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first & love
いつつ



後ろからギュウギュウ俺にしがみついて来る克也の事は放置する事にしたらしい誠は「んでんで?」と見るからに楽しくて仕方ありません的な顔で話を振ってきた。

「何が?」

俺が返せば「またまた〜憎いよダンナ〜」と肘でつついてくる。

だから何が?
それにその台詞…お前はおっさんか。誠が何を言いたいのかが分からない為、首を傾げる。

「昼休憩+呼び出し=告白…っつ〜式が出来上がってんだよ。だからその結果だよ、ケッカ!ホレホレ、キリキリ白状せんかい!」

…式…って…
お前、目が尋常じゃなく光り輝いて…正直怖いゾ…。

「何でそんな式が出来上がるんだよ。」

絶対面白がってるな…。

「えー、じゃあ違ったのか?」

「………いや、違わないけど…」

…実際、確かに告白はされた。クラスの違うチョイ可愛い系の男子に「付き合って」と言われ、丁重に御断りしてきたんだが…。言い振らす様な真似になるし、あんま口外しないのがこういう時の暗黙のルールだろ。

そう思って、誠のキラキラ輝く瞳を見返しながら答えあぐねていると、急に首が苦しくなった。
…克也だ…

「…いっちゃん…付き合うの?」

正に地を這うかの如くひっくい声が背後から聞こえてくる。
何故か軽く絞まった腕を、ポンポンと叩き「放せよ」アピールしてみる。…が放す気配は無いもよう。…答えろって事か?

「…いや、断ったよ」

仕方ないので首元の腕は放置して、克也の問いに答える。


「…本ト?」
「マジで!?」

俺の返事に、克也と誠が綺麗にハモる。背後にいる克也の表情は分からないが、誠は「又か、勿体ねぇ」と呆れ顔だ。

基本誰かと長く付き合ったりしない俺は、男の生理的現象を解消させる為にその場限りの付き合い…つまり一夜限りの関係を持つ事が多い。マジの付き合いをして、束縛されたりヤキモチ焼かれたりするのが苦手な俺は、自然とそういう付き合いの出来る遊び馴れた子を選んでいた。

有り難い事に俺の外見はそういう相手を探すのに苦労はしない程度の造りをしている為、今まで関係を持った子達とはお互い割り切った付き合いをしてきた。

現在一人の相手と真剣交際している誠に以前「信じらんねぇ、マジで誰かを好きになった事無いのか」と言われた事があったが「俺的にはある意味何時も真剣だけど…」と返すと、何故か眉尻を下げ、憐れむ様な視線を向けられたのを覚えている。

何故そんな視線を向けられたのかは未だに分からないが…


「てか、俺の事はもういいだろ。克也、そろそろ放してくれ。お前も制服濡れるぞ、ってもう手遅れか…」

見ると、克也の制服の袖口が既に湿っていた。

「ほら見ろ、言わんこっちゃない」

俺は克也の袖口と腕をこれ以上濡れない様摘んで俺から離してやる。だが、折角離してやった克也の腕が何故か再び俺の首に巻き付いてきた。

「?…どうしたんだ、克也?」

問うも、無言の克也。
?…可能な限り後ろを振向くが、顔を俺の肩に埋めている克也の綺麗に染められた銀髪がサラサラ揺れてる様しか見えない。

「…ん、何でも無い。…それよりいっちゃん、今日こそ俺に付き合ってよね。行きたい店があるんだ」

暫くしてそう言って埋めていた顔が少し上がり、満面の笑みを浮かべた克也の顔が現われた。



人気モデルの満面の笑みっつーのは破壊力絶大の様だ。クラスメイトの何人かがその笑みを見て、バタバタと倒れていくのが視界の端に映った。

「やだ!笑顔サイコー!」
「僕に笑いかけて〜」
「〜堪らんっ!」
「克也様ー!」


日常化しているとはいえ、相変わらず克也の人気は凄いなと感心する。


「分かった、付き合ってやるよ。…あぁ、でも先に傷の消毒行ってからな。いいか?」

「………又アソコ行くの?」

「又って、お前が昨日無理矢理連れて行ったんだろーが」

「…………そうだけど…」

そう言って口ごもる克也は、じゃあ俺も行くから!と次の瞬間高らかに宣言した。


「…別に、いいけど…」


そんなに病院が好きなのか?そう聞くと、「ちっがーう!」と克也は眉間に皺を寄せ叫んだ。


…やっぱコイツの考えは分からん。

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