す。昼間今井にされた事を…

バッと首筋のキスマークが付いているであろう辺りを手の平で覆う、がクスクスと笑うサナダ先生に「もう少し上ですよ」と教えられた。

「いや、あのこれは…」

言い訳を口にしようとする俺を、笑顔で眺めながら「顔が真っ赤ですよ。…可愛い。」更に笑みを深めた先生が右腕をこちらに伸ばし、俺の頭をサラリとひと撫でした。


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あきゅろす。
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